12月2日(火)

 午前3時まで頑張って、翌朝7時には起きだして、論文の仕上げに没頭した。もちろん研究室に泊まり込みだ。
 ぼくが泊まり込んでいることを知っていた南が朝食の差し入れをしてくれた。
 (あれ以来、南の態度がおかしいなあ。変なこと言わなきゃ良かったよ)

 午後4時、ついに論文が完成した。助教授室に勇んで持っていく。
 「先生、仕上がりました」
 「どれどれ。見せたまえ」
 沢田助教授は、論文を読み始めた。そうしてから、ぼくの目の前で、また書き込みを始めた。ソファーに座ってじっと待つ。
 「それをやり直したらOKだ。今日中に仕上がるかな」
 「やります」
 「8時まではここにいるから、仕上げて持ってきなさい」
 「はい、分かりました」
 研究室に掛けて戻って、仁美にメールを打った。朝から一度もメールしてなかった。もう午後5時を回っていた。
 (腹を立てていなければいいが・・・・)

 >Jin、ほんとにごめん。まだ、仕上がらないよ。
 >今晩8時までに仕上げなくちゃいけなくなっちゃった。
 >怒ってないかなあ。ほんとにごめんね。
 >明日は会えると思うから。
 >論文が仕上がったら、メールするね。
 >KEI

 夕飯も食べずに校正したお蔭で、午後7時には再び助教授室に論文を持っていくことが出来た。
 「よし、いいだろう。明日、教授に見て貰うが、まず修士論文としてOKだろう。お疲れさん」
 「ありがとうございました。お願いいたします」
 やったあ、出来上がった。仁美にメールしなくちゃ。午後8時ちょっと前だ。今からでも会えるな。

 >Jin、ついに仕上がった。
 >今からでも会えないかなあ。
 >会いたくて堪らない。
 >KEI

 待てども待てども返事は来ない。
 (メールチェックをしていないんだろうか? 8時には仕上げるとメールしたのに)
 そう言えば、夕方のメールにも返事が来ていなかった。
 (何かあったんだろうか? 電話番号を聞いていれば良かったなあ。そうだ。電話帳を調べよう。馬鹿だな。こんな簡単なことに気がつかないなんて)
 電話帳を引っぱり出して調べたけれど、君原仁美の番号は乗っていない。
 (そうか、一人暮らしの女性だから悪戯電話を掛けられないように電話帳に載せてないと言ってたっけ。返事が来るのを待つしかない)