第13章 再会

 松本はほとんど毎日ぼくを愛してくれた。最後の瞬間、ぼくはいつも行ったような気がしているのだけど、ちょっと違うような気もする。松本が居ない昼間。ベッドの上で、マスターベーションしてみて、それが分かった。
 ぼくのクリトリスは、ペニスの一部を使って作られている。そのクリトリスを触っていると、ペニスがまだあるような錯覚に捕らわれる。
 ドクターに聞いてみると、それは幻肢とか言う症状と同じだというのだ。幻肢というのは、手や足を切断した人が、まだ手足があるような錯覚に陥るという症状らしい。
 ぼくのクリトリスの中に残されたペニスの神経が、ペニスがあるような錯覚をぼくに与えているというのだ。
 実際に、クリトリスを触っていると、ペニスをしごいているような錯覚に捕らわれる。そして、射精したときのような快感が訪れるのだ。その時、ぼくの膣は恐ろしいほど濡れていた。
 男として、マスターベーションしているのと同じなのだそうだ。ぼくには排出する精液はないけれど、達した瞬間、カウパー腺や前立腺から粘液が出て来るという。
 マスターベーションで達するところまで、松本とのセックスでは達していない。ぼくはまだ女として未熟なのだ。

 松本の愛人となって5年、性転換されて3年が過ぎた。松本は約束通り変わらずぼくの元を訪れてきてくれる。ぼくの住んでいるマンションでは、ぼくは松本の妻だと思われていて、マンションの人たちに奥さんと呼ばれる。ぼくはそれが嬉しくてしょうがない。
 「そうか。奥さんと呼ばれるのがそんなに嬉しいか」
 「ええ。とっても」
 「妻と別れるわけにはいかないが、おまえが喜ぶプレゼントを持ってきた」
 「えっ!? いったい何? プレゼントって」
 「これだ」
 松本はぼくに一通の封筒を手渡した。
 「何なの? これは?」
 「開けてみれば分かるよ」
 封筒を開いてみると、一枚の書類が出てきた。
 「これは・・・・」
 戸籍謄本だった。両親の名前には×印が入っていて、死亡したことが示されている。次の欄に、美晴・長女と書かれていた。ぼくは驚きに両手を口に持っていった。
 「どうしたの? こんなもの」
 「買った」
 「買ったって、誰から?」
 「誰でもいい。とにかく、おまえはそれで戸籍上も女だ」
 「嘘・・・・」
 「ホントだ。その戸籍を使っても誰も文句は言わない。おまえは、今日から、後藤美晴だ。いいな」
 「ほんとにいいの? こんなの犯罪でしょう?」
 「おまえのように性転換した男が、同じように女の戸籍を手に入れて、実際に結婚しているんだ。おまえだけじゃないんだ。心配するな」
 「でも・・・・」
 「おまえは女だ。その戸籍を使うのが相応しいんだ。分かったな」
 「・・・・はい。でもふたつも年取っちゃった」
 「贅沢言うな。女の戸籍が手に入っただけでもよしとしなけりゃ」
 「そうね。そうよね」
 女の戸籍が手に入って嬉しかった。実年齢よりはふたつ年をとったことになるけれど、これで名実とも女になれる。だけど、宮本勇一という人間がいなくなってしまうことに、戸惑いを覚えていた。
 そう思いながらも、ぼくは、後藤美晴の名前で住民登録をし、自動車学校に通って運転免許も手に入れた。ぼくはもはやどこに出ても女で通用する。

 27歳になった春。松本は仕事が忙しいらしく、週に2,3度しか来られなくなった。待ち遠しくてならないけれど、来てくれた日は、いつも以上に愛してくれた。だから、ぼくは待つのがそんなに苦痛ではなかった。
 だけど、一週間まったく松本から連絡がなく、ぼくは不安に駆られた。ぼくの方から松本に連絡することは禁じられていた。ぼくはただ待つしかなかった。
 最後に松本がマンションにやってきてから10日目の午後、電話が鳴った。松本からの電話だと思ったぼくは、喜び勇んで受話器を取った。
 しかし、受話器から流れてきたのは、松本の声ではなかった。
 「美晴さん?」
 「は、はい。そうですが、あなたは?」
 「松本の妻です」
 初めて聞く松本の妻の声。どうしていいのか分からなかった。
 「あ、はい。何でしょう?」
 「松本は、もうそちらへは伺えなくなりました」
 捨てられた? ぼくはがっくりと膝をついた。
 「昨日、初七日を済ませました」
 初七日!? まさか・・・・。
 「初七日って、あの、もしかして・・・・」
 「ええ、松本は、先週、心臓発作で亡くなりました」
 目の前が真っ暗になった。
 「松本があなたをそのマンションに囲っているのは知ってました。知っていましたけれど、わたしが松本に要求したのは、会社の発展と維持だけです。だから、あなたとの関係を許していました。あなたに松本が亡くなったことを知らせる義務はないのですけれど、松本が亡くなったのを知らせたのは、そのマンションの賃貸契約が切れるからなの。今月いっぱいは家賃を振り込んであるけど、その後は出ていって貰うしかないわよ。よろしいですね」
 それだけ捲し立てると、電話が切れた。松本が死んでしまった。涙がどっと沸いてぼたぼたと床に落ちた。
 「どうして死んだのよ! 一生わたしの面倒見るっていったのに!!」

 一日中泣いた。体の中の水分がなくなるまで。泣き明かして、ぼくは思った。松本は、あの借金地獄から救い出してくれた。半ば無理矢理性転換されたけど、女として愛してくれたし、女の戸籍も手に入れてくれた。年が25も上なのだ。一生面倒をみろと言うのが所詮無理な話しなのだ。いずれこうなることは漠然と分かっていた。松本と別れるのが少し早くなっただけだ。少しじゃなくて、かなり早かったけれど・・・・。

 ともかく、マンションを出ていかなければならない。行く宛はない。どうすればいいのだろうか?
 考えに考えたあげく、ぼくは両親の元へ帰ることを決心した。これまでのいきさつを話して受け入れて貰おう。ぼくのことを思ってくれるのは、もう両親しかいないのだから。

 当座の生活に必要なものだけを鞄に詰めて、残りは倉庫を借りて預けた。ぼくは、9年ぶりに郷里へ向かった。
 飛行機が空港に着き、バスが実家に近づくに連れて、心臓が早鐘のように打った。やっぱり引き返して、どこかで知らない土地で暮らそうかと思った。だけど、ぼくはバスを降りなかった。
 バス停から、家まで5分あまり。その距離が遠かった。家の前に立っても、まだ迷っていた。
 決心して、いざ門をくぐろうとして、気がついた。表札が違うのだ。後ずさって、家を見た。間違いなく、ぼくが育った家だ。だけど、宮本の表札じゃなかった。
 「どなた?」
 家の中から、40くらいの女性が出てきた。
 「あ、あのう。宮本さんを訪ねてきたんですけれど、こちらではなかったでしょうか?」
 「ああ、宮本さんなら、前の持ち主ですわ」
 「前の持ち主? じゃあ、この家を売って、どこかへ越したのですか?」
 「そうでしょうね」
 「行き先はご存じないでしょうか?」
 「さあ、わたしには分かりませんが・・・・」
 「そうですか。ありがとうございました」
 とぼとぼとバス停に向かって歩いていった。父は失業していた。職が見つからず、ローンが払えなくなって手放したのに違いない。 せっかく決心して戻ってきたというのに、引っ越していただなんて・・・・。いったいどこへ行ったのだろうか?

 「宮本。宮本だろう?」
 ビックリして振り向くと、Tシャツにジーンズ姿の男がぼくを見つめていた。その男が誰なのかすぐに分かった。
 「ち、違います。人違いです」
 ぼくは慌てて逃げ出そうとした。だけど、男に手を捕まれた。
 「誤魔化しても俺には分かるぜ。ちょっと付き合ってくれ」
 無理矢理近くにあった喫茶店に連れ込まれてしまった。
 「いらっしゃいませ。なんにいたしましょう?」
 「コーヒーを。君は?」
 「いりません」
 ぼくは下を向いて小声で答えた。
 「遠慮するな。俺のおごりだ」
 「何もいりません」
 「何か注文しないと。ほら、店員さんが待ってるよ」
 「・・・・コーヒーでいいです」
 「じゃあ、コーヒーふたつ」
 「かしこまりました」
 店員が去っていくと、その男、近藤が、ぼくに顔を寄せて尋ねた。
 「宮本。どうしてそんな格好をしている?」
 「わ、わたし、宮本なんて名前じゃありません」
 「なら、どうしてそんなに動揺する?」
 答えられない。近藤はぼくが宮本勇一だと見抜いている。ぼくは喫茶店の中を見回した。客はぼくたちだけ、店員は、テレビを見ながらコーヒーを入れている。聞かれる恐れはない。ぼくは白状することにした。
 「どうして分かったの?」
 「おまえの母さんそっくりだったから」
 「そう・・・・」
 「はい。お待ちどうさま」
 店員がコーヒーを持ってきて、話しが中断された。コーヒーに砂糖、ミルクを入れ、スプーンでかき回す。ぼくはずっと黙っていた。近藤も何も言わずにぼくを見つめていた。
 「綺麗だよ」
 ぼくは顔を上げて近藤を見た。目があって、どぎまぎした。
 「まるでホントの女みたいだな」
 近藤の様子からすると、女装しているだけだと思っているようだ。ホントに女になってしまったなんて言えなかった。
 「君の両親はかなり前に引っ越したんだけど、知らなかったのか?」
 「ええ」
 「ずいぶん連絡しなかったんだな」
 「そうね。あなた、引っ越し先を知らない?」
 「俺、こっちにいないんだ。俺の知らない間に越したみたいだな」
 「あなたのご両親なら知ってる?」
 「知ってるかもしれないな」
 「聞いてもらえる?」
 「いいよ。うちに帰って聞いてみよう。そうだ。うちへ帰って聞いた後、ドライブに行かないか?」
 「ドライブ?」
 「ああ、海を見に行こう。時間はあるんだろう?」
 「あ、ええ」
 「車の中で話しをしよう。ここじゃ、聞かれたくない話しもあるだろう」
 「そうね」
 「うちに帰って車を持ってくる。ここで待っててくれ」
 近藤はバタバタと喫茶店を出ていった。姿をくらまそうかなと考える暇もなく、店の前にシルビアが停まって、近藤が降りてきた。
 「行くぞ」
 ホントはぼくも近藤と話したかったのに違いない。ほかに誰も話しをする人間がいなかったからだ。
 支払いを済ませた近藤に従って、シルビアに乗り込んだ。

 住宅地を下って、国道を下っていった。
 「君の両親のことだけど」
 「何か、分かった?」
 「いや。夜逃げ同然でいなくなったらしい。だから、うちの両親も行く先は知らないと言っていた」
 「そう・・・・」
 「そのうち、見つかるさ」
 ぼくは項垂れて、下を向いていた。両親に会って告白しようと思っていたのに、いなくなったと聞かされて、その気持ちが萎えてしまっていた。やっぱりぼくは一人で生きていこう。そう決めた。
 しばらくぼくの様子をうかがって黙っていた近藤が、ぼくの顔をちらりと見ながら聞いてきた。
 「その胸の膨らみ、本物か?」
 「え、ええ」
 「へえ。豊胸術を受けたのか?」
 「違うわ。女性ホルモンで大きくなったの」
 「そうか。自前なのか。へええ」
 近藤は感心したようにぼくをじろじろ見た。
 「俺のせいか?」
 「えっ!?」
 「そんな格好をしているのは、俺のせいかって聞いてるんだよ」
 近藤に女装させられていなかったら、あるいはあのとき女装してコンビニの店員に応募しなかったかもしれない。だけど、そんなことがなかったとしても、ぼくは女装して応募していたのではないかと思う。
 「あなたのせいじゃないわ。成り行きでこうなっただけよ」
 「成り行きで? どんな成り行きだ?」
 「話したくない」
 「言えよ」
 「イヤ」
 「親友の俺にも言えないのか? やっぱり俺のせいなんだろう?」
 「違うってば。あなたのせいじゃない。それだけははっきり言えるわ」
 自分のしたことを他人のせいにしたくなかった。人のせいにしたくなることもある。だけど、何に於いてもやったのは自分自身なのだから、責任は自分にある。ぼくはいつもそう思っている。
 「そうか。安心した」
 近藤は、ぼくが女の格好をしていることに責任を感じていたらしく、ぼくの一言でホッとした表情を見せた。
 「いつまでそんな格好をしているつもりだ? そんなんじゃあ、女が寄ってこないだろう?」
 「いつまでって、・・・・ずっとよ」
 「ずっと? まさか、おまえ、男を相手にしてるなんてことはないよな」
 ぼくは黙って俯いていた。
 「そうなのか?」
 「・・・・ええ」
 「やっぱり俺のせいだな。俺があんなことしなければ・・・・」
 「あなたは関係ないって」
 「嘘だ。俺を安心させるための嘘に決まってる」
 「そうじゃない!」
 「じゃあ、おまえがそんな格好をするきっかけになった経緯を聞かせてくれ」
 話しても近藤はぼくがこうなったのを自分のせいだと悔やむかもしれない。やっぱり逃げ出せばよかったと後悔したけど、もう遅い。ぼくは話すことにした。

 女装してコンビニの店員に採用されたこと。ニューハーフクラブへスカウトされ、巧妙な罠にかかって借金地獄に陥ったこと。松本に助けられて愛人として囲われたこと。その松本に半ば無理矢理性転換されてしまったことなどを話した。

 「性転換!?」
 「そうよ」
 「じゃ、じゃあ、おまえは女になってしまったのか?」
 「ええ」
 「信じられない・・・・」
 近藤は呆然として、車を運転し続けた。
 「その男とまだ暮らしているのか?」
 「いえ。先月亡くなってしまって。だから、こっちに帰ってきたの」
 「そうか・・・・」
 車は海辺に着き、近藤は駐車スペースを見つけて車を停めた。車を降りて、浜辺を二人で散歩した。まるで恋人同士だなと思う。そう思いながら、どきどきしてきた。
 高校時代、近藤はぼくのことを好きだと言った。あの時は、ぼくは完全な男だったから、ホモなんてイヤだと思い、ぼくは逃げ出そうとしていた。女となった今、ぼくの方には障壁はない。近藤はどう考えているのだろうか?
 「宮本?」
 「何?」
 「今は勇一じゃないよな。なんて名乗ってるんだ?」
 「美晴。美しいに晴れるって書くの」
 「美晴か・・・・。いい名前だな」
 「ありがと」
 「綺麗になっちまったな」
 「ホント?」
 「ああ、おまえがこんな美人になるなんて」
 「思ってもみなかった?」
 「いや、女になったら美人になるだろうなと思ってたよ」
 ぼくはクスリと笑った。そう言えば、ぼくに女装させた時、結構嬉しそうな顔をしていたのを思い出した。
 「美晴・・・・ちゃん?」
 「美晴でいいわよ。何?」
 「頼みがあるんだけど、・・・・聞いてくれるかな?」
 「どんな頼み?」
 「・・・・えっとねえ。あの・・・・。美晴と俺は、まだ親友だと思うから頼むんだけどな」
 「何よ、一体」
 「見せてくれないか?」
 「えっ!?」
 「女になった美晴の体を見てみたい。あ、いや。やっぱりダメだろうな。忘れてくれ」
 そう言い出すんじゃないかと思っていた。近藤は照れたように砂浜をどんどんと歩いていく。ぼくは走って近藤に追いつき、近藤の前に立ちふさがった。
 「見せてあげてもいいけど、あなたが知ってる女の持ち物と変わらないわよ」
 「ホントか?」
 「ホントよ」
 「そうか。本物と変わらないのか・・・・」
 「だから、見たって大したことないわよ」
 「そんなに上手くできるものなのか?」
 「わたしの手術をしたドクターの腕が良かったみたいよ」
 「見せて貰ってもいいのか?」
 「ホントに見たいの?」
 「見てみたい」
 「じゃあ、見せてあげる」
 「まさかここでって言うわけにはいかないよな。・・・・ここに来るときに見かけたモーテルにでも行こうか?」
 見るだけですむのだろうか? そうは思ったけど、近藤になら、抱かれてもいいなと思った。処女というわけでもないし、近藤とは寝たこともあるからだ。勿論あの時は男同士だったけど。

 車をUターンさせて、しばらく来た道を戻ると、山道に向かってモーテルの看板があった。無人エントリー、誰にも会わずに入室できますと書いてある。
 車を車庫に入れて、階段を二階へ昇ると、突き当たりにキャッシュボックスのような器械が置いてあった。ご休憩4500円、ご宿泊8000円と書いてある。
 「休憩でいいな」
 近藤はそう独り言を言って、器械に一万円札を入れて、休憩のボタンを押した。『ありがとうございます。午後4時15分まで使用いただけます。時間を過ぎますと、超過料金をいただきます』とのアナウンスがあって、ドアのロックが外れた。
 入った右側にソファーとテーブル。テーブルの上にお茶の道具が置かれていた。ソファーの正面にカラオケ付きのテレビがデンと置かれている。左手の奥に豪華そうに見えるベッド。左手手前にトイレとバスがあった。
 ぼくはバッグをソファーの上に放り出して、お茶を入れてやった。近藤はお茶を飲みながら、イライラした様子だ。早くぼくを見たいらしい。ぼくは、ちょっと意地悪な気持ちになって、わざとゆっくりお茶を飲んだ。業を煮やした近藤が言い出した。
 「なあ、早く見せてくれよ」
 「焦らないでも時間はあるでしょう?」
 「そりゃそうだけど」
 ぼくを見つめる近藤の股間を見ると、ペニスが勃起しているのが分かった。やっぱり見せるだけではすみそうにないなと思いながら、お茶を飲み干した。
 「じゃあ、見せてあげる」
 ぼくは部屋の中をくるくる回りながら、ワンピースのファスナーを下ろしていった。スカートの裾が広がりながら、足元に落ちていった。そのワンピースを近藤に投げてやってぼくは言った。
 「近藤君、あなたも脱いで」
 昔ぼくは、近藤のことを君付けで呼んだことはない。だけど、女の子は、同級生の男に向かっては君付けで呼んだ方が相応しいと思ったのだ。
 「お、俺は脱がなくてもいいじゃないか」
 ペニスを勃起させているのに、近藤はそんな返事をした。
 「あら? わたしを見るだけで済ませるつもり?」
 こんなことを言ったのは、ぼくの方もその気になっていることを伝えたかったからだ。
 「ホントにいいのか?」
 「さっきも言ったでしょう? わたし、処女じゃないのよ。しかも、今は独身。わたしがいいって言ってるんだから、遠慮しなくていいわよ。据え膳食わぬは男の恥よ」
 ぼくは、近藤に歩み寄って、ジーンズのベルトを外して、下ろしてやった。トランクスの前がテントのように盛り上がっていた。
 トランクスの上から近藤の雄々しくなったものにそっと触れた後、ぼくは少し離れてパンストを脱いだ。近藤は、Tシャツを脱ぐ。鍛えられた筋肉が目に飛び込んできた。一瞬、羨ましいなと言う、男のような気持ちが沸いてきた。ぼくはもう男じゃないんだとその思いをうち消した。
 ブラを後ろ手に外してショーツ一枚になって、ぼくは胸を張る。
 「どう?」
 「すごいよ。かっこいいおっぱいだよ。ホント、綺麗だ」
 「もっと巨乳の方がよかったんじゃないの?」
 「い、イヤ、充分さ」
 「来て」
 ぼくは近藤の手を引いて、ベッドの上に横になった。
 「最後の一枚は、あなたが取って」
 ゴクリとつばを飲み込んで、近藤がぼくのショーツに手をかけた。ぼくは腰を少し浮かせて、脱がせやすくしてやった。
 ショーツが下ろされていく。急に恥ずかしくなった。今までそんなことを感じたことがなかったのに。
 「ホントにないんだ・・・・」
 感慨深げに近藤が呟いた。
 「宮本、イヤ、美晴? 足を立てて貰ってもいいか?」
 「いいよ」
 ぼくは足を立てて少し開いた。近藤がぼくの股間に頭をつっこむ。
 「おまえ、宮本だよな」
 「今は美晴よ」
 「あ、ああ。信じられない・・・・。まるで、本物の女だよ」
 「ドクターの腕が良かったんだって言ったでしょう?」
 「ああ、ホント、すごいよ」
 近藤は、ただぼくの女を見つめているだけだ。何もされないで、そんな風に見られたことがない。ドクンと心臓が打って、股間になにやら得体の知れない感覚が生まれた。ぼくは見られていると言うことに興奮している。
 何かがぼくの敏感な部分に触れた。それは近藤の舌先だった。ほんのわずかに触れるか触れない程度で、ぼくの敏感な部分、クリトリスを刺激し始めた。
 「あっ・・・・」
 思わず声が漏れた。近藤の舌先がヒダへと移っていった。
 「感じちゃう・・・・」
 「濡れてるよ」
 「恥ずかしい・・・・」
 近藤の舌が、ぼくの中に入ってきた。そうしながら、指でクリトリスを刺激する。気が狂わんばかりの快感が生まれてきた。
 「ああん・・・・」
 気が遠くなるほどの時間、近藤に舐められ続けた。その間、ぼくは何度か行った。こんなことは初めてだった。
 近藤がはい上がってきて、ぼくの唇をふさぐ。
 「フェラしてあげるわ」
 「いいよ。それよりも、君の中に入れてみたい」
 「そう。いいわよ」
 トランクスを脱いで、ぼくに覆い被さってきた。その時、近藤の怒脹したペニスが見えた。あんなに大きかったかなと首を傾げた。
 近藤が入ってきた。暖かなものが、ぼくを内側から暖めてくれる。ぼくは松本としかセックスをしたことがなかったけれど、今までとは何かが違う。ぼくはクリトリスを刺激して行ったことは何度もある。だけど、腟を使ったセックスではホントに行った覚えはなかった。今、ホントに行きそうな予感がしていた。
 「締まるんだね」
 「少しはね」
 「少しじゃないみたいだよ」
 「ホント?」
 「ホントさ。ほら、今締まったよ」
 締めているという感触はなかったけれど、そう言われたとき、体の中を快感が走り抜けていくのを感じていた。
 近藤は、ぼくの顔を見つめながら、ピストン運動を続けた。ぼくはそれに合わせて腰を振る。
 上ってきた。松本としたときには感じなかった絶頂への兆しが見えた。
 「あああっ!! 行きそう!!」
 「俺も、行きそうだ!」
 その瞬間、近藤がぼくの中でビクビクと振れるのを感じた。
 「あ、うっ!!」
 頭の中が真っ白になった。体ががくがくと痙攀するのを停められない。ぼくは近藤の背中を力の限り抱きしめた。