鏡の中の女が雅代を見つめていた。シルクの真っ白なドレスを着た女は、目を見張るほど美しい。この世のものとも思えない美女は、雅代自身だ。
幼い頃から、雅代は美人だった。小学校時代の集合写真の中では、雅代だけがいつも浮き上がって見えていた。そばを通り過ぎる男たちが、雅代の姿に振り向くのを当たり前のように思っていた。小学校高学年を過ぎた辺りから、毎日のようにラブレターが舞い込んできたが、返事を書いたことなど一度もない。世界で一番美しいわたし。自分に釣り合う男など、いないと思っていたからだ。
そんな雅代が、こうしてあの男のために化粧をして着飾って待っているなどとは、自分自身でも信じられないことであった。しかし、それが現実だった。
雅代は、もう一度化粧の出来映えを点検する。完璧だ。もうこれ以上美しく装うことはできない。満足げに雅代はストゥールから立ち上がる。
もうすぐあの人がやってくる。そう思っただけで、頬が火照り体が熱くなるのを覚えた。体があの人を欲しているのだ。
「綺麗だよ。雅代」
振り向くと、あの人が立っていた。ラフなシルクのシャツにパンツ姿。女の様に長く伸ばした髪は後ろで束ねている。顔立ちも女のように優しい。しかし、目からはその意志の強さが垣間見える。
「待ってたわ」
雅代は微笑んで、その人、橋爪恭介に歩み寄った。強く抱きしめられ、キスされた。体中から力が抜けていった。
橋爪の手がドレスの上から雅代の乳房に触れる。橋爪の唇が、首筋から露わになっている肩へ向かってゆっくりと這っていくのを感じていた。
橋爪の右手が、雅代のドレスをたくし上げ、ショーツの中に入ってヒップをゆっくり撫で回していく。雅代は、もうそれだけで行きそうになる。
背中のファスナーがチリチリチリと降ろされ、申し訳程度に存在する細い肩紐が肩から抜けると、雅代はショーツ一枚の姿で、橋爪に抱かれていた。
「綺麗だ」
耳元でそう囁かれ、雅代はもはや虚ろになっていた。
抱き上げられ、ベッドへと運ばれた。するすると服を脱ぐ音。裸になった橋爪が雅代に覆い被さってくる。
固くなった乳首に、橋爪の吐息を感じる。微かに触れる感触。舌なのか唇なのか分からない。指が体中を這い回る。
「お願い・・・・」
「可愛い人だ」
雅代の思いを知っているはずなのに、橋爪は焦らせる。橋爪は、雅代のどこをどう責めれば感じるか、すべてを知っている。知った上で焦らしているのだ。
やがてショーツがゆっくりと剥ぎ取られ、橋爪が雅代の股間へと降りてくる。そこは、もはや熱い愛液で溢れていた。雅代は、もうかなり前からそれを自覚していた。簡単にそうなってしまう自分を恥ずかしく思いながら、そんな体にした橋爪を憎らしく思う。
雅代の固くなった小さな隆起を、襞を、橋爪の舌が這い回り、滴り落ちる愛液を吸った。
雅代は三度目の大きな波に飲み込まれる。しかし、まだ頂点には達していない。
「早く・・・・。早くわたしを満たして・・・・」
ようやく入ってきた。貫かれたまま、雅代は橋爪の舌を吸う。貫いてからも、橋爪は焦らそうとする。雅代は、腰を振って自らを絶頂へと向かわせる。
「いきそう・・・・」
「まだだ」
あと僅かなところで、雅代は足踏みをしていた。
「早く行かせて」
橋爪は返事をしない。するりと抜け出て、うつ伏せにされた。そして、すぐに入ってきた。
深さが増す。子宮を突き上げられる。橋爪が抜け出たとき、少し冷めかけたものが、再び絶頂へと向かって燃え始めた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、あああっ!!」
橋爪がその熱いものを雅代の中に勢い良く放出したとたん、雅代は達した。
「う、うーん」
シーツを力の限り握りしめる。頭が真っ白になる。息ができない・・・・。
「は、はあ・・・・」
力が抜け、ベッドの上にぐったりと埋もれる。
雅代は自分の中にいる橋爪を感じていた。ずっとそのままいて欲しいと願っていた。しかし、それはやがて抜け出ていった。
「愛しているよ」
橋爪が耳元でそう囁く。
「わたしも・・・・」
ベッドに突っ伏したまま、橋爪の方は見ずに雅代はそう答えた。