第11章 高級男娼として

 外出することができず、男を相手に売春している以外は、俺はごくふつうの女の子として暮らしていた。
 (こんな生活がごくふつうで、俺が女の子と言えるならの話だが・・・・)
 泊まりの男がいなければ、午前8時過ぎまでゆっくり眠ってからベッドを抜け出し、歯を磨いて洗顔を入念にする。トーストとコーヒー、卵料理の朝食を済ませてから、パジャマあるいはネグリジェを普段着に着替え、鏡に向かって化粧を施す。髪のブラッシングをすませると、ソファに座ってテレビを見るか、島に差し入れて貰った小説などを読む。毎日ではないけれど、時には料理の練習もする。俺は結構料理の腕はいい・・・・と思う。
 昼食がすむと、午後の仕事の準備して男を迎え入れる。夕食を挟んで夜の仕事。泊まりがなければ、シャワーを浴びてからベッドに入る。眠るのは、午前2時前くらいだ。
 泊まりのお客がいれば、状況は少し違う。お客が帰る時間の1時間前には起き出して、ネグリジェを着て化粧をする。お客が起き出したときには、コーヒーの準備ができている。若いお客の場合には、起き抜けの一発と言うこともあるけれど、ここに来るお客は少し年輩が多いのでそんなことは滅多にない。服を着るのを手伝ってやり、コーヒーを一緒に飲んだあと、見送りのキスをして終わりだ。

 俺が今いる部屋は、以前いた部屋とは違う。前の部屋は1Kだったが、この部屋は俺のいるところだけでもリビングとベッドルーム、バストイレがある。
 リビングは12畳くらい。真ん中に本革張りのモスグリーンの応接セットがでんと置かれている。テーブルは大理石づくりのようだ。32インチのデジタル放送対応のテレビとステレオセットが壁際に置かれている。その横にはカウンターがあって、高級ブランデーやスコッチなどが並べられている。
 中央付近のドアを開くと、バストイレにつながっている。このバストイレは、そこだけでソープランドの一室くらいの広さがある。お客の一人がそう言っていた。お客の要望があれば、俺はソープ嬢を演じなければならない。
 その隣の扉はベッドルームに通じるもので、ベッドルームには大きなダブルベッドとドレッサーが置かれている。天井は鏡張りで、モーテル風の作りだ。違うのは、一方の壁がクローゼットになっていて、俺が着る服が納められていることだ。

 バストイレのドアのちょうど真向かいのドアからお客が入ってくる。隣の部屋には、島が事務員風の服を着てパソコンに向かって何かを入力している。表向きは、ここは大阪にある商社の東京出張所と言うことになっていた。お客たちは、取引に来たというような顔をしてこのマンションの一室を訪れ、俺のいる部屋で欲望を果たして帰ると言った寸法だ。

 お客が来ると、島から電話が入りお客の好みが伝えられる。俺はその好みに従って着替えをする。看護婦スタイルや、スチュワーデス、ウエイトレスやバニーガールなどの格好をさせられるのだ。時には、お嬢様風の清楚なワンピースということもあった。
 午前中にお客が来ることもまれにはあったが、たいていは午後2時から4時までと、午後7時から9時まで、そして午後10時から12時あるいはオールナイトと言うのが、俺の接客スケジュールだ。
 お客が部屋に入ってくると、俺は笑顔で迎え入れ、上着を取ってリラックスさせてやる。
 「ブランデーなどいかが?」
 そう言って、コニャックを注いでやる。お客とブランデーを舐めながら、しばし談笑した後、お客の要望に従って何でもやってあげる。
 「そこで踊りながら脱げ」
 と言われれば、その通りにする。
 「フェラチオしてくれ」
 と言われれば、ソファーに座ったままのお客のペニスをズボンから取り出して銜えてやった。
 縛りなどのソフトSMもやる。ディルドーを俺の中に入れさせたり、時には、俺がお客相手にアナルファックをやってやることもある。
 フィニッシュはベッドの上とは限らない。ソファーの上、床の上、カウンターで立ったまま。バスタブの中。俺は、お客の要望には何一つ抵抗せずに従った。そうしなければ、食事を与えてもらえなかったからだ。
 最初の頃はぎこちなかったけれど、島の細かな指導のおかげもあって俺も次第に腕を上げ、お客は大満足で帰っていった。同じ客が何度も来てくれることを考えれば、俺の男娼としての腕が確かなことがわかるだろう。
 もちろん、最初の頃は嫌々ながらやっていたけれど、男たちのよってもたらされる快感が俺を変えた。
 (どうせやらなければならないのなら、楽しまなくちゃ)
 考えを変えると、男たちが面白く思えた。俺にサービスさせているはずなのに、結局は俺のために一生懸命腰を動かしているのだ。
 何人もの男たちに、いろんな種類の快感を教えて貰い、男の喜ばせ方を学んだと言っていい。

 「和美ちゃんは、スタイルがいいねえ。そのオッパイはシリコン入りかい?」
 「残念でした。モノホンです」
 俺は、1年あまりの間にCカップに育った胸を誇らしげに男の目に晒した。アナルファックの快感を覚えさせられたあの数日間の調教が終わった後、島は毎月一回のリュープリンに加えて、週一回女性ホルモンを注射した。
 俺の胸は急速に成長して、3ヶ月後にはAカップとなり、半年後にはBカップになった。その後の成長はややゆっくりだったが、今はアンダーとトップの差は13センチになっていた。
 乳房だけではなく、体全体が完全に女性化していて、俺の股間にペニスがあるのを確かめて、驚きに首を傾げるお客も結構いた。

 お客は絶えることがない。スタイルがいいだけではなく、俺は女としてはかなりの美人だからだ。多くのお客が、俺は仲間由紀恵にそっくりだと言った。俺自身は、彼女よりも俺の方が美人だと思っている。
 そんな俺が、あられもない格好をして、ありとあらゆる性技をこなすのだから、お客が絶えるわけがなかった。

 そんなある日のこと、いつものように午後のお客を迎え入れて挨拶しようとして、俺は慌てて下を向いて顔を隠した。
 (まさか。どうして、こんな所へ・・・・)
 お客は、俺の親父だった。俺は動揺を隠せなかった。しかし、それを何とか押さえ込んで、下を向いたままいつもの挨拶をした。
 「いらっしゃいませ。上着をお取りしましょう」
 「あ、うん」
 俺は、親父の後ろに回ってスーツの上着を脱がしてやった。しばらくぶりにあった親父は白髪が増えていた。
 「お飲物は?」
 「そうだな。オールドパーを貰おう。ロックで」
 棚に並べられた酒瓶を眺めてからそう注文した。
 「かしこまりました」
 俺は、顔をやや背け気味にして、カウンターに入り、グラスに氷を入れてスコッチを注いだ。親父のそばのテーブルの上にグラスを置くと、俺は両膝をついて下を向いていた。
 親父は、旨そうにスコッチを舐めた。
 「顔を上げて、わたしに見せなさい」
 髪の毛が伸びて綺麗に化粧した俺は、自分でもまったく違った人間に見えると思っている。
 (気づかないと思うけど・・・・)
 それでも恐る恐る顔を上げた。
 「聞いていたよりずっと美人だ」
 俺は少し顔をこわばらせながら、笑顔を作った。
 「どんなサービスをしてくれる?」
 親父は俺だと気づかないようだ。少しホッとした。
 「なんなりとも」
 親父といえどもお客だから、そう言わざるを得ないのだが、ホントにこのまま黙って相手をしていいものか俺は迷っていた。
 俺だと告白したとしよう。俺がここでどんなことをしているか親父は知っているはずだ。息子がニューハーフになっただけでも驚きだろうに、こんな仕事していると知ったら驚くだけではすまないような気がした。
 (俺が黙っていれば、波風は立たない。親父だと思わなければいいのだ)
 そう決心すると、少し楽になった。
 「フェラチオしてくれるか?」
 「はい」
 俺はソファーの腰掛けたままの親父の首に手を回してキスしてやった。舌を絡ませ、流し込まれてくる唾液を吸った。そうしてから、ワイシャツのボタンを外し、ズボンのベルトをゆるめてファスナーを下ろし、地味なブルーのブリーフを下げてペニスを取り出した。それは少し堅くなった程度でぶらんと垂れ下がっていた。こんなお客は初めてだったが、どんなお客でもフェラチオでいかせる自信があった。
 俺は顔を埋めて両手で握りしめ、舌先でゆっくりと舐め回した。グランスを銜えて吸い、舌の先で尿道口を押し開いてやった。すると、次第に堅くなっていった。
 「はあ・・・・」
 続けていると親父の口から、喜びに満ちたため息が漏れた。尿道口からわき出てきたわずかに塩辛い液体を舐めた。
 (もうすぐだな)
 俺は、深く息を吸い込んで、口を大きく開いて親父のペニスを根本まで飲み込んだ。吐き気を押さえて唇をすぼめる。恥骨に唇が当たった。唇をすぼめたまま、擦るようにしてグランスの根本まで引き抜き、もう一度根本まで飲み込む。三度目に引き抜いたとき、緊満していたペニスがさらに硬度を増した。
 (さあ、おいで。全部飲んであげる)
 ビクビクと痙攀し、喉の奥に突き当たってくるほろ苦い液体を、俺はすべて受け止め、そして飲み込んだ。
 「ふうう・・・・」
 親父はがっくりと力を抜いた。俺は、ペニスに残った液体を舐め尽くしてブリーフの中に戻した。
 「いかがでした?」
 「よかったよ。君はうまい。と言うか、女房にして貰ったことがないんだ」
 意外だった。そんなものなのかなと思った。
 「そうですか。ここにいらっしゃれば、いつだってやってあげます」
 「・・・・そうだな」
 俺は、俺のサービス料金がいくらなのか知らない。かなりの地位や金を持っている連中ばかりを相手にしているから高いと思う。親父が何度も来られるはずはないだろうと思っていた。
 「時間、ございますけど、どうされます? 入浴などは?」
 「あ、そうさせて貰おう。今晩は入れないかもしれんからな」
 「少々お待ちください。お湯の温度を確かめてきますので」
 お客が来るときには、バスタブにはお湯を溜めてある。俺は、バスルームに行って湯温を確かめた。
 「いい湯加減です。服を」
 俺は、親父の着ていたものを脱がせて畳んでおいた。親父が掛かり湯をしてバスタブに身体を沈める音が聞こえてきた。俺は着ていたワンピースを脱いで、下着姿でバスルームへ入っていった。
 親父は、そんな俺の姿をまぶしそうに見た。
 「スタイルもいいんだね」
 「ありがとうございます。体を流しましょう」
 「ああ、頼む」
 親父の体を流しながら、俺は考えていた。親父と風呂に入った記憶などない。風呂に入るどころか、親父の膝に抱かれた覚えもなかった。近所の同級生が父親とキャッチボールをする姿を見てうらやましく思ったことは一度や二度ではない。単身赴任でいつも家にいないからだと、自分で自分に言い聞かせていたけれど、俺は親父に疎まれている。そんな思いがどこかにあったことは否めない事実だ。俺が、物事に集中できずにすぐに放り出してしまうのは、親父のように立派な人間になれといつも言っているお袋への反発だったのかもしれない。
 こんな形だったけれど、親父と一緒に風呂に入って背中を流してやっていることが、俺には嬉しく思えた。
 「流しますよ」
 背中の石鹸を流してやると、俺は親父の前に回って股間を洗ってやった。萎えていたペニスが再び息を吹き返してきた。
 親父は、俺を乱暴に引き寄せてキスした。俺は膝の上に抱かれてそれに応えた。お湯で濡れたブラジャーが取り去られ、ショーツが下ろされた。
 親父は、俺をマットの上に押し倒して、俺の乳首に吸い付き、乳房を揉み、俺のペニスを撫でたりしごいたりした。
 「大きなクリトリスだ」
 そう言って、俺のペニスを銜え舐め回した。このころには、俺は相手が親父だなどと言うことは忘れていた。
 「ああん」
 「さあ、いくよ」
 俺の両足は親父の肩にかけられていた。親父の顔が近づいてきた。
 「あうん・・・・」
 親父が入ってきた。暖かくていい気持ちだ。親父は腰を動かす。大きく小さく、ゆっくりそして早く。入り口でこちょこちょしたかと思えば、ぐっと奥まで差し込んできた。
 (うまいよ。親父・・・・)
 心の中でそう呟いていた。動きが性急になってきた。まもなくフィニッシュだ。俺も上り詰めそうになっていた。
 「ううぅぅっ!」
 親父の精が注ぎ込まれてきた。俺は収縮を繰り返しそのすべてを受け取った。

 しばらく意識をなくしていたようだ。気がつくと、俺はベッドの中にいて、親父の愛撫を受けていた。
 親父は、ベッドの横に置いていた電動のディルドーを見つけたようだ。
 「使ってもいいか?」
 「はい。ご自由に」
 「俯せになって、腰を上げなさい」
 「はい」
 俺は言われたとおりに俯せになり腰を上げた。親父の舌が俺のアヌスをはい回った。舌が離れると、電動ディルドーの音がし始めた。アヌスの周りをディルドーの先端が動き回り、ゆっくりと挿入されてきた。
 「ううん・・・・」
 「なんていやらしいんだ。おまえはホントに淫乱だ」
 「ああ、もっと言って。もっと虐めて」
 親父はディルドーを操作しながら、俺のペニスを握り、睾丸を弄んだ。
 「ああ、行っちゃう。行っちゃう。行っちゃう・・・・」
 お客にディルドーで行かされることなどほとんどない。最後はペニスを挿入されるからだ。しかし、ディルドーだけで俺は行ってしまった。
 「すぐに大丈夫か?」
 「はい。何なりとお申し付けください」
 気怠い身体を起こして、俺は答えた。
 「じゃあ、キスしてくれ」
 俺は親父に抱きついて舌を絡ませた。親父は、俺の胸を揉みながら、唇を離して舌が首筋から次第に下へ降りてきた。
 「ホントに大きなクリトリスだな」
 そう言って、俺のペニスを腹の方に押し上げると入ってきた。
 「君は、わたしの女房の若い頃によく似ている」
 (えっ!? 気がついたんじゃあ・・・・)
 「若い頃に戻ったようだ」
 (違うのか。よかった)
 「女房を裏切ったのは、今日が初めてだ。それなのに・・・・」
 (どういう意味だろうか? お袋が親父を裏切っていたとでも言いたいのだろうか?)
 「ぐううう」
 親父の言葉が気になって、俺はいけなかった。しかし、行った振りをした。
 「い、いいっ!」
 声を上げ、ホントに行ったときは自然に締まるアヌスを俺自身の意志で締めた。

 親父はシャワーを浴びている。俺は、ビデで汚れた部分を洗い流してから、下着を身につけ、ワンピースを着て親父が出てくるのを待った。
 バスルームから出てきた親父に服を着せてやり、お別れのキスをした。
 「ご満足していただけたでしょうか?」
 「ああ。期待していた以上だった。ありがとう」
 「また、いらしてください」
 親父は俺のそんな言葉に答えず、部屋を出ていった。

 親父は、ホントに俺だと気がついていなかったのだろうか? それにあの親父の言葉。気にはなったけれど、それ以上のことを知る手だてはなかった。