第5章 新居にて

 ファックスに書かれていたとおりに、山手線に乗って高田馬場で降りて、目標を確かめながら上野さんが経営しているというアパートに向かった。
 歩いて20分ほどの場所にそのアパートはあった。
 「ここなの?」
 真美が白い建物を見上げていった。
 「結構立派だなあ」
 俺も感心して見上げた。
 (ホントに月1万円なんだろうか?)
 「ここで待っててくれないか。上野さんに挨拶してくる」
 「一緒に行っちゃ、だめ?」
 「だめに決まってるだろう? 俺一人で借りることになってんだから」
 「そう・・・・。じゃあ、待ってる」
 口を尖らせて上目遣いに俺を見る真美にちょっとクラッと来た。
 (よくよく見てみると、ものすごく可愛いじゃないか)
 そう思いながら、俺は上野さんの家へと急いだ。

 上野さんの家は、俺が住むことになっているアパートから歩いて10分ほどの場所にあった。3階建ての立派な家だった。
 (アパート経営って儲かるんだろうか?)
 都心に土地があれば、苦労しないですむんだろうなと思う。羨ましい限りだ。
 (上野さん、俺を養子にしてくれないかな?)
 そんなことを考えながら呼び鈴を押した。何度か押してみたけれど、誰も出てこない。俺は鍵の掛かっていないドアを開いて、中に向かって叫んでみた。
 「ごめんください」
 中は静まりかえっている。
 「ごめんください」
 俺はさらに大きな声で叫んでみた。ややあって、奥から足音がした。少し年増の女性が出てきた。
 「どなたでしょうか?」
 「九州の三原です。アパートを借りることになっている」
 「ああ、聞いてますわ。上がってください。ご主人が首を長くして待っていますわ」
 (ご主人? この女性は、奥さんじゃないのか。と言うと、お手伝いさんかな?)
 首を傾げながら、俺はその女性についていった。

 居間らしい部屋に通されると、見覚えのある禿の後ろ頭があった。上野さんだ。
 「お邪魔します」
 「やあ、遅かったな。何をしていた」
 髭面の優しい目をして上野さんが振り向いた。
 「ちょっと東京見物していまして」
 「そうか。大きくなったな」
 俺の頭から足の先まで見てそう言った。大きくなんてなっていないけど、上野さんが最後にうちに寄ったのは3年前だから、俺もその時よりは少しは大きくなっている。
 「今回はご迷惑をおかけしまして、申し訳ありません。あのう、これ、九州のおみやげです」
 俺は、お袋がお土産にと買ってくれた辛子明太子を手渡した。
 「気を遣わなくてよかったのに。おい。小夜さん。これ、冷蔵庫に入れて置いてくれ」
 「かしこまりました」
 (小夜さんって言うのか。やっぱりお手伝いさんみたいだな。すると、結婚していないのかな? そう言えば、うちに来た時も奥さんの話を聞いたことがなかったな)
 「コーヒーでも飲むか?」
 ホントは飲みたかったけど、真美のことが気になっていた。あんまり放って置いたら、何処かへ行ってしまうんじゃないかと思ったのだ。
 「いえ、結構です。それよりも、早くアパートに行って休みたいです」
 「そうだな。じゃあ、これが鍵だ。部屋は二階の202号室だ」
 スペアキーも一緒だろう、上野さんは二本のキーを俺に渡してくれた。
 「あのう。これ家賃です」
 俺は、一万円の入った封筒を手渡した。
 「あ、そうだったな。いつでもよかったんだが、まあ、預かっておこう」
 商売っ気のない人だなと思った。
 「困った時には、いつでもここへ来なさい。いいね」
 「他人を頼りにしないで自分の力で生きていくって両親と約束しましたから」
 「いい心がけだ。しかし、そうもいかん時がある。助けがいる時はいつでもいいなさい」
 「はい。ありがとうございます。それでは失礼します」
 「うむ」
 玄関に向かっていると、小夜さんがお茶を運んでくるところだった。
 「お茶を・・・・」
 「いえ、結構ですから。どうも」
 俺は頭を下げて、玄関を出た。

 急いでアパートの前に戻ると、真美が土を蹴りながら、いやコンクリートの舗装を蹴りながら待っていた。
 「お待たせ」
 「部屋はどこ?」
 「202号室だって。向こうの階段から上がるみたいだね」
 俺たちは、階段を上っていった。八つある扉の二つ目の扉を開けて中に入った。カビくさい熱気が押し寄せてきた。
 「ひどい臭い。窓を開けなくちゃ」
 玄関で靴を脱ぐと、真美は一直線に部屋を横切ってサッシを開いた。俺も靴を脱いで部屋の中に入って中を見回した。
 「へえ、ホントに家具が揃ってら・・・・」
 ベッドにクーラー、7段の整理タンスの横にローチェストがあって、その上に14インチのテレビとステレオコンポが置いてある。
 (ビデオまであるよ)
 タンスの中はさすがに空っぽだった。入り口側にあるクローゼットもかなり広い。1.5畳程度のキッチンには、食器棚があって、中にはきちんと食器が納められていた。冷蔵庫もかなり立派なものがでんと座っていた。バスルームを覗くと、洗濯機も洗面器やその他の小道具もすべて揃っていた。
 (これでホントに一万円かいな?)
 信じられない面もちで、部屋の中を眺めた。真美は、ベッドの上に腰掛けて、テレビのスイッチを入れた。
 「わあ、いっぱい入るわ」
 九州では、民放が3局入ればいい方だ。選択の余地が少ないが、東京ではチャンネルが多すぎて選ぶのに苦労しそうだ。
 タンスの横の壁に電話機が取り付けられていた。受話器を取ってみると、ツーッと言う発信音が聞こえた。
 (繋がっているみたいだ)
 俺は、上野さんの電話番号を確かめて電話してみた。
 《もしもし、上野でございます》
 小夜さんの声がした。
 「あのう。三原ですけど・・・・」
 《あら、三原さん。ご主人にすぐに代わりますね》
 ガサガサと音がして、上野さんの声がした。
 《はい、上野です》
 「三原ですけど、この電話は使ってもいいんでしょうか?」
 《いいよ。ただし、通話料だけは払ってくれよ》
 「通話料だけでいいんですか? 基本料金の方は?」
 《払いたいって言うんなら、払ってもらってもいいが》
 「あ、いえ。ありがとうございます。助かります。失礼します」
 受話器を置くと、今度はお袋に電話した。
 「あ、俺。さっき着いたところ。うん、いい部屋だよ。何でも揃ってるし。ああ、お土産なら渡しておいたよ。わかってるって。俺一人でがんばってみるから。じゃあ、また電話するよ」
 受話器を置いて、真美を見ると、テレビに見入っている。俺は床に腰を下ろし、横目でテレビを見た。
 (ホントに一緒にいるつもりだろうか?)
 股間が堅くなるのを覚えた。
 (見くびられてるって言うんだったら、このまま押し倒してもいいんだけど、信頼してくれてるって言うのがホントなら、そんなことはできないよな・・・・。ま、成り行きに任せるか)
 「おなか減ったね」
 そんな真美の声にハッと我に返った。
 「あ、ああ。そうだな」
 腕時計を見ると、午後2時を回っていた。
 「何か作ってもいいけど、材料がないでしょう?」
 「ああ」
 「ここに来る途中にマクドナルドがあったわね。あそこに行きましょう」
 「今日はウイークデーじゃないぜ」
 半額のウイークデーでもマクドナルドには行きたくなかった。
(ああ言う食い物は好きじゃない)
 「・・・・そうか。じゃあ、どうする?」
 「吉牛にしようか?」
 「吉牛って、牛丼?」
 「そう」
 真美はちょっと考えた。
 「まあ、いいわ。行きましょう」

 吉野家は、すぐ近くにあった。並を二つ頼んで食べ始めたが、真美は半分ほど食べたところで箸を置いた。
 「もう食べないのか?」
 「うん」
 そう答えて、俺の耳元で小さく言った。
 「初めて食べたけど、あんまり・・・・ね」
 口に合わないってことか。俺は吉牛は結構好きだ。早くて腹にたまる。味だって、そう捨てたもんじゃない。
 俺は吉牛が好きでマクドナルドは嫌い。真美は吉牛は嫌いでマクドナルドが好き。好みの問題だろう。
 「食っていいか?」
 「いいわよ」
 俺は、真美が食べ残したどんぶりを引き寄せた。

 吉牛を出てから、俺たちは近くで見つけたスーパーに寄って食料品を買い込んだ。
 「これだけあれば、一週間はもつわね」
 「ああ」
 二人とも両手に袋を提げている。かなりの出費だが、食費は生活に必要な経費だ。アパートに戻って、真美が冷蔵庫に入れているのを見ると、高い牛肉はなくて豚肉や鶏肉などの安いものばかりだ。ほかの食料品も、まとめて買うと安いと言ったものばかりを仕入れていた。
 (結構しっかりしているみたいだな)
 真美の横顔を見ながら、こんな女となら、長く暮らしていけそうな気がした。
 (真美にその気があるならの話しだが・・・・)
 しかし、真美はそんな素振りはまったく見せない。

 買ってきた食料品の片づけが終わったあと、俺たちは並んでテレビを見た。真美の肩が俺の肩に触れるたびに俺の股間が痛くなった。
 肩が触れないように逃げると、真美は身体を傾けてきて再び肩と肩が触れ合った。
 (誘っているのかな?)
 そうは思ったけれど、確信が持てない。俺は股間の痛みを押さえながらぼんやりとテレビの画面を見ていた。
 「夕食作るわね」
 6時半を回った頃、真美が立ち上がってキッチンへ向かった。
 「ホント。何でも揃ってるのね」
 シンク周りを観察して、改めて感心したように呟いた。
 「何作るんだ?」
 「今日は簡単に、カレー」
 「カレーか」
 「いや?」
 「いや。カレーは大好きだからいいよ」
 「よかった」
 真美は、包丁をとんとんと動かした。

 美味そうなカレーがテーブルの上に載ったのは、午後7時半頃だった。カレーの皿にチキンフライが載っていた。
 「うめえ」
 「ほんと?」
 「お袋が作ったカレーよりも美味いよ」
 「そう言ってもらえると嬉しいわ。お代わりあるから」
 「うん」
 俺は、バクバクとカレーを頬張った。
 「あれ? お代わりしないの?」
 「軽車両はガソリンがあんまりいらない。それに牛丼を真美の分まで食べたから」
 「あ、そうね。じゃあ、残りは冷凍しておくわ」
 こう言ったところも、かなり鍛えられているようだ。
 (苦労していると言うことかも・・・・)
 真美が皿を洗っている間に俺は風呂を溜め始めた。
 (風呂上がりの若い女なんて、恵子しか見たことないけど・・・・)
 そう思うだけで、股間がまた痛くなった。俺は発情した雄犬だ。

 しばらくテレビを見ていたら風呂のお湯が溜まった。
 「真美ちゃん。先に入んなよ」
 「あら? 男の人が先に入らなきゃ」
 そう言うふうに教育されているんだろうなと関心するやら呆れるやら。
 (今時の教育じゃないな)
 「じゃあ、遠慮なく」
 俺はパジャマと下着をタンスから取り出して浴室へ向かった。部屋から浴室前のスペースは見えない。見えたら、ペニスを押っ立てているのが見られていたことだろう。
 ゆっくりともお湯に浸かっておられず、俺はあたふたと体を洗って浴室の外に出た。
 「上がったよ」
 「じゃあ、わたしも」
 真美が手にしたピンク色のパジャマの上に、やっぱりピンクを基調としたブラジャーとパンティーが載っていた。萎えていたペニスがぴくりと動いた。
 ザアザアと浴室から音が響いてくる。俺はごくりとつばを飲んだ。
 (手を出しちゃいけないよな)
 興奮を抑えるために、チャンネルを回してお笑い番組にした。

 30分ほどたった頃、真美がバスタオルで髪の毛を拭きながら浴室から出てきた。
 (真美って、まったく無防備だよな。だから、継父に襲われそうになるんだよ)
 幼いながらも、ちょっとなまめしい真美を見ながらそう思った。
 「ビール、買ってくればよかったな」
 「ビールって、おまえ、飲むのか?」
 「ちょっとね」
 17歳の女の子が湯上がりにビールなんて、俺はちょっと呆れてしまった。

 しばらくテレビを見たあと、寝床の準備にかかった。
 (まさか、一緒には寝られないよな)
 俺は、クローゼットの中にあった冬物の布団を床に広げ、座布団を折り曲げて枕にして横になった。
 「和己さんが上に寝てよ」
 「いいさ。君はお客さんだから」
 「そんなことないわ。居候なんだから」
 「いいって。ベッドで寝ろ」
 しばらく迷っていたが、真美はベッドの上に横になって夏布団を引き上げた。天井の蛍光灯を消すと、俺はアッという間に眠り込んでしまった。よほど疲れていたみたいだ。

 大きな石に押しつぶされる夢を見て目が覚めた。部屋の中はまだ暗い。石の正体は、真美だった。俺の上に乗っているのだ。
 「おい、重たいよ」
 「親切にしてくれたお礼よ。女がお礼をするのはこれくらいしかできないもの」
 「お礼なんていいよ。止めろよ」
 そう言った割には、俺のペニスはぎんぎんに勃起していた。それはそうだろう。最後に恵子としたのは一ヶ月も前のことだ。溜まりに溜まっていたし、このシチュエーションで勃たなかったら男じゃない。
 その勃起したペニスに手のひらを当てて、真美は俺に唇を会わせてきた。
 「処女じゃないから遠慮しなくていいのよ」
 (処女じゃないのか。もう高校2年だものな)
 もう遠慮はいらない。据え膳食わぬは男の恥だ。俺は、真美の唇を割って舌を入れた。パジャマの中に真美の手が入ってきた。さらにトランクスの中に。そして、唇が俺から離れたと思うや、パジャマとトランクスが乱暴に引き下げられ、ひやりとした柔らかい感触をペニスの先に覚えた。
 (フェラチオなんてやってくれるの?)
 舌先で舐め回したり、銜えたりしてくれたが、ぎこちなかった。しかし、そのぎこちなさが何とも言えなかった。
 危うく真美の口の中に出しそうになったとき、真美の舌が離れた。
 (うへえ、あぶねえ、あぶねえ)
 俺は、真美のパジャマをまくり上げて乳房をまさぐった。それほど大きくはないだろうと思っていたけれど、意外に大きな乳房だった。その先端に小さなピンク色の乳首が直立していた。舌を這わせると、真美は体をぴくりと動かした。
 着ていたものを脱がせながら、体中を愛撫してやった。真美は口を半分開けて小さな喘ぎ声をあげた。
 指をそこにやってみると、そこはかなり潤っていた。女の一番敏感な部分、襞を丁寧に舐めてやり、その中まで舐めてやった。舌が締め付けられるのを感じた。
 「ホントにいいのか?」
 ここまで来てそんなことを聞くこともないとは思ったが一応聞いてみた。
 「うん」
 「コンドームは?」
 恵子とするときは、必ずコンドームをするかどうか聞いていた。避妊は、大人の約束事だ。
 「明日から生理になるはずだから、しなくても大丈夫よ」
 「そうか」
 生でやるなんて久しぶりだった。俺は、喜び勇んで挿入した。真美は顔を顰めた。処女ではないといったけれど、そんなにいつもはやっていないのだろう。
 もう少し頑張ろうと思ったのに、溜まりに溜まっていたせいで耐えられなかった。アッという間に真美の中に出していた。
 真美もそれなりには感じたようだったけれど、いわゆる行ったとは思えなかった。しかし、俺の方は、ものすごく満足した一発だった。