榊は、橋爪がいるマンションの下の階にある自分の部屋で、若い男とモニターを見ていた。
「ボスが電話した男は、佐野とか言う大男だな」
「知ってるんですか?」
「ああ、ボスが一時関係していた男だ」
「ボスは・・・・男ですよね」
「ああ、そうだ」
「・・・・ボスは、ホモ・・なんですね」
「余計なことをしゃべるなよ。永久にしゃべれなくなってしまうぞ」
「は、はい」
橋爪は、あの大男が、雅代と一緒にやったデカとコンビを組んでいたと言った。つまり、あの大男も警察官だと言うことだ。橋爪はデカと知って付き合っていたのだろうか? たまたま浮気した相手がデカだっただけだろうなと榊は思う。
「警視庁のコンピューターに入り込めるか?」
「ボスがもう入ってるみたいですよ」
榊が見ているモニターは、橋爪のコンピューターに直結していた。榊が橋爪に対して、優位に立つために、橋爪が東京にいる間に黙って改造させたのだ。
橋爪のコンピューターには、レッドイーグルのすべてが納められている。そのコンピューターに自在にアクセスできる現在、覚醒剤の取引だけなら、橋爪にはもう用はないと判断していた。しかし、そのカリスマ性と、レッドイーグルの運営能力では、右に出るものはない人物であり、何よりも榊にとっては、夜のパートナーとして、橋爪を失うわけにはいかなかった。
「何を見ているんだ?」
「雅代さんの護衛に来る警察官のようですね」
「なるほど、そのようだな」
警察官の上半身の写真と経歴が、次々にモニターに現れては消えていった。
「全部で何人だ?」
「8人ですね」
「女一人を東京に連れて帰るにしては、ずいぶん多いな」
「罠かもしれませんね」
「そうだな。佐野という大男も来ることだし、楽しめるぞ」
榊は、にやにやしていた。殺しをやることの期待に快感を覚えていたのだ。
「9人の顔写真を打ち出せるか?」
「もちろんできますよ。カラーで」
「すぐにやれ。できたら、長野のメンバーにファックスしろ。あ、いや。佐野の分は送るな。やつは、俺が直接始末する」
「分かりました」
橋爪の浮気相手、佐野と雅代を、まとめて片づけてやる。できれば、橋爪の目の前で。榊はわくわくしていた。