12月1日(月)

 気がついたら、山本の腕に抱かれて眠っていた。時計を見たら、午前6時だ。
 (大変だ! 変身が解けてしまう!)
 急いで服を着ていると、山本が目を覚ました。山本も時計を見てびっくりしている。

 ふたりでホテルを飛び出して出口で別れた。山本も相当慌てているようだ。
 (山本のやつ、どうしたんだろう?)
 山本は、来週の土曜日もバンビで待ってると言い残して走っていった。

 通りかかったタクシーを止めて、アパートの百メートルくらい手前で降りて、辺りを見回し見つからないように部屋に戻った。戻って何分もしないうちに眠くなってきた。セーフだった。
 目が覚めると男に戻っていた。着替えをして、トーストを囓ると研究室へ向かった。論文の添削が終わっている筈だ。助教授室のドアをノックする。
 「中山です」
 どうぞとの返事にドアを開けて中に入った。沢田助教授が、ぼくの論文の入っている茶封筒を差し出した。
 「中山君、遅れて済まなかったね。添削は済んでるよ。非常に良くできている。2、3手直しした方がいいと思うから、赤のボ−ルペンで書き込みしてある。出来るだけ早く訂正して、提出してくれ給え。出来れば明日の夕方までに。いいね?」
 「お世話になりました。早速手直しします」
 廊下に出てから、論文を取り出してみた。2、3どころじゃなかったけれど、大筋では合格のようだ。研究室に戻ってコンピューターを立ち上げ、訂正し始める。文章だけではなく、図表の書き方も変えなければならない。
 ふと気がつくと、もう午後2時だ。昼食もしないで頑張ったのに、まだ半分も終わっていなかった。学食でカレーを食べながら、仁美にメールを送っておかなければと思い出す。

>Jin、ごめんなさい。今日は会えなくなっちゃった。
>論文作成が大詰め。明日の夕方までに提出しなければならなくなっちゃった。
>明日には絶対会えるように、今日は徹夜してでも頑張るから。
>あなたのKEIより

 ちょっと恋する女風のメールだなと思いながら、論文の校正を続けた。午後5時過ぎ、思い出してバイト先に電話を入れた。店長は、佐田と佐和ちゃんがいるから良いよと言ってくれた。中断したついでにメールチェックすると、仁美から返事が来ていた。

 >早く会いたかったのに、残念。
 >論文が早くできることを祈ってる。
 >連絡待ってる
 >from Jin

 相変わらず、素っ気ないなあと思う。ぼくのこの気持ちが分かっていないのだろうか。いや、直接会って確かめた方が良いのだ。メールでは心は尽くせない。