愛美からの電話が切れた。まったく呆れた女だよ。ぼくに生理を押しつけて、マスかくだけならまだ許してやってもいいけど、水田裕美と寝るなんて・・・・。
愛美には、ああ言ったけど、ぼくが愛美になっているとき、ほんとはマスターベーションはやったことはある。いや、よくやる。愛美としては、生理中にぼくがマスターベーションをやるなんてことは思ってもみないだろうけど、ぼくだって、女になった以上、女としての性的快感を経験してみたいと思うのは当然だろう。
生理痛が治まって、生理用のナプキンを取り替えた後、クリトリスを触ってみるのだ。最近、頭が真っ白にあるくらいに感じるようになっている。
しかし、愛美になっている間、ぼく以外の男とはやったことがない。二,三カ月に一度、生理でない時に愛美と入れ替わって、ぼくになった愛美とセックスを楽しむことはある。しかし、愛美になったぼくが、ぼく以外の男とセックスすることを愛美が許してくれないのだ。
愛美がぼくと入れ替わるのを望むのは、生理から逃げたいためだ。愛美は、生理から逃げるという大義名分(?)があるから、ぼくと入れ替わりたいと思うのは、当たり前の感情だと主張する。だから、ぼくが愛美になっているときは、まず生理中と言って間違いない。そう言うわけだから、例え愛美が許しても、ぼく以外の男とやることは無理なのだ。無理すればできないこともないけど、やっぱ、生理中はね。
一方、ぼくの方が愛美になりたいという理由は、女として、他の男とセックスしてみたい、ただそれだけしかない。だから、ぼくの方から、愛美になりたいとなかなか言いだせないのだ。
そう言うわけだから、ぼくは愛美と入れ替わっている間、生理痛に苦しめられるだけではなく、いろいろとストレスが多いのだ。愛美はそれを分かってくれない。6ヶ月年上だと言うことで、ぼくを押さえつけている。まったく困った状態だ。
ぼくたちがこんな状態になったのは、愛美のせいだ。愛美があんな薬を持ってこなければ、こんなことにはならなかった。
ぼくと愛美は、幼なじみだ。ぼくたちが5歳の時、愛美一家がぼくの家の隣に越してきた。愛美は凄く可愛い子で、ぼくは一目惚れしてしまった。そんなことは、今まで愛美に直接言ったことはないけど・・・・。
学校へ行くのも、家で勉強するのも、遊ぶのも、いつも一緒だった。ぼくは、親からいつも、もっと男らしくしなさいと言われ、愛美は、もっと女らしくしなさいと言われるタイプだった。
テレビ番組などで、窓を開けると互いの部屋というのが良くあるけれど、ぼくたちの部屋がまさにそれだった。
愛美は、ほとんど毎日窓からぼくの部屋にやってきて、勉強したり、ファミコンをしたりしたものだ。
そんな風にして育ったものだから、愛美は、ぼくのことを弟のように思っていて、異性として接せられたことがなかった。
あれは中学校へ入ってすぐの5月の連休だったと思うけど、愛美がぼくの部屋へやって来て、突然上に着ていたものを脱いで、ブラジャーひとつになってぼくに言った。
「ねえ、ねえ、雅也。わたし、胸が大きくなってきたのよ。だから、ブラジャーしたの。どう? 似合う?」
ぼくの方は、愛美のことを異性として感じ始めていた。だから、そんな愛美の姿に、ぼくのペニスは固く硬直していた。しかし、愛美はそんなことには無頓着だった。ぼくは、勃起したペニスを愛美に見られないように隠すのに一生懸命だった。
そんな愛美に変化が現れたのは、中学3年の夏休みだった。ぼくが、ひとつ下の女の子と付き合い始めたことを知ると、愛美はぼくの部屋へやって来て、涙ながらにぼくに訴えたのだ。
「わたしと結婚するって、約束してたじゃないの。どうして他の女と付き合うのよ!」
確かに愛美と結婚すると指切りをした覚えがある。だけど、それは幼稚園に通っている頃の話しだ。愛美は、そのことをずっと忘れていなかったのだ。
ぼくと結婚するつもりだったから、ぼくの前で裸同然になっても恥ずかしくなかったのだと言った。
ぼくは、愛美がそんな気持ちでいようとは思ってもみなかった。その言葉を聞いて、ぼくは付き合っていた子と別れる約束をし、愛美とずっと一緒にいるという証として、愛美を抱いた。愛美15歳、ぼく14歳だった。
その一ヶ月後、ファミコンで遊んでいると、愛美がぼくの部屋にジュースの入ったコップを抱えてやって来た。そんなことは良くあることなので、ぼくは気にもしていなかった。
「変な味だな」
「そう?」
「何のジュース? これ」
「ただのオレンジジュースよ」
「そんなことないだろう? 何か他のものを入れたんだろう?」
「・・・・分かった?」
「何、入れたんだよ」
「わたしたちが永遠に別れないで一緒にいるって言う薬」
「ええっ!? 何だって?」
「先々週ね、叔父さんが南米へ行ったお土産を持ってきたの」
「南米のお土産?」
「可愛い男女ペアの人形なんだけど、先週それを調べていたら、中から薬が出てきたの」
「何の薬だよ」
「だから言ったでしょう? 永遠に別れないで一緒にいるって言う薬だって」
「そんなものがあるもんかい」
「そう書いてあったんだもの」
「日本語で?」
「スペイン語で」
「スペイン語!? よく分かったなあ」
「辞書で調べたの」
「間違いないのか? その、永遠に別れないで一緒にいるって言う薬だと言うことは」
「間違いないと思うわ」
「思うわか・・・・。で、どうなるんだ?」
「うんと仲良くなるんじゃない?」
「今でも仲がいいじゃないか」
「もっと、仲が良くなるのよ」
「ぜんぜん変わらないみたいだけど」
「そのうち変わるわよ」
「まあ、いいか。毒じゃなかったみたいだから」
「愛美! 愛美!」
「あっ! お母さんが呼んでる。帰るわ」
「じゃあな」
愛美がぼくに飲ませた、永遠に別れないで一緒にいるって言う薬。その時は、何の効果もなかった。
ぼくは、愛美が部屋から消えた後、ファミコンに没頭した。
「雅也! いつまでファミコンやってるのよ。あなたは受験生なのよ。高校に通らなかったら、どうするのよ!」
ぼくの母が、ぼくの部屋にやってきて、喚き散らした。
「もう止めるよ」
「受験がすむまで、ファミコンは禁止よ」
「少しは息抜きが必要だよ」
「2時間も息抜きしてばかりじゃないの!」
「・・・・わかったよ」
母が部屋から出て行き、ぼくはいやいやながら机に座って勉強し始めた。
ぼくと愛美が結婚するとして、ぼくは愛美を養っていくために、いいところへ就職しなければならない。そのためには、まずはいい学校へ行かなければならない。いっぽう、愛美は、大した高校ではないけど、推薦を取って某女子校への入学が決まっている。だから、受験勉強がないのでのんびりしたものだ。女はいいなと思う。
夕食を挟んで、午後10時まで5時間勉強した。いつもの倍は勉強したことになる。さすがに疲れたぼくは、息抜きにファミコンのスイッチを入れた。30分ほどして、母が部屋へやって来た。
「また、ファミコンやってる!!」
「息抜きに、今始めたばかりだよ」
「嘘おっしゃい。何度言っても性根がないんだから! 今日からファミコン禁止って言ったでしょう?」
「ちょっとだけだったらいいじゃないか」
「あなたは、ちょっとがちょっとだけじゃないんだから・・・・。この部屋に置いていたら、ファミコンに熱中してしまうから、受験がすむまで、お母さんが預かりますからね」
「そんなあ」
「少しは我慢するってことを知りなさい。分かったわね」
「・・・・はあい」
とうとうファミコンを取り上げられてしまった。母が寝てからすれば良かった思ったが、後の祭りだった。
その後は、何にもやる気がなくなって、ぼくは風呂に入ってベッドの中へ潜り込んだ。
「愛美はいいよな、愛美は」
そんなことを思いながら、眠りについた。
もの凄く楽しい夢を見た。楽しい、楽しい夢だ。夢を見ているときは、覚えていたのに、目が醒めたとたん、どんな夢を見ていたのか思い出せなかった。
目を開けて天井を見た。あれっと言う感じだった。ぼくの部屋の天井は、ライトグリーンの壁紙が張られている。しかし、今ぼくが見ている天井には、小さな花柄の入ったベージュ色の壁紙が貼られたいた。
周りを見回した。この部屋は、愛美の部屋だ!! いつの間に愛美の部屋に来たんだろう? 楽しい夢を見ている間に、ぼくは夢遊病者のように愛美の部屋に忍び込んだのだろうか? 愛美は? 見回したけれど、愛美は、部屋の中にいない。愛美は、どこへ行ったのだろうか?
ベッドから起き上がって、足を床へ着けて立ち上がろうとした。その時、自分の着ているパジャマが目に入った。何だ!? この花柄のピンクのパジャマは?
見覚えのあるそのパジャマは、愛美のものだ。一体どうなっているんだ。どうして愛美のパジャマなんて着ているんだ。
ふと、愛美の机のそばの壁に掛けられている鏡に目がいった。鏡に中には、愛美が映っていた。鏡の中の愛美が、ぼくをじっと見つめていた。
何だ、ぼくの後ろに立っていたのか。そう思って振り向いてみた。しかし、そこに愛美の姿はなかった。慌てたぼくは、部屋の中をぐるぐると回って愛美を捜した。しかし、部屋の中には愛美はいない。
壁に掛けられた鏡を覗いてみた。鏡に映ったのは、愛美の顔だった。いつもは可愛らしい愛美の顔が、驚きと恐怖で歪んでいた。
右手を顔に持っていくと、鏡の中の愛美は、左手を顔に持っていった。鏡に映っているのは、ぼくだった!!
パジャマの上から胸を触ってみた。柔らかい膨らみがそこにあった。パジャマのボタンを外して、胸を覗いてみた。そこには、間違いなく隆起した胸、女の胸があった。
パジャマの前を引っ張って覗いてみた。ぼくは、水色のパンツを穿いていた。女物のパンツだ。さらに、そのパンツの前を引っ張って覗いてみた。そこにペニスはなかった。
げ、げ、げっ!! ぼくは、愛美になってしまった。昨夜眠るとき、受験勉強しないですむ愛美はいいなと思った。愛美になりたいと思った!? ・・・・そうかもしれない。
頬を抓ってみた。痛かった。鏡をもう一度覗いてみた。映った顔は、やっぱり愛美の顔だった。
ぼくが愛美になったと言うことは、愛美がぼくになったと言うことなのだろうか? ぼくは、部屋の窓を開けて、ぼくの部屋を覗いた。
ちょうどその時、ぼくの部屋の窓が開いて、ぼくがビックリしたような顔でぼくを見ていた。