愛する美晴へ
俺は間もなく死んでしまうだろう。一見回復しているように見えるだろうけど、俺にはそれが分かる。
死ぬ前に、おまえに告白しておかなければならないことがある。俺はおまえを欺き、騙していたんだ。どうか俺を許して欲しい。
告白することが、こんなに苦しいなんて思ってもみなかった。ホントはまだ迷っている。おまえが俺のことを嫌いになってしまうのではないかと考えると、どうしても思い切れない。
しかし、やはり告白しておくべきだ。おまえに真実を伝えておかなければ、俺は死んだ後も永遠の地獄の中で苦しむことになる。
俺がおまえに付いた最初の嘘は、遠藤とのことだ。中学時代、俺がおまえに電話して、遠藤に振られたって話しをしたのを覚えているだろうか? 覚えているはずだよな。
俺と付き合ってくれと言う申し出を遠藤は断った。俺はその言い訳として、中学生だから、まだ早いと遠藤が言ったとおまえに告げたよな。だけど、あれは嘘なんだ。
実は、遠藤は、おまえのことが好きだから、俺の申し出を断ったんだ。遠藤本人が俺にきっぱりとそう言ったんだから、間違いはない。
俺はショックだった。学業成績はおまえには劣るものの、まあまあの成績を上げていたし、学校中の女の子が憧れる野球部のキャプテンで、ピッチャーで、4番バッターだった俺の申し出を断るなんて思ってもみなかった。キャッチボールさえまともにできない運動音痴のおまえが、スポーツ万能の俺を出し抜いて、遠藤と交際するなんてどうしても許せなかった。おまえに負けるなんて思ってもみなかったからだ。だから、あんな嘘を付いた。
俺の電話で、おまえは遠藤への告白を諦めたようだったけど、いつも遠藤を見ていた。遠藤もそのことに気づいていた。互いに好意を持ちながら、おまえたちは交際を始めることはなかった。要するにお前たちにはきっかけがなかっただけだ。きっかけさえあれば、お前たちはすぐに付き合い始めるだろうと思った。
だから俺は、おまえを遠藤から遠ざけるためにある手段を使った。もう察しているだろう。俺は、おまえをホモに仕立て上げようとした。ホモにして、女に興味を持たないようにしようとしたのだ。
まず、おまえをフェラチオプレーに誘った。最初からお前にしろとは言えないので、俺がしてやることにしたのだが、他人のペニスを口の中へ入れるなんてぞっとしなかった。しかし、おまえをホモに仕立て上げるために我慢した。おまえは俺の精液を飲み込んでしまったけれど、俺にはとてもあんな真似はできなかった。おまえは、されるよりする方に興味を持ったようだ。だから、俺がおまえにフェラチオをしてやることはほとんどなかったので、ホッとしていた。
機が熟するのを待って、アナルセックスをお前に要求してみた。正直言って、ホントにおまえが乗ってくるなんて思っていなかった。だけど、おまえは乗ってきた。この時点で、俺の計画は絶対成功すると思った。
アナルセックスの快感を覚えると抜け出せなくなると言う話しを聞いていた。だから、最初に不快感を与えると成功しないと思った俺は、ある仕掛けをしていた。あの時、おまえの肛門に塗ったコールドクリームには、通販で仕入れた媚薬を混ぜてあったのだ。
肛門は、医者がクスリを座薬という形で処方するくらい吸収のいいところだから、おまえはたちまち性的興奮に陥ったというわけだ。だから終わったあと、おまえは気持ちよさそうにしていた。上手くいったと思った。
その後もおまえとアナルセックスをやったが、媚薬を使ったのは、最初の数回だけだった。媚薬なしにおまえが気持ちよさそうにしていたのには驚かされた。もしかすると、おまえは根っからのホモじゃないかとさえ思った。
そこで試しに、姉の服をこっそり持ち出しておまえに女装させてみた。最初はいやがっていたけれど、俺がおまえを女のように扱ってやると、おまえは喜び、まるで女のように俺の腕の中でもだえていた。
これで、おまえが遠藤に気を回すことはないだろうと思った。目的を達したと思った俺は、部活に専念する事にしたのだ。
おまえが俺の誘いを断って東京へ行くと俺に言い出したとき、俺はおまえがホモの生活を抜け出して、正常な男に戻ろうとしていることを察した。電話も引かず、アパートの住所も教えてくれなかったから、間違いないと思った。
何とかホモの道に引き戻そうと、俺は関係を持とうとした。お前の母親からアパートの住所を聞き出して、5月の連休に押し掛けてみたけれど、おまえはどこかへ逃げて出してとうとう会うことができなかった。
どうにかならないかとしていたとき、おまえが女装してコンビニのアルバイトをしているのを知った。ホモの道に引き戻せそうだと思ったが、俺が出ていくと、恐らくお前は拒否するだろうと思った。だから俺は、自分自身の手ではなく、プロの手で、おまえを完全なホモの世界に引きずり込んで貰うことにした。
雑誌に載っていたニューハーフクラブを訪ねて頼んでみた。ニューハーフクラブのママは、おまえを一目見るなり、素質がありそうだから、すぐに引っ張り込めるわよと太鼓判を押してくれた。
案の定、おまえはホモの世界に引っ張り込まれていった。例えお前が途中で抜け出そうとしても、借金地獄にして、抜け出せないようにするという計画だった。
最終的には、お前が男に抱かれる歓びを思い出させるように、ママに頼んで男の相手をするようにし向けて貰った。その後しばらくして、おまえが、松本という男の愛人となったと聞かされた。
俺は、計画が達成されて安心した。これでお前は女に興味を持たなくなるだろうと。
しかしその頃、俺の心の中に、何だかおかしな感情が芽生えていた。最初の頃はそれが何なのか分からなかった。しかし、しばらくしてそれが何なのか分かった。おまえが俺以外の男に抱かれていることに嫉妬を覚えていたのだ。
その時になって初めて、俺はおまえのことが好きだったことに気が付いた。俺がおまえをホモに仕立て上げようとしたのは、俺自身がホモだったからだと分かった。俺は、遠藤におまえを奪われたくなかったのだ。
おまえが俺の前から消え、再び現れる間の10年あまり、苦しくて苦しくて堪らなかった。おまえのことを思い、おまえの写真を見ながら、マスターベーションをしたのは一度や二度の話しじゃない。本当だ。俺はおまえを愛している。子どもの時から好きだった。
おまえが、女となって俺の前に現れ、しかも俺の腕の中に飛び込んでくれたとき、どれほど嬉しかったか、おまえには想像できないだろう。
ただ正直言って、女となったおまえを抱けるかどうか自信がなかった。俺は、俺自身がホモだと気づいたときから、女を抱くことができなくなった。どうしてもダメだった。だから、おまえと一体になれた時の喜びは、表現のしようもないものだった。
そう言う訳なんだ。俺の身勝手で、おまえの人生を狂わせてしまったことを許して欲しい。だけど、俺はおまえを愛していた。これだけは誓って言える。ホントにおまえだけを愛していたんだ。
俺のことを嫌いにならないでくれ。お願いだ。心からおまえを愛している。俺がいなくなっても幸せになって欲しい。
誠次