第10章 訓練第二段階

 肩を揺すられた。
 「起きなさい。和己。もう朝よ」
 島の声だった。目を開けると、いつものワンピース姿の島が目の前にあった。部屋を見回すと、いつものマンションだった。俺は、いつものように、パンティーにシリコンの人工乳房入りのブラジャーを身につけてベッドの中で寝ていた。
 昨夜のことは夢だと思った。しかし、アヌスにはまだペニスが刺さっているような違和感を覚え、口の中にはザーメンの匂いが残っていた。昨夜の出来事が事実だと思い知らされた。
 「何してるの? 早くしなさい」
 「ひどい。ひどいじゃないか・・・・」
 「何が?」
 まるで何事もなかったように、島が小首を傾げた。
 「よってたかって俺を男に犯させるなんて」
 「あなた。ニューハーフになりたいでしょう? 男の相手ができなくてどうするのよ」
 「男の相手なんかしたくない。するつもりもなかったのに・・・・」
 「ただの女装趣味だったら、九州に帰っておやんなさい。新宿でニューハーフをするって言うのなら、男のひとりやふたり、手玉に取る位じゃないとやっていけないのよ」
 そう言うものなのだろうか? これには答えることができなかった。
 「さあ、早く服を着て」
 「いやだ!」
 「女の子がそんな口を利くものじゃないわよ」
 「俺は女じゃない」
 「いえ、女よ。あなたは、二十人からの男を喜ばしたのよ。しかも、すごい声でよがっていたわ」
 「う、嘘だ!」
 「嘘なもんですか。ホントに覚えていないの?」
 覚えていた。俺は・・・・、俺は男のペニスをアヌスに受け入れて喘いでいた。涙がポロリとこぼれた。
 「さあ、トレーナーがもうすぐ来るわ。早く服を着なさい」
 「トレーナー?」
 「そう。昨日は、あなたが男を受け入れられるかどうかと言うテストをしたの。本質的に男を受け入れられない子もいるからね。あなたはそのテストに合格したから、今日からは、本格的にあなたの体に男に抱かれる快感を覚え込ませるのよ」
 「いやだ。絶対にいやだ」
 「聞き分けのない子ねえ。もう一度薬を使って欲しいの?」
 (やっぱり何か薬を使っていたのだ。そうじゃなかったら、ペニスをアヌスに突っ込まれて喜ぶはずなんてないんだ)
 「いやだ!」
 「いやでもやって貰うわ。これまで投資した分を返して貰わないと行けないからね」
 「初めからそのつもりで・・・・」
 「当たり前でしょう? 誰が慈善事業でこんなことをするとでも思っているの?」
 「くそ!」
 俺は島に殴りかかった。島を殴り倒して、ポケットの中にある鍵を奪えば、この部屋から逃げ出せると思った。
 しかし、目の前に火花が飛んだ。薄れていく意識の中で、島が手にしていたスタンガンらしい器具が目に入った。

 磔になった全裸の女の姿が目に飛び込んできた。口には穴の空いたボールをかませるタイプの猿ぐつわをされていた。女は苦しそうに藻掻いていた。よく見ると、股間にはペニスがある。
 (あれは女じゃない)
 もっと近寄って見ようとすると起きあがれなかった。俺の手首と足くびがベッドに縄で縛り付けられていた。声を出そうにも声が出せなかった。口に何かが詰め込まれていた。
 磔になったニューハーフも俺と同じように藻掻いていた。目を凝らしてよく見ると、それは俺だった。天井に取り付けられた大きな鏡に俺が映っていたのだ。
 ガチャリとドアが開いた。マスクをつけて顔を隠した全裸の男が入ってきた。
 「へへへへへぇ・・・・」
 俺は藻掻いた。しかし、手足を縛られた縄が食い込むばかりだった。男は俺の体を撫で回し、舌を這わせた。おぞましさで鳥肌が立った。
 (痛!)
 乳首に激しい痛みを感じた。男が俺の乳首を何かで挟んだのだ。痛みを堪えながら胸を見てみると、小さな洗濯ばさみのようなもので乳首を挟まれていた。
 (こいつ。サディストか? わああぁぁぁ)
 突然胸にさらに激しい痛みが走った。フッとその痛みが治まり、すぐに再び痛みがおそってきた。
 カチカチと何かを押す音がしていた。男が、何かのスイッチを押しているのだ。痛みがない時に胸をよく見ると、洗濯ばさみらしいものに電線がつながっていた。電気ショックを俺に与えているのだった。
 「感じるか?」
 俺は頭を振った。
 「そうか? しかし、勃起してるぜ」
 男が俺のペニスを掴んだ。
 (どうして・・・・)
 俺のペニスは痛いほどに勃起していた。
 「感じている証拠だ」
 そう言いながら、俺のペニスを銜えて頭を動かした。アッという間に俺は男の口の中に放出していた。男は、そのまま俺の目の前にはい上がってきて、口の中から俺が出したザーメンを俺の口の中にたらし込んできた。
 頭を横に向けようとしたが、髪の毛を捕まれて、猿ぐつわの穴の間から流し込まれた。
 「自分のザーメンはうまいだろう。へへへ」
 (変態やろう!)
 声が出ないとわかっていてもそう叫ばざるをえなかった。男は、俺の陰嚢を持ち上げて、アヌスに舌を這わせ、奥の方まで突っ込んできた。
 それに飽きると、今度は指を入れてきた。一本ではなく、二本、三本と。指が引き抜かれてホッとしていると、ウイーンウイーンという音が聞こえてきた。目の前に電動のディルドーが差し出された。
 「気持ちいいぞ」
 アヌスにクネクネと動くものを感じた。それが少しずつ奥へと入ってきた。不思議と痛みは感じなかった。・・・・いや、それは間違いだった。グリッと奥の方に入ってきたとたん激しい痛みが襲ってきた。
 「ぐぐぐぅ・・・・」
 「いい気持ちだろう?」
 俺は頭を振った。
 「そうか? これはどうだ?」
 ディルドーの位置を変えたのだろうか? 痛みの中に快感が生まれた。昨日の夜と同じ快感だ。俺は、知らず知らずのうちに腰を振っていた。
 (嘘だ。こんなの嘘だ。こんなことで感じるはずがないんだ。俺は男だ・・・・)
 昨夜は薬のせいであんなことになったと信じていた。しかし、今は薬など使っていない。それなのに・・・・。
 「そうだ、そうだ。もっと腰を振れ」
 気が狂いそうな快感が襲ってきて、俺は腰を突き出した。アヌスが何度もディルドーを締め付け、そのたびにペニスの先からザーメンが飛び出ていくのを感じた。
 射精すれば終わるはずの快感が、ずっと持続していた。男がディルドーを動かし続けているせいだった。
 「あう、あう、あう」
 俺は喘ぎ続けた。どれくらいたっただろうか? それ以上続けられると、ホントに気が狂ってしまいそうになった時、ディルドーが引き抜かれた。俺は、がっくりと力を抜いた。

 ドアが開く音がした。ぼんやりとした意識の中でドアの方を見ると、入ってきたのは島だった。
 「どう? 気持ちよかった? あら? ごめんなさい。猿ぐつわをしてたわね。猿ぐつわを外してあげなさい」
 男が猿ぐつわを外すと、島がもう一度尋ねた。
 「どうだった? 気持ちよかった?」
 「くそ!! おまえなんか死んじまえ!」
 「あら、あら。まだ、まだ、元気なのね」
 島は俺の尻をぺたぺたと叩いた。
 「かなりよがってたみたいだけど、よかったでしょう?」
 「なにがよかっただよ。気持ち悪かっただけだ」
 「そう? 気持ちよかったって言うまで続けるからね。それから、女の声で女言葉を使いなさい。そうでなかったら、いつまでたっても終わらないからね」
 「死んでやる!」
 「いいわよ。そしたら、女装したままの姿で、新宿の街のど真ん中に放り出してやるわよ。それでもいいの?」
 「くそ!」
 「だから、そんな下品な言葉を吐いちゃだめだってば。まだ、わからないの?」
 ぱしっと俺の頬を叩くと部屋を出ていった。
 「さあ、再開しようか?」
 男の口元に下卑た笑いが浮かんでいた。男の責めが再開された。ピンク色のビーズのようなものが繋がった器具をアヌスに出し入れされた。ビーズがアヌスを抜け出るたびに得体の知れない快感が俺を襲った。
 それがすむと男は再び電動のディルドーを使った。一番最初のディルドーは、そんなに大きなものではなかったけれど、次ぎに俺の目の前に差し出されてものは、ひと周りほど大きくなっていた。次から次へと繰り出されてくるディルドーは次第に大きくなっていった。ディルドーを差し込まれるたびに俺は行かされた。いや行くまで責められたという方が正しいだろう。
 「腹が減ったな。飯でも食うか」
 男は、俺の目の前でラーメンをうまそうに食った。その強いにおいが俺の空腹を助長した。
 「俺にも食わせてくれ」
 「俺って誰だ?」
 男は知らんぷりをして箸を動かした。
 「わ、わたしにも食べさせて、お願い」
 女声で女言葉で頼んだ。
 「おまえにやる分はない」
 ラーメンどんぶりを片づけると、ディルドーを片手に俺に近づいてきた。
 「もう止めて」
 「まだだ。今日一日は俺がおまえの身体を借り切っているんだ」
 男の責めは午後も続いた。その日最後に差し込まれたものは、最初のものの倍の太さはあったと思う。その太いディルドーを見たとき、俺は絶望的になった。
 「なに、たいしたことはないさ。たった5センチの太さしかないんだよ」
 太さを徐々に大きくされたせいか、そんな大きなディルドーを入れられたのに、それほどの痛みは感じなかった。快感はあったが、太いから快感がより強いと言うことはなかったようだ。
 午後5時時報がなり、俺のペニスがただの痙攀を繰り返すだけになった時、男は去っていき、俺は意識を失った。

 夜半、あまりの空腹に目が覚めた。
 (腹が減ったな)
 こんな異常な状況に置かれていても腹が減るものだと思った。両手両足を縛られたままの俺は、水を飲むこともできなかった。
 「お願いだよ。もう許してくれよ。何か食わせてくれよ」
 俺は大声を上げて泣いた。しかし、誰も助けには来てくれなかった。何時間か泣いたあと、俺は泣き疲れて眠り込んだ。

 アヌスに電動のディルドーを突っ込まれた痛みで目が覚めた。
 「もう止めて。お願い・・・・」
 俺は、女声で嘆願するように言った。
 「まだだ。まだトレーニングは終わっていない。さあ、どうだ?」
 男がディルドーを動かした。男は俺の快感を開発すると言うより、自分で喜んでいるようだった。
 「ああっ・・・・」
 「気持ちいいか?」
 実際には痛みしかなかったのだけれど、俺はうんうんと頷いた。
 「嘘言うな。嘘言って、逃れようたって、そうはいかないぞ」
 男は執拗に俺を責め立てた。
 (こんなことがいつまで続くんだろう?)
 もう涙も出なかった。俺は、襲い来る快感に身体を委ねるしかなかった。

 (不思議だな)
 そう思い始めたのは、その日の午後の責めが始まってからだった。男の責めに何度も行ったのだけれど、射精しなくなったのだ。出るものがなくなったのではなく、勃起すらしなくなった。勃起していないのに昇ってきて、射精しないのに射精したとき以上の快感が俺の身体を突き抜けるようになった。夕方には、俺はそんな快感の中で何度も意識を失った。

 その翌日も、朝から夕方まで責め続けられた。激しい空腹があった。しかし、それ以上の快感に俺は酔っていた。

 次に目覚めた時、少し状況が変わっていた。両手は後ろ手に縛られていて、両足は太股から下ががんじがらめに縛られて、ベッドの上に転がされていた。
 ドアが開いて、同じようなマスクをした男が入ってきたが、前の男とは体格が違った。何よりペニスがでかかった。
 「いいケツしてるぜ」
 そう言いながら、俺のアヌスをゆっくりと撫でた。男はディルドーなどは手にしていなかった。俺の股に男の勃起し始めたペニスが触れた。今度は作り物ではなくて、生のペニスを俺の中に入れるつもりのようだ。
 (あんなものが入るのかなあ)
 人ごとのように感じていた。
 (あ、入っちゃった)
 痛みはなくわずかな違和感だけで、男の太いペニスを受け入れていた。
 (直径が5センチのディルドーを簡単に受け入れられるんだものなあ)
 まるで他人事のようにそう思っていた。男が腰を動かすたびに、快感が沸いてきた。昇り着く前に、男が俺の中に射精した。
 (なんだよ。いけず!)
 俺は口には出さずに心の中で叫んでいた。中途半端で物足りなかったのだ。
 「よかったぜ」
 (何がよかっただよ。自分だけいって)
 ふと思った。恵子もこんなことがあったんだろうなと。男の方は一生懸命やっているつもりでも、女は必ずしも行くとは限らないのだ。それがわかったような気がした。
 抜き去るのかと思ったら、男は俺の中に留まった。そして、そのまま腰を動かし始めた。冷めかけていた快感が再び沸いてきた。
 「どうだ? いいか?」
 「いい。とってもいい。もっとして」
 俺は、本気だった。中途半端で終わりたくなかった。男が再び俺の中で弾けたとき、今度は俺も行った。俺のアヌスが痙攀するように、男のペニスを締め付けているのを感じながら、俺は浅い眠りに引き込まれていった。

 翌日もふたりの男に犯された。男たちは、俺をうまく絶頂へと導いた。と言うより、俺自身がアナルファックで行くことを覚えたと言った方が正しいのかもしれない。俺は、腰を振って、一番感じるところへ男たちのペニスを導いていた。けれど、そのときには、そんなことには気づかなかったし、そう思いたくもなかった。

 六日目の朝、眠りから覚めると、島が俺の顔を覗き込んでいた。
 「起きて」
 手足を縛られていた縄が解かれていた。最後に男のペニスを受け入れてから数時間が経過していた。俺は、ゆっくりとベッドの端に起きあがって腰掛けた。
 「マスを掻きなさい」
 「えっ!?」
 「いいから早くマスターベーションするの」
 俺は、だらりとぶら下がったままのペニスを持ち上げてしごいた。そんな様子を島は嘲笑うかのように見ていた。
 「うっ!」
 ペニスの先から、ザーメンがチョロリと流れ出た。
 「ふうぅ」
 俺は大きなため息をついた。
 「どう?」
 「えっ?」
 「どっちがよかった?」
 俺は答えなかった。答えるのが怖かった。
 「どっちなの? する方? される方?」
 答えるまで尋ねるようだ。
 「・・・・される方がいい」
 「ホントね?」
 「はい。男の人にやってもらう方がずっといい」
 「それでいいわ。じゃあ、ご褒美をあげるわ」
 食事をさせてくれると思った。腹がグウと鳴った。

 島が部屋から出ていってしばらくすると、再びマスクをした全裸の男が入ってきた。また違った男だ。
 (ご褒美をくれるって言ったのに・・・・)
 男は俺に近づいてくると、腰を突き出して、半立ちのペニスを俺の目の前でぶらぶらさせた。
 何をさせようとしているのはわかっていた。だけど、当然のごとく俺は躊躇っていた。すると、男は俺の髪の毛をつかんでペニスを俺の顔に押しつけた。
 俺が横を向くと、男が俺に紙切れを渡した。
 『その男にフェラチオをしてやって、出たものを全部飲み込んだら、食事を与えます』
 とにかく腹が減っていた。俺は、指示通り、男のペニスにしゃぶりついて、舐め回しながらしごいた。男はなかなか行かない。俺は、唇をすぼめて頭を前後に動かし、指で根本をしごき続けた。
 (ああ、来る・・・・)
 あごが痛くなるほど怒脹してきて、ほろ苦いザーメンを放ってきた。男が俺から離れると、俺は口の中に溜まったザーメンをはき出した。

 男が出ていくと、別の男が入ってきた。男は、再び俺に紙切れを渡した。
 『その男にフェラチオをしてやって、出たものを全部飲み込んだら、食事を与えます』
 飲み込んだらと言う部分に赤線が引かれていた。
 (飲み込まなきゃ、食事をくれないんだ・・・・)
 涙が出た。死にたかった。だけど、女装させて新宿のど真ん中に捨てると言った島の言葉におののき、俺は死ぬことなどできなかった。どんな屈辱よりも死ぬことの方が怖かった。
 (仕方がない。背に腹は代えられない)
 俺は、男のペニスを握り、舌を使ってなめ回し、銜えて根本まで飲み込んで頭を動かした。
 (早く出して。お願い。全部飲み込んであげる。そしたら、ご飯が食べられるんだから)
 今度はすぐに怒脹してきた。男が俺の口の中に勢いよく射精した。俺は咽せながらもそのすべてを飲み下した。涙が出た。男は、俺の涙をひとさし指で拭って舌でぺろりと舐めてから部屋を出ていった。

 それから10分ほどして食事が運ばれてきた。俺はそれを餓鬼のようにガツガツと食った。野菜がたっぷり入ったお粥だったけれど、これほどうまい食べ物はないと思った。
 食べ終わってすぐに島がやってきた。
 「フェラチオは歯を立てないように。それから、もっと舌を使いなさい。フェラチオがうまくできなければ、食事はお預けよ」
 翌日から、食べ物を得るために、男を喜ばせるフェラチオをしなければならなかった。俺は食うために一生懸命男のペニスをしゃぶりそして吸った。勿論、アヌスで男を毎日受け入れた。

 一ヶ月が過ぎたときには、俺は男のペニスを吸うことが好きになり、アヌスで受け入れることに無上の喜びを覚えるようになっていた。
 「ずいぶんうまくなったわね。明日から、本式にお客を取ってもらいます。化粧をして、言われた服を着ること。きちんとサービスしないと、食事はあげませんからね。お客に助けて貰おうなんて思っても無駄よ。ここに来るお客は、それなりの地位や身分のある人たちばかりだからね。自分の身が危うくなるのを承知であなたを助けるような人はいないわ。あなたは言われるままにしておけばいいの。それで、快感とお金が得られるんですもの。こんな楽でいい商売はないでしょう?」
 俺はマンションの一室に捕らわれ、男娼として生きる羽目になってしまった。
 (いつまでだろう? 体を壊して役に立たなくなるまでだろうか?)
 絶望で気が狂いそうだった。