薫ももうすぐ十八になる。薫にある決心をさせるため、わたしは、自分の秘密を打ち明けた。
「薫、なぜ、あなたにこんな話しをしたか判る?」
「いや、判んない」
「あなたに女になって欲しいからよ」
「ぼくは男だよ」
「今はね。お母さんが初めてあなたのおしめを替えた時、ちょっとおかしいなと思ったの。三歳になった時お医者様に診ていただいたら、あなたは真性半陰陽らしいと言われたの」
「真性半陰陽?」
「そう。つまり、あなたは男と女の両方の性器を持っているの。大きくなったら本人の意思でどちらかにした方がいいと言われたわ。あなたも今年で十八歳だから自分でどうするか決める時期が来たの」
「女になっていいことがあるの? 母さんを見ているとちっとも楽じゃないみたいだけど」
「確かに日本は男性社会で、女がいくら頑張っても男性並みには扱ってくれないわ。女は縁の下の力持ちで、裏方さんよ。だけど、お母さんの経験からすれば、男より女の方がずっとすばらしいわ。ほんとにこの世を支えているのは女なのよ。それにセックスの喜びは男なんか比べ物にならないもの。お母さんが出来なかったことは、子供を産むこと。産めるものなら本当にお父さんの子供が欲しかったわ。だからあなたには子供を産める女を選択して欲しいの。もちろん束縛はしないけど・・・・」
「真性だったの?」
「そうよ」
「どちらの性もあるの?」
「そう」
「そうかあ。あのね、母さん。去年、高校に入ってすぐ、出血があったんだ。初めは痔かなと思っていた。夏休みにまた出血があって、気になったから、鏡で自分の股間を覗いてみたんだ。それまで、ぜんぜん気にもしていなかったから、そんな所は見たことがなかったんだ。そうしたら、変なんだ。医学書を調べてみて、ぼくは半陰陽らしいなと気がついた。ほんとは女で、外見が男に見えただけだと思っていた。乳房も少しずつ大きくなってきたしね」
「知ってたの」
「でも今日、母さんから真性半陰陽だと聞かされて、ちょっとショックだよ」
「そう、だからあなたは、男でも女でもどちらにも成れるの」
「どちらでも成れるんだね」
「そう、どちらにでも」
「母さん、従兄弟の健一さんを知ってる?」
「知ってるわよ。お父さんのお兄さんの子供でしょう。去年お葬式で初めて会ったけど、好青年ね。それがどうしたの?」
「その健一さんだけどね。実はずっとまえからよく知ってんだ。おじさん一家は福岡暮らしで、滅多にこちらに来ないから母さんは付き合いがなくてよく知らないかもしれないけど、ぼくは中学の修学旅行でおじさんのうちに寄った時から、健一さんとは仲良しになったんだ。今、健一さんは京都にいるから、内緒で時々会ってたんだ」
「へえ、そうだったの。知らなかったわ」
「ぼくは、健一さんのことが大好きなんだ。自分が女だったらどんなにいいだろうと思ってたんだ。去年、もしかしたらぼくは女じゃないかと疑いだしてからは、健一さんのことが頭から離れなくなったんだ。今日、母さんに女になれるって聞いて、ショックだったけど、とても嬉しいんだ。これで、健一さんに告白できるよ。好きだってね」
「健一君、びっくりしないかしら。男のあなたから好きだと言われて」
「この前会った時、ぼくが女の子だったら付き合ってくれるかって、それとなく聞いたんだ」
「なんて言ったの?、健一君は」
「有り得ない話だけど、もしそうだったら喜んで付き合うよ、って言ってくれたんだ。」
「本気かしら? 冗談だと思ったんじゃないの?」
「そうかもしれないけど・・・・。明日、また会う約束しているから、今日の話をきちんとしてみるよ」
「うーん、健一君、何て言うかしらね。健一君となら、お母さんも賛成なんだけど・・・・。お母さんも一緒に行ってあげようか?」
「いいよ。ぼくの口から言いたいんだ」
「判ったわ。いい返事をもらえるといいわね」
「もしだめでも、ぼく、女の方を選択するよ」
「ほんとに?」
「母さんの話しを聞いて、勇気が出たよ。女の方がすばらしいって言ってくれて。ほんとに女だったらどうしようかって、ちょっと迷っていたから」
「そうよ。女はすばらしいわ。女になって、たくさん子供を産んでちょうだい」
「健一さんがオーケーだったら、母さんの言う通り、何人でも産んであげるよ」
薫が結婚でもしたら、独りぼっちになってしまって寂しいなと思っていたところ、義兄の真一さんから求婚された。真一さんの奥さんは春に子宮癌で亡くなっていた。そのお葬式とそのあとの二度会っただけだが、真一さんはわたしを見て、一目惚れだったそうだ。自分で言うのは恥ずかしいけど。真一さんは真二より三つ年上で、顔はもちろん、性格も真二に良く似ていた。わたしもこのひととならやって行けると思った。わたしと亡くなった奥さんは同い年だし、子供さんは健一君ひとりで、今大学に行ってるから、真一さんは一人暮らしだ。真一さんも奥さんが亡くなって寂しかったみたいだ。真一さんの申し出を断る理由はない。喜んでお受けすることにした。