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 もっとも大切にしていたパートナーを失い、佐野は失意のどん底にあった。通夜にも葬式にも行かず、署にも顔を出さずに酒浸りになっていた。
 「杉田あ」
 大男の佐野が泣きわめく姿は、むしろ滑稽でもあった。しかし、佐野は、自分のアパートの中で泣き濡れていた。
 杉田は、佐野にとってただの仕事上のパートナーだけではなかった。杉田は、佐野の恋人だった。ふたりには、肉体関係があった。そんな関係になったのは、二人が仲良くなった高校時代からだった。

 杉田が佐野を投げ飛ばして以来、ふたりは急速に親しくなった。互いの家に遊びに行き、親に内緒で酒も飲んだ。
 そんなある日、杉田が戯れに佐野に迫ったのだ。その時、二人とも酒を飲んでいた。互いにフェラチオをやり、ついには佐野は杉田の肛門を使った。
 それっきりでは終わらなかった。ふたりは本気で愛し合うようになった。杉田は女役で、佐野が男役だった。
 警視庁に入った佐野の後を追って、杉田も警視庁に入った。初めは別々の部署にいたが、二年前から、パートナーとして一緒に働くようになったのだった。
 他人には絶対ばれないように、普段は女に興味がある振りを装っていた。あの日、杉田が女装した日。杉田の方は、ホモであることがばれやしないかと心配していたようだが、佐野は、むしろ嬉しいような気がしていた。
 佐野にとって、杉田はかけがえのない相手だったのだ。

 そんな日々が続き、佐野は停職処分となった。職場放棄で懲戒免職になってもおかしくなかったが、それまでの功績と、小沢の取りなしでそうなったのだった。佐野は、もう仕事なんて辞めるつもりでいた。生きる気力が沸いてこなかったからだ。
 一ヶ月ほどして、佐野は思いだしたように京子に電話をした。京子に会えば、杉田のことを忘れられるかもしれないと思ったからだ。
 しかし、覚えていた京子の電話番号から流れてきたのは、『おかけになった電話は、現在使われておりません』のメッセージだった。
 佐野は、京子のマンションへ出かけていった。そこはもぬけの殻だった。その足でサザーンオアシスにも足を運んだ。ドアには蜘蛛の巣が張り、一枚の張り紙がしてあった。
 「長い間のご愛顧ありがとうございました。都合により、閉店いたしました。みなさまのご多幸をお祈りいたします。スタッフ一同」
 頼りにしていた京子もいなくなった。佐野は、ますます落ち込んで、廃人のようになってしまっていた。