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 橋爪は、下諏訪にいた。町中で撃ち合いがあり、何人か死んだと言うことで、町には警官が溢れていた。榊やその手下は近くにいない。途方に暮れていたとき、榊から電話が入った。吹田にあるマンションの電話を携帯に転送するように設定してきていた。
 雅代を仕留めたという電話だろうと推測した橋爪は、絶望的な気分になった。あの雅代にもう二度と会えず、この先、榊の奴隷にならなければならないのかと・・・・。
 しかし、聞こえてきた榊の言葉に耳を疑った。榊は雅代を殺してはいなかった。雅代はまだ生きている。
 「雅代は元気なのか?」
 「ああ、元気だ。少し怪我をしているが、手当はしてやってる」
 「どう言うつもりだ? 何故殺さなかった?」
 「殺してしまってもよかったんだが、ちょっと気が変わったんだ」
 「気が変わった?」
 「ああ。おまえに会わせてやろうと思ってな」
 榊は既に優位に立っているような口調だ。
 「雅代に会わせてくれるのか?」
 「そうだ。殺す前にな」
 「俺の目の前で雅代を殺そうと言うんだな。・・・・おまえは・・・・残酷なやつだ」
 「そんなことは昔から分かっていただろう? どうなんだ? 会いに来るのか? 来ないのか?」
 榊は言ったことは必ず実行する。雅代は橋爪の目の前で殺されるだろう。そんな場面は見たくない。しかし・・・・。
 「・・・・会いたい。一目でも・・・・」
 「会って、びっくりするなよ」
 「どうしてだ?」
 「雅代に会って見れば分かる」
 「会ってみれば分かる? どう言う意味だ?」
 「来れば分かるが、雅代はもう以前の雅代じゃない」
 「なんだって?」
 「来るのか、来ないのか?」
 「すぐにこちらを発つ」
 「じゃあ、待ってるからな」
 雅代はもう以前の雅代じゃない? 訳が分からない。行ってみるしかない。