午後11時になっても先発した監視部隊からの連絡が入らない。小沢は焦り始めていた。選りすぐりの4人が、みんなやられてしまったとは思いたくなかった。しかし、連絡がまったく付かない以上、そう思わざるを得なかった。レッドイーグルは思ったよりも手ごわい相手だ。今更ながらそう思う。
このまま計画を続けて大丈夫だろうか? 小沢は少し後悔し始めていた。雅代の隠れているホテルがどこかは、まだ誰にも知らせていない。
しかし、下諏訪に行かせた4人が消息を絶ったと言うことは、奴らも雅代が下諏訪あるいはその近辺にいると見当を付けているのに違いない。偽名を使ってはいるが、雅代が発見されるのは時間の問題だ。明日の朝まで見つからないことを期待するしかない。見つからなければ、護衛部隊が何とか雅代を救い出してくれるだろう。それに、佐野だ。
夜が明けて、午前6時、護衛部隊の佐々から連絡が入った。雅代に異変が起こったという連絡は入らない。まだ無事のようだ。
「間もなく岡谷インターを降ります。これからどこへ行ったらいいんですか?」
「国道20号を下諏訪方面へ進め。左手に京セラの工場が見えてきたら、もう一度電話するんだ」
「京セラの工場ですね。分かりました」
「佐々、気を付けていくんだ。昨日現地入りした監視部隊からの連絡がなくなった。全員やられたと思っていい」
「大丈夫ですよ。4人まとまってますから」
「奴らは容赦しないぞ。戦争のつもりでいけ。分かったな」
「了解しました」
佐々は、この任務の危険性がほんとに分かっているのだろうかと小沢は思う。
再び電話が鳴った。
「小沢だ」
「佐野です。今、下諏訪にいます。彼女の居場所を教えてください」
「もう少し待て。護衛部隊が岡谷インターを降りる頃だ。もう少し近づいたら教える」
「待てません。昨日、警察官らしい男たちが4人やられています」
「やっぱりそうか・・・・」
「奴らはなりふり構わず、彼女を捜しています。早くしないと、やられてしまいます」
小沢は考える。相手の顔はもちろん、人数すら分からない。佐野一人で、守り切れるだろうかと。
「佐野。彼女の搬送は護衛部隊に任せて、周辺で様子を窺え。できれば、榊を無傷で捕らえたい」
「やつは殺します」
「わがままを言うのなら、教えんぞ」
「・・・・早く教えてください」
「諏訪大社の近くに小湯の上と言うところがある。そこの上山ホテルだ」
「すぐに向かいます」
「佐野! おまえはバックアップに徹すんだぞ」
返事はなく、電話が切れた。小沢はチッと舌打ちをする。無茶をしなければいいが・・・・。
すぐに電話が鳴った。
「佐々です。前方左手に京セラの工場が見えます」
「まっすぐ進んで、小湯の上へ向かえ。上山ホテルだ。512号にいる」
「了解」
後は運を天に任せるしかない。小沢は祈るような気持ちで待った。