第8章 ホモセクシュアルへの序章

 翌日から、予習復習が終わってベッドの中に入ると、両親が来ないことを確かめて、マスターベーションした。気持ちよくって、毎日毎日やった。
 日曜日の検体採取が終わり、滴定も済ませて、文化祭用のグラフもできあがった。近藤は、秋季大会の練習に余念がない。
 ある日、本屋さんに寄って、何気なくある本を見ていると、マスターベーションの話しが出ていた。
 適度なマスターベーションはいいけれど、やりすぎはよくないと書いてあった。やりすぎないためには、適度の運動がいいと。ぼくは運動嫌いだもんなと思いながら、ページを捲っていった。
 あるページの記事を見てびっくりした。猿にマスターベーションを教えると、餌も食べないで、死ぬまでマスターベーションするというのだ。
 ちょっとどっきりした。死ぬまでってことはないけど、毎日やってるもんなあ。少し、自重しなけりゃと。

 「やりすぎはよくなって書いてあったぞ」
 近藤の部屋に入ると、ぼくは早速本で見た話しをした。
 「一日一回くらい大丈夫さ」
 「そうかなあ」
 「大丈夫だって。ところで、宮本」
 「なんだ?」
 「フェラチオって知ってるか?」
 「フェラチオ?」
 「知らないだろうな」
 「何だ? そりゃ」
 「尺八とも言うらしいな」
 「もったいぶってないで教えてくれよ」
 「あのなあ」
 近藤は、ぼくの前に座り直して、声を落として話し始めた。
 「女に舐めて貰うんだよ」
 「舐めるって、何を?」
 「おまえも勘の悪いやつだなあ。男のあれをだよ」
 「あれをって、まさかペニスを?」
 「そうに決まってるだろう?」
 「まさか!? 汚いよ」
 「セックスするのに、汚いも何もないんだよ。見せてやるよ」
 近藤は、今日もパソコンを立ち上げた。女が男にペニスを舐め、口の中に含んでいる写真が次から次へと表示されていった。
 「どうだ?」
 「すごい!!」
 「あああ、島田にやって貰いたいなあ」
 近藤が呟く。
 「してくれるはずがないじゃないか」
 「そうだよなあ・・・・」
 近藤はパソコンをシャットダウンして、ベッドの上に寝転がった。ぼくは立ち上がる。
 「帰るから」
 「ああ。・・・・宮本?」
 「何だよ」
 「おまえ、やってくれないだろうな」
 近藤のいわんとするところはすぐに分かった。しかし、とぼけて答えた。
 「何を?」
 「女の代わり」
 「ば、馬鹿言うなよ!!」
 「そうだろうな」
 当然すぐに諦めると思った。
 「帰るぜ」
 「ちょっと待てよ、宮本。どうだ? 俺がやってやろうか?」
 「あほ!! いったい、何考えてんだよ!」
 「どうしてもされてみたいんだ。だから、俺が先におまえにやってやるから、俺にやってくれよ」
 「馬鹿言うな。帰る」
 「頼むよ。なあ、宮本。親友だろう?」
 「親友でも、そんなことはできない!」
 「一回だけ。一回だけだからさあ。お願いだよ」
 近藤は、部屋のドアの前に立ちふさがって返してくれそうもない。
 「洗わないと汚いんじゃないか?」
 「やってくれるんだな?」
 「やりたいって訳じゃないけど、おまえがそれほど言うんなら・・・・」
 「恩に着るぜ。じゃあ、風呂場で洗ってくる」
 部屋を出ていこうとする近藤をぼくは制した。
 「先に俺にやってくれる約束だよな」
 「あ、ああ。そうだったな。じゃあ、一緒に風呂場に行こう」
 二人で一階に下りていくと、近藤の母親に出くわした。
 「あら? もう宿題は済んだの?」
 「あ、もうすぐです」
 レモンティーを入れたから、すぐに持っていってあげるわね」
 「うん」
 「どこ行くの?」
 「ト、トイレ」
 「連れションね」
 ぼくたちは顔を見合わせ、仕方なくトイレへ行った。
 「トイレットペーパーを水で濡らして、それで拭こう。それしかない」
 「もう諦めたら?」
 「いや。絶対やる」
 テコでも動きそうもない。ぼくは諦め顔で、近藤がトイレから出てくるのを待った。

 レモンティーを飲み終わると、近藤は早速部屋の鍵をかけた。
 「早くしろよ」
 ぼくは渋々ながら、ズボンのチャックを下ろしてペニスを取り出した。
 「いいか。始めるぞ」
 そう言って、近藤がぼくのペニスを舐め始めた。舌のざらつきが何とも言えない。ぼくは、あっと言う間に近藤の口の中にぶちまけていた。近藤は、ティッシュに吐き出しながらぼくに聞いた。
 「どうだ? 気持ちよかったか?」
 「あ、ああ。何とも言えないいい気持ちだよ」
 「今度はおまえの番だぞ」
 「ああ、分かってるよ」
 差し出された近藤のペニスをじっと眺め、舌で舐めてやった。ググッと硬度が増してきて、近藤のペニスから精液がほとばしり出てきた。生臭い臭いが漂ってきた。ぼくはそれをゴクリと飲み込んでしまった。
 「飲んじゃったのか?」
 「別に汚くはないだろう?」
 近藤がぼくのものを吐き出すとき、もの凄く汚らしいと感じた。だから、飲み込んでしまった方が汚くないような気がしただけだ。
 「そうだな。小便じゃないからな」
 「気持ちよかったな」
 「ああ」
 「今度は女にやって貰うぞ!!」

 そう言ったのに、近藤は毎日ぼくにフェラチオをせがんだ。
 「なあ、もう一回だけ。もう一回だけやってくれよ。今日は、シャワーを浴びて綺麗にしたからさあ」
 やってやるまで、宿題もせずにぼくに迫った。実はぼくもイヤじゃなかった。ぼくの口の中で、ペニスが大きくなって爆発するのを楽しんでいた。ぼくって、おかしいのかもしれないと思う。

 中学3年の春休み、他人には言えないことをぼくはしてしまった。近藤の相手をしてしまったのだ。フェラチオだけじゃなくて・・・・。
 その日、近藤の父親は出張で、母親と姉は買い物に出かけていた。近藤は野球の練習を休み、ぼくを誘った。ぼくはいつものプレーだろうと思って、気軽に近藤の誘いの乗った。
 「宮本って、フェラチオが好きみたいだな」
 「そんなことないよ・・・・」
 「そうかな? 楽しんでいるみたいだけど。・・・・女みたいに」
 「ば、馬鹿言うなよ」
 ぼくは慌てて否定した。しかし、本音はそうでもない。
 「そうかな? おまえ、結構可愛いし、女に生まれりゃよかったのにな」
 「男に生まれたんだから、仕方がないさ」
 「そうだな。ところでさあ。お願いがあるんだ」
 「何だよ。その言い方。また何か企んでるな?」
 「へへへ。分かったか」
 「当たり前だ。おまえがそんな顔をするときは、ろくなことを考えてないんだから」
 「それが分かってりゃ、話しは早い。実はお願いというのはな」
 近藤はなかなか切り出さない。よほど頼みにくいことだと見える。
 「なんだよ。早く言えよ」
 「おまえのケツを貸してくれ」
 「ケツを貸せ!? ケツを貸せってどういう意味だよ」
 「アナルセックスをさせてくれないか?」
 「アナルセックス!? 俺はホモじゃないぞ!!」
 この頃、ぼくは性に関する情報を近藤から仕入れていた。だから、大抵のことは知っていた。
 「それは分かってるさ。ちょっと貸してくれればいいんだ。ちょっとだけでいいんだ」
 「だめだよ。そんなの。ホモでもないのに、そんなことするなんて」
 ぼくは逃げだそうとするが、例によって近藤はぼくの前に立ちふさがる。
 「お願いだよ。一回だけ」
 「フェラの時も一回だけって言って、何回もしてるじゃないか」
 「今度はホント。一回だけ。試してみたいんだ」
 「女とやれよ。誰でも相手してくれるだろう?」
 今年に入って、近藤が片山と寝たらしいことを聞かされていた。近藤にはファンが多い。近藤がその気になれば、寝てくれる女はいくらでもいるはずだ。女がいるのに、ぼくとフェラプレーを止めない理由も分からないけど、さらにアナルセックスまでしてみたいだなんて、近藤の気持ちがまったく分からない。
 「ちゃんとしたセックスならやらせてくれるんだけど、アナルセックスはねえ」
 「俺なら、やらせると思ったのか?」
 「ああ」
 簡単に肯定されて、ぼくは唖然とした。
 「どうして、そう思うんだよ」
 「おまえは絶対に拒否しないと思った」
 「拒否してるよ」
 「なあ、頼むよ。俺のおまえの仲じゃないか」
 「いやだ!」
 「近藤誠次、一生のお願いだ。頼む」
 近藤はぼくの前に土下座して畳に頭をこすりつけた。そんなことされると、やってやらないといけないような気がした。
 「分かった。やってやるよ」
 「そうか。さすが俺の親友だ」
 近藤は笑顔になって、俺にすり寄ってきた。親友だからするって訳じゃないけどなとぼくは思っていた。

 近藤は、ごそごそと机の中を探している。
 「これで、肛門の中を綺麗にしてきてくれ」
 近藤がぼくに手渡したのは、イチジク浣腸だった。
 「こんなもの、どこから手に入れたんだよ」
 「薬箱の中に入ってるんだ。母さんが便秘でね。時々使うのを、こっそり盗んでいたのさ」
 「用意のいいことで」
 「頼むぜ。なんなら、俺が浣腸してやろうか?」
 「おまえ! 変態か?」
 「そ、そんなことないよ。じゃあ、やってこいよ」
 トイレに入って、浣腸した。毎朝トイレに行っているので、少し下痢のような便が出ただけだった。ウオシュレットで肛門を洗って近藤の待つ部屋に戻った。近藤はにこにこしながら待っていた。
 「やっぱり止めようよ」
 「ここまで来て、それはないだろう?」
 近藤は、ぼくがやってやらないのが悪いと言った表情を見せた。
 「分かった。分かったよ。どうすればいいんだ?」
 「まず裸になろうか?」
 「裸に!?」
 「俺も裸になるからいいだろう?」
 そう言いながら、近藤は服を脱ぎ始める。ぼくも仕方なく服を脱いだ。
 「で、どうするんだ?」
 「四つん這いになって、尻を出してくれ」
 「こうか?」
 ぼくは、両手をついて、尻を持ち上げた。近藤がぼくの肛門に何かを塗り始めた。
 「何してるんだよ」
 「じっとしてろよ。滑りをよくするためにコールドクリームを塗ってんだよ」
 べたべたとクリームを塗られた。止めりゃよかったと後悔していたが、ここまで来ると、近藤はぼくを押さえつけてもやるだろうなと思っていた。
 「指、入れるよ」
 「指を?」
 「最初から、ペニスは入らないだろう? 肛門をほぐしてやるんだよ」
 通常の手段では手に入らない本でも見て研究したんだろう。近藤は、ぼくの肛門に指を入れて、ゆっくりと動かしていた。少し痛みを感じたけど、何だか妙な気分だ。
 最初は気持ち悪いばかりだったのに、しばらくすると何だか得も言われぬ気持ちよさがぼくを襲ってきた。胸がどきどきし始めて、顔が火照ってきた。
 どうしてこんな気分になるんだろうか? ぼくはホモじゃないのに・・・・。
 「さあ、いくぞ。力抜いてろよな」
 肛門に近藤のペニスが当たったかなと思ったときには、押し入ってきていた。
 「痛て!!」
 逃げだそうとしたけど、近藤に両手で腰を捕まれていた逃げ出せなかった。
 「力抜けって!」
 かなりの痛みとともにぬるりとした感触がして、違和感とともに吐き気を催してきた。
 「気持ち悪いよ」
 「俺は気持ちいいよ。こんなに締まるなんて、たまんないよ」
 近藤は腰を動かす。
 「もう止めてくれ!!」
 「ああ、行きそうだ」
 その直後、ぼくの中で近藤が脈打った。それまでの不快感、違和感が消えて、再び気持ちよくなった。すぐにぼくも射精していた。精液を排出するたびに、ぼくの肛門が近藤のペニスを締め付けているのを感じた。
 「締まる。締まる。気持ちいい!!」
 ぼくの肛門は、痙攀を続けていた。そのたびにぼくに快感をもたらした。ぼくは、畳の上に突っ伏した。近藤が、ぼくの背中の上に覆い被さってくる。しばらく二人でそのまま倒れていた。

 「すっげえ、よかったぜ。宮本は?」
 ぼくは何も言えなかった。よかったなんて言うと、ホモになってしまいそうな気がしたからだ。
 「なあ、どうだった?」
 「気持ち悪かっただけだよ」
 「そうか?」
 近藤はぼくに疑いの目を向けた。ぼくはどぎまぎとする。
 「結構よかったみたいな顔してたぞ」
 「馬鹿言うな。俺はホモじゃない」
 肛門をティッシュで拭くと、ぼくは服を着て立ち上がった。
 「これ一回きりだからな。じゃあな」
 そう言い残して、近藤の家を出た。家に向かって歩きながら、気持ちよかったなと思い出した。そう思いながら、頭を振った。ぼくはホモじゃない。こんなこと思っちゃいけないんだ。