第9章 男に抱かれちまった

 金曜日の夜、その専務・吉田定男とホテルで会う約束をしたと島本香に伝えられた。こんな事をしてもいいのかと考えた。けれど、すでに吉田にファックされていたわけだし、今更という気がした。
 問題は、俺の意志でと言うところだけなのだ。
 (お金が必要なんだから。彼女と一緒にいるためだから)
 決心を固めた俺はばっちり化粧をして、彼女に勧められたライトブルーのワンピースに白のコートを着てホテルへと向かった。タクシーの運ちゃんもホテルのドアマンも、俺が男だとまったく気づかなかった。
 フロントに向かっていると、後ろから声を掛けられた。
 「真知子、こっちだ」
 彼女から俺の名前は真知子と言うことにしてあると聞かされていた。俺は、吉田の顔は知らないが、吉田の方は俺のビデオを見ているからわかっていたのだ。
 俺は声のした方を振り返った。ハゲでデブの醜い男を想像していたのだが、内藤剛志をもう少しいい男にしたような背の高い男が立っていた。俺はちょっと唖然として吉田の顔を見た。
 「どうした? ぼくの顔に何か付いているのか?」
 俺は慌てて首を横に振った。
 「腹、減っただろう? レストランに予約を入れてあるんだ。行こう」
 吉田は有無を言わせず俺の腕を取るとエレベータに向かって歩き始めた。
 「吉田さんですよね?」
 間違いかもしれないと思って俺は小声で尋ねてみた。
 「そうだよ。島本君にはいつも世話になっているよ」
 俺はホッとして彼にエスコートされた。

 ホテルのレストランで食事などしたことがない。俺は吉田のマナーを見ながらナイフとフォークを使った。うまい料理だった。
 食事がすんだらすぐに部屋に行くのかと思ったら、スカイラウンジに連れて行かれた。夜景を見ながらカクテルを2杯ほど飲んだ。
 「君は綺麗だ」
 そう言われて俺は嬉しくなった。
 「ありがとうございます。そんなこと言われたことがないので嬉しいです」
 「そうなのか?」
 「買い物に出かける以外には外に出ませんから」
 「そうか。・・・・そろそろ、部屋に行こうか?」
 「はい」
 久しぶりのアルコールのせいか、胸がどきどきし始めた。いや、このどきどきは、自ら進んで男に抱かれようとしている緊張のせいだ。

 部屋はいくらするんだろうかと心配になるほど豪華だった。感心していると後ろから抱きすくめられた。肩口にキスしてくる。耳たぶを噛まれた。ぞくぞくしてきた。俺の下腹あたりにあった吉田の左手が上へ上がってきて、膨らんだ俺の胸を揉んだ。右手が股間へ降りてくる。そこは狂おしいほどに勃起していた。
 コートが脱がされる。そして、ワンピースのファスナーがおろされていった。ワンピースが足元にすとんと落ちる。スリップの上から身体を撫でられる。スリップを通して撫でられるこの感触が俺は好きだ。男物の下着では絶対に得られない感触だ。
 抱き上げられる。軽々とベッドに運ばれた。俺はこんなに軽いのかと驚かされる。吉田はスーツの上着を取った。それから俺の上になって唇を合わせる。入ってくる舌を俺は吸った。キャビアの香りにタバコの匂いが混じり合っていた。
 スリップのストラップが外されて、ゆっくりと足元方向へ脱がされた。ブラの下の手が入ってくる。左の乳首をつままれた。
 「あん・・・・」
 「結構大きいんだな」
 掌で俺の乳房を弄びながら言った。
 「まだAカップです」
 「そうか? もっと大きいように感じるが」
 そう。吉田の観察眼は正しい。Aカップのブラはかなりきつくなっているし、Bカップのブラでは緩くてパッドが必要だ。
 「よく感じるようだな」
 「ああ、いい・・・・」
 ペニスの先から俺の愛液が漏れているのを感じる。ブラが両方ともずらされて吉田の舌が右の乳首をはい回った。俺は喘ぎ声を止められない。
 「はあ、ああん。ああ、ああん・・・・」
 吉田の右手が俺の下腹から股間へと降りてきた。
 「ずいぶん濡れてるな」
 「イヤ! 言わないで!」
 「ふふ。可愛い奴だ」
 言いながら吉田は俺の隆起を優しくなで回す。ますます愛液が溢れる。ショーツがおろされていく。俺の隆起を直接撫でられる。快感が俺の身体を突き抜けていく。
 「ああっ! ああん・・・・」
 吉田の舌が乳首からみぞおち、臍へと降りてくる。その行く先はわかっていた。
 「ああ、だめ。そんなこと・・・・」
 ザラリとした感触。
 (ああ、舐められている・・・・)
 女にフェラチオされたことは勿論ある。けれど、今の快感はその何倍もあった。それは俺が女として抱かれようとしているせいかもしれない。
 「だめ、行っちゃう、行っちゃう・・・・」
 吉田はそんな俺の声を無視して舐め、そして吸い続けた。
 「だめえ・・・・」
 俺の意志は通じなかった。もはや限界に達していた。俺は股間に痙攀を感じた。そのたびに吉田の歯がかすかにあたるのを感じていた。
 痙攀の終わった俺のペニスを吉田は丁寧に舐めている。それから膝を突いてベルトを外し始めた。
 (このまま寝ていたいけれど、そう言うわけにはいかない)
 俺は起きあがって、手伝ってやりズボンをおろしてやった。トランクスの前が隆々と盛り上がっていた。吉田はネクタイを外す。俺は吉田のトランクスをおろした。
 (大きい・・・・)
 俺のものは女性ホルモンのせいで少し縮んでしまっていたけれど、以前は人並み以上だと思っていた。その自慢の俺のものよりふた回りは大きかった。思わず俺はその大きなペニスにしゃぶりついていた。初めて実行するフェラチオに嫌悪感はまったくなかった。
 「すごい、こんなのすごすぎる・・・・」
 俺はペニスバンドしかしゃぶったことがない。ペニスバンドは冷たく、ある程度硬さもある。それと比べて、本物は温かく、固く勃起しているとは言っても弾力がある。それに舐めたり吸ったりしてやると反応がある。
 (大きすぎて顎が痛い)
 歯があたらないように口をいっぱいに開いて飲み込んでいるとホントに顎が外れそうだった。
 「そろそろ行こうか?」
 「はい」
 俺は吉田の動きに合わせて仰向けになった。両足を持ち上げられる。吉田の肩にかけると吉田はいきり立った大きなものを俺のアヌスにあてがった。生で入れようとしているみたいだけど、ホテルに来る前にきれいに洗ってきたから大丈夫だ。
 (あんなに大きなもの、入るんだろうか?)
 心配になった。けれど、吉田とは知らないで、過去に何度も挿入されているのだ。それに気づいて安心して力を抜いた。
 (俺は俺の意志で男を受け入れようとしている。それを不思議と思わないなんて、俺はホモになっちまったみたいだな)
 痛みはなかった。すぐに快感が湧いてきた。
 「ああん・・・・」
 奥へと突き抜かれる。ここまではペニスバンドと同じだった。違ったのはそれからだった。もっとも奥へ挿入されてから、吉田は動こうとしなかった。どうしたんだろうと思っていると、俺の中で吉田の分身がびくりと動くのを感じた。
 「どうだ?」
 「動いてる。動くのがわかる」
 「いいか?」
 「いい。ああ、どうして? どうしてそんなことができるの?」
 俺には信じられなかった。吉田は、ピストン運動をせずにペニスの先をぴくぴく動かしているのだ。
 「ああ、いい。いいわ」
 「香のペニスバンドじゃ、こうはできないだろう?」
 吉田はそこを強調したかったようだ。俺は俺のアヌスが俺の意志とは無関係に収縮を始めたことを自覚した。俺のペニスの先端から愛液が溢れ出てくる。
 「おおうっ! いい絞まり具合だ」
 吉田は腰を動かし始めた。長いからストロークが大きい。その上、時々完全に引き抜いてもう一度挿入してくる。抜ける瞬間がまた大きな快感を生み出す。
 「はあ、はあ、はあ、はあん。はっ、はっ、はっ、はああああ・・・・」
 吉田はなかなか行かしてくれない。行こうとすると、動きを止める。俺が少し覚めてきたのを見て取ると腰を動かし始める。頂点の一歩手前で俺は翻弄されていた。
 「そろそろ行くぞ」
 「行って! 行って!! 早く!!」
 動きが性急になってきた。今度は間違いなく吉田のすべてを俺に与えてくれそうだ。
 「うぐううう・・・・・」
 吉田の腰の動きが止まり、俺の奥深くで吉田のペニスが何度も跳ねた。と同時に俺も達してペニスからザーメンがどくどくと排出されていった。出るたびに俺のアヌスは吉田を締め付けている。
 (ああ、最高! 香もいいけど、吉田はもっといい・・・・)
 そう思いながら、俺はふっと意識を失った。

 目を覚ますとバスルームからシャワーの流れる音がしていた。吉田が汗を流しているようだ。
 ベッドから起きようとしたけれど、脱力感で身体が動かなかった。
 (ずいぶん長い時間責められたからなあ)
 俺はベッドに移動したときから、壁に掛けられている時計を時々見ていた。吉田は十数分間俺を愛撫した。お返しのフェラチオにはきっちり15分を掛けた。吉田が俺の中にいた時間は40分あまりだった。
 俺が女とセックスしたときは合体して5分程度、最高でも10分が限界だった。そう言う意味では吉田は尊敬に値すると思っていた。それに、俺を行かせる寸前で長くとどめるテクニックは大したものだと思った。俺にはあんなことはできない。自分が行くことで精一杯だからだ。要するに、吉田は自分だけが行くのではなく、相手を喜ばせる手管を知っていると言うことだ。言い換えれば大人だと言うことだろう。
 そんなことを考えていたら、また眠り込んでいた。
 「起きろ! 真知子!」
 目を開けるとスーツを着た吉田がベッドのそばに立っていた。
 「わたしは帰らなければならない。真知子はゆっくりして行きなさい。室料は支払っておく」
 吉田はまだぼんやりしている俺の頬に軽くキスした。
 「それから、これは楽しませてくれたお礼だ」
 財布から万札を取り出して俺に握らせた。
 「こんなにいりません」
 数えてはいないけれど、10枚はありそうだったのだ。
 「何故だ?」
 「わたし、女じゃないのよ。だから・・・・」
 「女だったら、こんなに出さない。君が男だから出すんだ」
 そんなものなのかと思った。
 「でも、やっぱりこんなにいりません」
 俺は札束の半分を吉田に押し返した。
 「妙なヤツだな。みんな喜んで受け取るのに」
 「これでも多いくらいです」
 「そうか。まあ、いいだろう」
 吉田は財布をスーツの内ポケットにしまった。部屋を出て行こうとして吉田は俺の方を振り返った。
 「代わりにと言っては何だが、来週も会ってくれるか?」
 そう言われるのを待っていた。
 「はい。喜んで」
 「では、来週の金曜日の午後7時にこのホテルのロビーで会おう」
 「わかりました」
 俺は笑顔で吉田を見送った。