第11章 ニューハーフとして

 勤め始めて三日目、ぼくはママに借金を申し出た。後期分の授業料を振り込まなければならなかったからだ。
 「貸してもいいけど、あなたの身元をきちんと証明できるものが欲しいわ」
 「身元を証明できるものですか? 予備校の学生証じゃあ、だめですか?」
 「予備校じゃあ、ダメね。運転免許は?」
 「持ってません」
 「健康保険証は?」
 「父が失業中で・・・・」
 「じゃあ、戸籍謄本でいいわ」
 「戸籍謄本ですね。でもどうしてそんなものを?」
 「美晴ちゃんは、働き始めて間もないでしょう? お金を貸して逃げられたら困るのよね」
 「わたし、そんなことはしないです」
 「そう言って何度も騙されたわ。だから、必ず持ってきてね。そしたら、貸してあげる。勿論利子は付けさせて貰うわよ」
 「はい、それは分かっています」
 「いくらいるの?」
 「50万です」
 「50万。それくらいなら、すぐに返せるようになるわね。あなた、きっと人気者になれるから」
 母に連絡して、バイト先の履歴書に必要だからと戸籍謄本を送ってもらった。その戸籍謄本と引き替えに50万を借りて、授業料を振り込んだ。

 昼は予備校生、夜は女装してニューハーフクラブ勤めの生活が本格的にスタートした。朝8時にアパートを出て、予備校が終わると、そのままニューハーフクラブへ直行。夜中にアパートに帰る。ぼくから連絡しなければ、誰もぼくを捕まえられない。近藤との関係が完全に切れる。ぼくは内心ほくそ笑んでいた。

 お店では、セーラー服の他に、可愛らしいワンピース、ふわっと裾の広がったドレスなどを順に着せられた。
 ママが予想したとおり、ぼくはすぐに人気者になった。店の中で一番若く、自分で言うのも何だけど、女装すると結構可愛かったからだ。

 予備校での成績は順調に伸び、今度は目標の大学に受かる自信があった。判定もA判定ばかりだった。
 ところが、正月明けにまたもや風邪を引いてしまったのだ。それも40度近く熱が出て、立ち上がることすらできない状態だった。
 国立は受験できなかった。たとえ私立に受かっても、授業料を考えると受験するのが躊躇われた。今年も大学に進めなかった。
 「勇一。すまん。俺がふがいないから。おまえには苦労をかけてしまって・・・・」
 「仕方ないよ。ぼくが風邪を引いたりしなければ、浪人なんてしなくてすんだんだから」
 「大学には行っていた方がいいんだが・・・・」
 「もう一年頑張ってみるよ。この半年何とかやれたんだからね」
 「ホントにすまんな」
 「父さんの所為じゃないって言ってるだろう?」
 父の涙を初めて見た。

 ニューハーフクラブのママは、ぼくが働きに行くと、帰りに5000円の入った封筒を渡す。実際はもう少しくれてもいいんだけど、借金分を差し引いているのだと言われた。
 4月になって、再び授業料を振り込まなければならなくなった。
 「もう50万貸して欲しいんですけど」
 「いいわよ」
 ママは快く貸してくれた。前期分の授業料を振り込み、再び予備校生とニューハーフクラブのバイトが始まった。

 5月の連休が終わったある日、帰宅しようとするとママに呼び止められた。
 「美晴ちゃん」
 「はい、何でしょうか?」
 「ちょっとあなた、最近男の子らしくなったんじゃないの?」
 「そうですか?」
 「髭が濃くなったみたいだし」
 「・・・・そうかも」
 「ここで働くのなら、少し女の子らしくなった方がいいと思うけど」
 「えっ!? それって、どうすればいいんですか?」
 「女性ホルモンを飲んでみない?」
 「ええっ!!」
 そんなことを言われるなんて思っても見なかった。
 「バイトでやってるだけですから、そんなつもりはありません」
 「そう? でも、そうしてくれたら、もう少しバイト料をあげられるんだけどなあ」
 「バイト料が上がるのはいいですけど、女性ホルモンなんて・・・・」
 「あら? ずっとじゃなくていいのよ。ここで働いている間だけでいいわ」
 「でも、ホントに女みたいになってしまうと困るから」
 「止めたら、元に戻るのよ。知らないの?」
 「えっ!? ホントですか?」
 「嘘言ってもしょうがないでしょう?」
 「そうなんですか・・・・」
 「どうする? その方が借金が早くなくなるわよ」
 「分かりました。飲んでみます」
 「そう。よかったわ。これで、売り上げ増、間違いなしよ」
 早速ママが瓶に入った薬を持ってきた。
 「毎日1錠ずつ飲むのよ。忘れたら、元に戻るから、損するからね」
 「分かりました。欠かさず飲みます」
 こんな薬を飲んでもいいのだろうかと自問自答した。しかし、ママは飲むのを止めれば、元に戻ると言った。それならば大丈夫だ。大学に受かるまでのことだ。そう決心して薬を飲んだ。

 ぼくはもともと男性ホルモンの分泌が少ないのだろうか? 飲んでいる女性ホルモンの効果が顕著に現れてきた。
 飲み始めて2週間後にできた乳首の下のしこりは、どんどん大きくなって、夏休みを迎える頃には、ふんわりと膨らんで、サラシを巻かないと、男の姿では外を歩けなくなった。体の線も丸くなり、肌もきめ細かくなったようだ。だからぼくは、夏だというのに、予備校に行くときは長袖のだぶだぶの服を着ていた。
 散髪代が勿体ないし、女装するのに都合がいいからと髪の毛は伸ばしていたけど、女性ホルモンを飲み始めて伸びるスピードが速くなったようだ。ママに言われて、ウイッグしなくていいようにカットして貰ったのはいいけれど、そのままだと、男に見えないので、予備校に通うときは、後ろでまとめて括ったり、深々と帽子をかぶって誤魔化した。
 秋の声を聞く頃には、裸になったぼくは、股間を見なければ、まるで女の子になっていた。鏡に映る自分の姿を見るのが恐ろしかった。
 女性ホルモンを止めれば、元に戻る。ママの言葉を信じていた。

 ぼくは月に25日前後バイトに出かけていた。毎回5000円貰う。そのうち1000円を生活費として使っている。一月一万円で暮らすアイドルなんてテレビ番組が昔あったけど、それに比べれば贅沢な方だ。2000円が、家賃と光熱費分に消えた。残りの2000円を貯金に回している。
 ここ一年間で、250日あまりバイトに出かけたから、50万ほど貯金がある計算になるのだけど、実際に預金通帳を見てみると、30万弱しかない。
 女物の下着やいくつか女物の服も買った。勿論男物だっている。それに化粧品などの消耗品にも結構お金がいるのだ。
 授業料を振り込む時期になった。ぼくは再びママに借金を申し込んだ。
 「貸してあげるわよ。だけど、まだ借金が残っているのに、返せるの?」
 「えっ!? でももうかなり返したんじゃないですか? 250回くらいここに来ているから」
 「毎回5000円ずつ返して貰ってる勘定よ」
 「じゃあ、それだけで125万でしょう? 借りたのは100万だから、利子を入れてももう返してしまってるんじゃあ・・・・」
 「確かに、125万は返して貰ってるわ。だけど、貸してあげたのは100万じゃないわよ」
 「50万が2回だから、100万のはずです」
 「それだけじゃないわよ」
 ママはアッケラカンとして言った。
 「ええっ!!?? そんな馬鹿な!」
 「そんな馬鹿なっていっても、ちゃんと台帳に載ってるわよ。ほら見て」
 ママは、美晴と書いた台帳を取りだしてぼくに見せた。
 「最初の日にあげたシリコン乳房が26万円でしょう?」
 ぼくはエッと声を上げた。
 「あれは貸してくれたんじゃあ・・・・」
 「違うわよ。あれは、あなた専用なのよ」
 「でも・・・・、あれは、もうママに返したよ」
 「そうね。じゃあ、半額で引き取ってあげることにするわ」
 「そんなあ・・・・」
 「それから、ゴム製のショーツね。2枚あげてるでしょう? 一枚5万なのよね。あれは、下取りはできないわよ。陰部にあてるものですからね」
 好意で貸してくれていると思っていたのに・・・・。
 「女性ホルモンが一ヶ月分5万円でしょう? 衣装も洗濯しなければいけないから、1回に付き2000円いただいてるのよ。ウイッグもちゃんと洗髪に出してカットして貰ってるから、月に1万はかかってるのよ」
 「説明は分かったわ。いったい、わたしの借金はいくら残ってるの?」
 「利子を入れて150万ちょっとかな?」
 「150万も・・・・」
 「だから、今度また50万も借りたら、返せないんじゃないかと思って・・・・」
 「わたし、一晩で1万以上の働きをしています」
 ぼくは憮然として言った。
 「そうね。それは認めるわ」
 「じゃあ、借金がもっと少なくてもいいはずです」
 「でもね。あなたはバイトなのよ。正規の従業員と同じようにはお給料は出せないわ。みんなに示しが付かないもの」
 アルバイトに過ぎないと言われて、納得せざるを得なかった。頭の中で考える。女性ホルモンを止めても、衣装代として、毎回2000円取られる。その他の必要経費を取られないとしても、500日働かないといけない計算だ。なんてことだ。これじゃあ、詐欺と一緒だ。安い給料でぼくを働かせているようなものだ。
 このままじゃあ、どうしようもない。50万借りるのは諦めよう。借りたら、さらに200日あまり働かなければならなくなる。予備校は辞めて、自力で頑張るしかない。
 「アルバイトじゃなくて、正規職員になってくれれば、もっとお給料を出してあげてもいいけどね」
 「ホントに?」
 「その代わり、ショーに出たり、同伴をして貰うことになるけどね」
 「・・・・分かりました。で、いくらもらえるんですか?」
 「働きにもよるけど、そうね。一晩3万はあげられるでしょうね」
 「一晩に3万!」
 「その中から、借金を返して貰うことになるけどね」
 もう一度計算する。一月25日働いて、75万。衣装代5万。他にもなんだかんだと言って取られるだろうから、10万を引く。生活費は変えず、3万。家賃、光熱費5万。全部で、50万は残る。3ヶ月で借金を返せる。
 「3万は確実でしょうね?」
 「それはあなた次第よ」
 3万貰うためには、女性ホルモンは止めない方がいいかもしれない。薬代は月5万だから・・・・。頭の中で計算をやり直す。4ヶ月すれば、借金はなくなる。
 「分かりました。明日からでも正規職員にしてください」
 「そう言うと思ったわ。じゃあ、明日からは、社長出勤なしよ。午後4時にここへ来て。ショーの打ち合わせをするからね」
 「はい」
 予備校へ行っていたら間に合わない。それにもう予備校は辞めると決心したのだ。ともかく、借金をなくしてしまわなければ、この生活から抜け出すことができない。

 翌日予備校へ退学届けを出した。それから、貯金で衣装を少し買った。少しでも経費を減らしたかったからだ。
 午後4時に出勤して、他のニューハーフたちに混じってショーの打ち合わせを聞いた。さっぱり要領を得なかった。
 その日、封筒には3万円入っていた。ぼくを指名してくれたお客さんが結構いたからだと納得した。
 しかし、次の日は1万5000円しか入っていなかった。
 「うちは、給料は、毎日払うのよ。その日の店への貢献度に応じてね」
 それだけの働きしかなかったと言うことだろう。ショーなんて、ぼくにはできそうもない。一生懸命練習しているのに、舞台には上げてもらえず、その分給料が少なかった。
 こんなことで、借金はいつ返してしまえるんだろうか?

 「美晴ちゃん、もうちょっと頑張って貰わないと、借金が返せないわよ」
 「それでも少しずつは返しているでしょう?」
 「まあ、そうね」
 店の中に行きかけて、ママはぼくの方を振り向いた。
 「そうそう。みはるちゃん、あなた、アルバイトをやってみる気はない?」
 「アルバイト?」
 「そう。この店以外の仕事よ」
 「一体なんです?」
 「あなたが、最初にこの店に出たとき、あなたのことを気に入って、いつも来てくれている松本さんなんだけどね」
 「ああ、あの松本さん。松本さんがどうかしました?」
 「あなたに、お相手をして欲しいって言ってるんだけど」
 「相手をするって、あの、まさか・・・・」
 「あなたの想像は当たってるでしょうね。どう? やってみない?」
 ぼくは黙っていた。そう言えば、店のニューハーフたちも、店がはねると、お客と一緒に出ていっていた。ママはその斡旋をしているのだ。これも正規職員の仕事なのだろうか?
 「正直に言うけど、わたしにも斡旋料が入るの。それを除いても、あなたの手元には5万は残るでしょうね」
 5万という金額に心が動いた。お金のために男に抱かれる。娼婦だよな。だけど、経験がないわけじゃない。お金のためと割り切って、借金返済のためにやってみよう。そう決心した。
 「やります。早く借金を返したいから」
 「そう言うと思ったわ。じゃあ、今夜店がはねたら、松本さんと一緒に帰るのよ。明日は、午後5時出勤でいいからね」
 そう言い残して、ママは店の中へと消えていった。

 店に戻ると、ママが松本に耳打ちしていた。ぼくが承諾したことを告げているのだろう。松本は、ぼくの方を向いて、意味ありげな笑いを浮かべた。イヤな感じがした。止めておけばよかったと後悔したけど、恐らくもう後戻りはできないだろう。我慢して相手をするしかない。

 午前1時、店がはねると同時に、ママはぼくに目配せしてきた。ぼくは、急いで私服に着替えると店の前に出た。松本が、煙草を吹かしながら待っていた。
 「この日が来るのを、ずっと待ってたよ」
 ぼくは黙って松本のそばに寄った。
 「表通りまで歩くか?」
 「あ、はい」
 「もう1年もあそこにいるのに、君はぜんぜんすれないね」
 「そうですか?」
 「手術したって言うのは、嘘だってな」
 「はい。わたし、男のままですよ」
 ぼくは男のままと言うところを強調したのだけれど、松本は気にも止めない様子で首を傾げた。
 「それがどうしたのか?」
 松本はぼくが男のままだと分かっていて抱こうとしている。松本はホモなのだ。
 「ヘイ! タクシー!!」
 松本が手を挙げた。すぐにタクシーが停まった。
 「上野にあるサンライズマンションまで」
 運転手は、返事をせずに車を発進させた。

 オートロック式のマンションの12階にある部屋に連れ込まれた。3LDKの結構広いマンションだった。
 「ここは松本さんの?」
 「俺の隠れ家さ」
 「隠れ家?」
 「そう。ホテル代わりに使ったり、女を囲ったりするために借りている」
 「女って、松本さん、女ともやるの?」
 「もちろんさ。両刀遣いじゃいけないか?」
 「あ、いえ。そんなことはありませんけど・・・・」
 「風呂に入ろうか?」
 「一緒にですか?」
 「そうだよ。入ってくれるだろう?」
 言うことを聞いておかないといけないような気がした。ぼくは娼婦。お金で買われた身だ。
 サニタリーが集中している部屋のドアを開けると、左手に大きな鏡の付いた洗面台がある。その奥左手にトイレ。右手にバスルームがあった。バスルームの手前に脱衣籠が置かれていて、松本はさっさと着ていたものを脱いだ。
 ぼくもワンピースを脱いだ。松本は、裸のまま、バスルームの入り口にもたれて、服を脱ぐぼくを見ている。股間にぶらりと下がったペニスが目に入った。見られながら脱ぐのは恥ずかしい。
 「恥ずかしいわ」
 「いいじゃないか。早く脱げよ」
 ちょっと口をとがらせて、ぼくはブラを外し、ショーツを脱いだ。
 「ほう、下にそんなものを穿いているのか」
 ゴム製のショーツを見て松本が呟いた。
 「ないように見えるけど、その下にはちゃんとあるんだな」
 「ありますよ。わたし、男ですから」
 「早く脱げ」
 きつく締まっているゴム製のショーツをぼくはゆっくりと下げていった。股間に押し込めてあった睾丸が姿を現し、ペニスがにょきりと出てきた。
 「うまく隠してあるもんだ」
 松本は感慨深げにそう言うと、バスルームの中へ入っていった。ぼくの松本の後を追う。中に入ったとたん、シャワーを頭からかけられた。
 「きゃっ!」
 「おまえはホントに女だな。股間にそんなものをぶら下げているのが嘘のようだ」
 「ひどいわ」
 「こっちへ来い。体を洗ってやる」
 松本に近づくと、ボディーシャンプーを両手に取って、ぼくの体に塗りたくった。ぼくの後ろに回り、首筋に唇を這わせながら、両手でぼくの体をなで回す。洗うと言うより、愛撫するように。
 ぼくの方はと言えば、愛撫されていると言うより、くすぐったくて気が狂いそうだった。だけど、松本は一生懸命ぼくを愛撫している気になっている。だから、そんなことは言えなかった。
 「今度はおまえが俺を洗ってくれ」
 ひとしきり、ぼくの体をなで回した後、松本はぼくから離れてそう言った。ぼくは、ボディーシャンプーを手にとって、松本の体に塗り広げた。
 手のひらで体を洗っていると、ペニスが頭を持ち上げてきた。松本の顔を見上げると、顎で雄々しくなったペニスを指し示す。フェラチオを要求しているようだ。近藤に最後にしてやったのは確か2年前だったかなと思いながら、松本のペニスを口に含んだ。ボディーシャンプーが完全に落ちていなくて、口の中がぴりぴりした。
 「ベッドに行こうか?」
 「はい」
 体を拭いていると、手を引かれてベッドに押し倒された。唇をふさがれる。舌が入ってきた。それに応えるしかない。ぼくも舌を絡ませた。
 松本の手がぼくの乳房に掛かった。乳房が大きくなってから、男にそんなことをされたことがなかった。乳房を揉まれるのが、こんなに気持ちのいいものだとは思わなかった。乳首がきゅんとなって勃起しているのを感じた。それと同時にぼくのペニスも勃起した。
 「もっと大きかったんじゃなかったか?」
 乳首に舌を這わせながら、松本が言った。
 「ああ、あれは人工乳房を入れていたから」
 「そうか。あんまり大きくないんだな」
 「女性ホルモンを飲み始めて、まだ8ヶ月だもの。これでも大きくなった方だわ」
 「ほう、ホルモンだけでここまで大きくなったのか?」
 「ええ」
 「Bはないな」
 「Aしかないわ」
 「そうか。まあ、大きいより小さい方が感度がいいと言うからな。おまえも感度がいいようだ」
 ホントに感じるのだ。醒めた気持ちでいたのに、体の奥に燃え上がってくるものを自覚していた。
 松本の舌がさらに降りてきて、ぼくのペニスに達した。ぼくのペニスは痛いほどに勃起していた。そのペニスに松本は舌を這わせた。さらにタマをくすぐった。行きそうになるのを必死でこらえた。
 「俯せになって、腰を上げろ」
 言われた通りに俯せになって腰を上げた。松本は、ベッドサイドの引き出しから何かを取り出していた。松本の指がぼくの肛門に触れた。何かべたりとしたものを塗られたようだ。滑りをよくするものらしい。
 ぐっと押し広げられ入ってきた。久しぶりに感じるこの感触。ああ、気持ちがいい。ぼくは、やっぱりホモなんだなあと、今更ながら自覚した。
 ゆっくりとピストン運動をしながら、松本は左手でぼくの乳房を揉み、右手でぼくのペニスを握ってしごいた。3カ所を同時に攻められて、ぼくはどんどん上っていった。
 「あ、あううう・・・・」
 ぼくのペニスから精液がほとばしり出て、松本のペニスを肛門が締め付ける。ほとんど同時に、松本のペニスから精液がぼくの中にどっとそそぎ込まれるのを自覚した。
 体ががくがくと痙攀し、腰を上げていられなくなった。意識が薄れ、松本の体の重みを感じながら気を失った。

 気がつくと、松本はまだぼくの背中の上にいて、軽い鼾をかいていた。松本のペニスはまだぼくの中にいた。
 抜こうとすると、肛門が痙攀して、松本のペニスを締め付けるのを自覚した。松本が目を覚ました。
 「まだ、感じているんだな」
 「そうじゃないけど・・・・」
 「そうじゃないけど?」
 「・・・・やっぱり感じているみたい」
 「そうみたいだな」
 松本が起きあがって、再び腰を動かし始めた。また上り始めた。
 「初めてじゃないみたいだな」
 「え、あ、はい」
 「いつから?」
 「初めてしたのは、中学3年の時」
 「中学3年か。相手は誰だ?」
 「幼なじみの親友と」
 「親友とねえ。好きだったのか?」
 「いえ、そう言うんじゃなくて、彼がやってみたいって言って、ほとんど無理矢理・・・・」
 「そうか。その後は? 相手は変わったのか?」
 「ずっと彼だけ。高校を卒業するまで、月に1、2回やってた」
 「月に1、2回か。すると、彼のことを好きになったんじゃないのか?」
 「そんなこと・・・・」
 「正直に言え」
 「そうかもしれない。だけど、そんなことしちゃいけないと思って、卒業してからは連絡してないわ」
 「ふん、そうか。今こんなことをしていると知ったら、ビックリするだろうな」
 「そうでしょうね。ああ、また行きそう」
 「おまえは、こうされるのが嬉しいみたいだな」
 「嬉しいわ。わたし、きっとホモなんだわ」
 「そのようだな。いくぞ!」
 今度は、松本の方が先に弾け、そのすぐ後にぼくが達した。今度も気持ちよかった。

 また眠り込んでいたようだ。しかし今度は、目を覚ますと松本はぼくに背中を向けて眠っていた。時計は午前4時だった。帰ろうかと思ったけど、こんな時間にタクシーを呼ぶのもイヤだったので、そのままもう一度眠ることにした。目を瞑ると、あっと言う間に眠り込んでいた。