「課長3番に電話です」
すべての手配を済ませ、一息ついているところだった。小沢は、電話機の3番のボタンを押して受話器を取った。
「はい、代わりました。小沢です」
「課長。俺です。佐野です」
受話器の向こうから、駅の放送らしい声、雑踏のざわめきが聞こえてきた。
「なんだ。どうした?」
「大石雅代。橋爪の女が生きているそうですね」
小沢は、一瞬考える。盗聴されているかもしれない。しかし、井上医師に電話したとき、はっきり大石雅代と言ってはいない。ここは佐野を利用した方がいいだろうと判断し、話しを続けることにした。
「どこから聞いた?」
「ある筋からです」
「ある筋?」
「彼女の居場所を知りたい」
「知ってどうする?」
「榊が、彼女を殺しに来ます。待ち伏せて、榊を殺ります」
榊が殺しに来る! 橋爪のところに連れていくと思っていたのに・・・・。佐野の言うことがほんとなら、予定を少し変更しなければならない。雅代を襲わせて、現行犯逮捕するのだ。佐野は止めなければならない。待ち伏せがあることは知られたくないからだ。
「おまえは警察官だぞ。復讐のつもりかもしれないが、そんなことは許さん」
「今回だけは、俺の勝手にさせてください。俺の大事な相棒の敵だ」
どうするか? 榊はレッドイーグルのナンバーツーだ。彼が居なくなれば、レッドイーグルの力は半減する。殺せとは言えないが・・・・。
この会話が盗聴されているとすれば、もし佐野を引き留めることができても、用心するに違いない。ならば・・・・。
「彼女は、諏訪のホテルにいる。今はそれだけしか言えない。明日の朝、もう一度連絡しろ」
「・・・・分かりました。これから、諏訪に向かいます。明日、電話します」
ここ1年、佐野は死に体だった。しかし、今の会話を聞いていると、生き返ったようだ。できれば榊を捕らえて、橋爪までたどり着いてくれるといいのだが・・・・。