俺は俺が行く瞬間の写真を見ている。すごくいい顔をしていると思った。最高の表情だ。性的快感を得たときの表情は素晴らしいと俺は思った。
「また、来てもいいですか?」
俺は躊躇いがちに尋ねた。
「いいわよ。でも、あなた、夜の仕事なんでしょう?」
「はい。だから、休みの日に来ます」
「次の休みはいつ?」
「毎週月曜日です」
「月曜日ね。待ってるわ」
笑顔に送り出されてアパートに帰った。
次の月曜日が待ち遠しかった。俺はそわそわして待った。
「小林君、元気が出たようだな」
店長に肩をポンと叩かれた。
「えっ? そうですか?」
「新しい彼女でもできたか?」
島本香が彼女といえるのだろうか? 男女が逆転した関係なのに。
「あ、まあ、そんなところです」
「そうか。それはよかった。いつもの小林君に戻ってよかった」
店長は俺のことを買ってくれている。店長のために元気でいなきゃと思った。
月曜日になった。待っているときはなかなか時間がたたないけれど、たってしまえばあっと言う間だった。
彼女の休みは水曜日だ。月曜日の昼間は仕事に出ている。仕事を終えて帰ってくるまで待つしかない。この時間がまた長かった。
午後6時になって、俺は近くの花屋に行ってバラの花束を買った。あれから俺は酒を飲みに行っていない。これまで宵越しの金は持たない主義だった俺の財布に余裕があった。
「彼女にプレゼントですか?」
花屋の店員がニコニコとして俺に尋ねる。
「はい、そうです」
俺は即座に答えた。
「こんな花束を貰ったら喜ばれますよ」
自分が花束を持ったような笑顔を入れに向けた。
「ホントに?」
「女は指輪の次に花束を貰うのが嬉しいものですよ」
「そうなんですか」
何となく花屋に寄ったが、正解だったと思った。
喜んで貰えると思って島本香に花束を差し出した。
「バラの花束? 少女趣味なのね」
彼女ににべもなく言われた。
(そうだった。彼女はレズのタチ役で、男と一緒なのだ)
「そこの花瓶にでも生けといて」
俺から花束を受け取ろうとせずにそう命じた。花屋で指導されたとおりに水切りして花瓶に生けておいた。
「さっさと着替えて、夕食の準備でもしてくれないかな? わたし、疲れてんの」
先週とは口調が違った。
「夕食ですか?」
「できないの?」
「カレーくらいなら」
「それでいいわ。作って」
先週は優しかったけれど、これが彼女の本性かもしれないと思いながら、女装に取りかかることにした。
ベッドの上に今日着る服が用意してあった。ブラジャーもショーツもライトグリーンのものだった。色もいいしデザインもいいと思った。早速裸になってショーツを穿き、人工乳房入りのブラジャーを身につけた。
(パンストは?)
「香さん、パンストはないんですか?」
「ソックスがあるでしょう?」
スカートの下になっていた。白とグリーンのボーダーののもので、Tシャツとお揃いになっていた。スカートもグリーン系で、全部がグリーン系で統一されていた。
まずTシャツを着た。7分袖だった。襟ぐりが広い。フレアスカートに足を通してホックを留めファスナーをあげた。ソックスを履くと次は化粧だ。俺はドレッサーのおいてあるベッドルームに行こうとした。
「化粧の前にカレーの下準備をしたら?」
アドバイスと言うより命令に近かったので、俺はキッチンへ移動した。服を着ている間に肉と野菜、カレールーが用意されていた。
「ジャガイモはないんですか?」
「ジャガイモを入れると甘ったるくなるから嫌いなの」
「わかりました」
タマネギ、ニンジンを刻み、肉を炒めて刻んだ野菜を放り込んで水を加えて鍋の蓋をした。
火力を調節していると、彼女が俺の背後に立って腰を抱いて首筋にキスした。ゾクッとした。ペニスが反応した。
「髪の毛、伸びたわね。伸ばしているの?」
彼女は俺の髪の毛を指ですくった。
「はい。ウイッグだとずれてしまうので」
「いいの?」
「何がですか?」
「お店で変な目で見られない?」
「ああ、それならかまいませんよ。ほかに伸ばしているやつがいるから」
「そう。それならいいわね。・・・・もう少し伸びたら、女の子らしくカットしてあげるわ」
「できるんですか?」
俺は振り返って彼女の顔を見た。
「化粧だけしかできないと思った?」
「あ、いえ」
「化粧は髪型を含めたコーディネートが必要なの。あまりうまくはないけど、それなりにはできるわよ」
うまくできないと言ったけれど、自信ありげだった。
「そうなんですか」
「それとも、美容院にでも行って女の子らしくカットしてくれって頼む?」
ちょっと意地悪そうな表情を見せた。そんな彼女の表情が俺は好きだ。
「とんでもないです。香さんに、お願いします」
「じゃあ、もう少し伸びてからにしましょう。そうね。来月あたりにどう?」
「はい」
「化粧してきなさい。やり方はわかるわね?」
「できると思います」
「わからなかったら聞いて。向こうで本を読んでいるから」
「わかりました」
彼女はリビングへ向かい、俺はベッドルームにあるドレッサーの前に座った。服装が少女ふうだったので、アイシャドウやチークは薄目にしてルージュもピンク系にした。ウイッグをかぶって軽くブラッシングして服装を確かめてから彼女のそばに行った。
「これでいいでしょうか?」
「へえ、一度教えただけなのにうまく化粧ができたわね」
彼女が俺に見せた初めての笑顔だった。
「そうですか?」
「大したものだわ」
褒められて嬉しくなった。
「そろそろルーを入れてもいいんじゃないの?」
「あ、そうですね」
俺はキッチンに駆け込んで鍋をかき回してみた。よく煮えていた。カレールーを放り込んで溶かして硬さを調節する。カレーのいい匂いが漂ってきた。
「あ、そうだ。ご飯はあるんですか?」
「冷凍庫に入っているわ。レンジでチンしてちょうだい」
「新しいのを炊きましょうよ」
「お腹が減ったわ。待ってられない」
カレーの匂いが空腹を増長させていた。けれど、それだけではないようだ。早くベッドに入りたがっているようだった。俺は冷凍庫から冷凍された飯を取り出してレンジでチンして皿に盛ってカレーをかけてテーブルの上に置いた。
「できましたよ」
「カレーだけなの?」
「えっ?」
「野菜サラダくらい作ったら?」
「あ、そうなんですか。すぐに作ります」
「もういいわ。待ってたら餓死しそう」
彼女はスプーンでカレーをすくって口に入れた。味を確かめるようにして口を動かしている。
「ふん、まあまあね」
そう言ってスプーンを動かした。
「よかった」
俺も彼女の向かいに座ってカレーを食べた。味見はしていたけれど、かなりいいできだと自己満足しながらカレーを口に運んだ。
彼女が食べ終わりそうになったので、俺はスプーンを置いて立ち上がった。
「コーヒーを入れましょうか?」
彼女は俺の顔を見上げる。
「気が利くわね。女はそうでなくちゃ。ノーシュガーでいいわ」
「はい」
彼女がスプーンを置くと同時にコーヒーカップを彼女に目の前に置いた。彼女は黙ってカップを手にとって飲み始めた。俺は残りのカレーを片づけた。
汚れ物を洗っていると、彼女がいつもより太いヒモを用意していた。勃起はしていないけれど、俺はかなり興奮していた。ショーツの前が濡れていた。
俺は後ろ手に縛られて、ベッドの足元からずり落ちるような格好で仰向けにされていた。広げられた両足の足首がベッドの頭側に固定されているから完全に落ちてしまうことはない。頭がわずかに床に付いている。ウイッグが取れそうで気になる。
まくり上げられたスカートからショーツが覗き、そのショーツを突き上げている俺のペニスの先端からは大量の粘液が排出されてシミを作っていた。
先ほどまでそんな俺の姿を写真に収めていた彼女が、俺の目の前で全裸になった。彼女の割れ目が俺の目の前に飛び込んでくる。
俺はそれが欲しいと思った。俺のいきり立ったものを彼女にぶち込むという意味じゃない。痛いほどに勃起したものなんかいらなかった。彼女の持っている濡れた割れ目が欲しかった。できるものなら俺の固くなった肉棒と彼女の割れ目を交換したかった。交換して、彼女にぶち込まれたかった。
そんな妄想を抱く自分がおかしいと思わなくなっていた。おかしいと思わないのはおかしい証拠だ。
妄想が中断して現実に戻る。彼女がペニスバンドを装着した。俺の目の前に膝をつく。俺は逆立ちをして彼女を見上げた格好になる。俺は彼女に命令されなくてもペニスバンドを口にくわえてしゃぶり始める。彼女は腰を動かして俺の喉の奥まで押し込んでくる。俺の穿いているショーツのシミが一段と広がっていった。
ひとしきりオーラルファックを楽しんでから、彼女はベッドの上に移動してペニスバンドを俺の中に突っ込んだ。
「あああっ!! いいっ!!」
ペニスバンドが俺の腹の中をかき回す。
(最高だ! 最高にいいよ!)
身体がぶるぶると震え、その震えが俺のペニスに集中する。
「うっ! うっ! うっ!!」
俺のペニスから飛び出てきた粘液が俺の顔にかかる。まるで彼女が俺に引っかけてくれたように感じながら俺はその粘液を舌で舐めた。
微睡んでいる間に、床に膝をつき、上半身をベッドの上に乗せられた格好にされた。腰に彼女の手がかかる。今度はバックから挿入された。バックからされるのは深く入るから好きだけど、彼女の顔が見えないのが不満だ。それでも激しく突かれて俺は二度目の絶頂を迎えた。
彼女が抜け出ると、俺はベッドの上からずり落ちて床の上に転がった。後ろ手に縛られたまま俺はしばらく床の上で眠り込んでいた。
「起きて!」
先週と同じように尻を蹴られて俺は目を覚ました。
「汚したものを片づけなさい!」
そう命令されて俺は気怠い身体にむち打って、ベッドのシーツを取り替え、床に飛び散ったザーメンをぞうきんで拭き取っていった。
その間に彼女はテレビのスイッチを入れてビデオカメラをセットしていた。
「それは?」
「ビデオ、撮ってたのよ。見たいでしょう?」
「ビデオを?」
「そうよ。あそこにセットしていたの」
彼女はベッドのルームの端を指さした。
(気がつかなかった・・・・)
ベッドが真横から撮影されていた。彼女に縛られる様子が克明に記録されている。女の子が女の子を縛っているとしか見えない。俺の女装は完璧だ。
彼女の手によってスカートがめくりあげられ、マッサージされて隆起してきた股間もカメラの位置が低いせいかあまり目立たない。
ペニスバンドを銜える俺の唇がいやらしい。ペニスバンドで突かれているときも彼女が俺の股間をカメラから腕で隠していた。バックでやられているときはシーツに隠れて見えなかった。レズのふたりがセックスしているようにしか見えなかった。
(まるで女の子になった気分だな)
そう思いながらテレビの画面に見入っていた。
「あなた、行くとき、いい顔をするわね」
「そうですか?」
俺は恥ずかしくて小さくなった。
「半開きになった唇がいやらしくていいわ」
「そうですかねえ・・・・」
「そうよ」
彼女がビデオを巻き戻してスローで再生する。
「ほら。すごくいい顔してるでしょう?」
「・・・・そうなんですか?」
彼女は俺の顔を見てフフと笑った。
「わかってるくせに。可愛いわよ」
彼女は俺の頬にキスしてバスルームへと消えていった。俺は画面に目を戻した。行ったときの顔ばかりに気を取られていたけれど、スローモーションで見るとザーメンが排出される様子がよくわかった。
痙攀するペニスの先端から真っ白な紡錐形の固まりが、放物線を描いて飛び出る様子がくっきりと写っていた。そのふたつほどが俺の顔に飛びかかっていた。
(舐め取る様子もいやらしいな)
舌の動きがまるでAVビデオを見ているようだと思った。
島本香がバスルームから出てきたのと交代に俺もバスルームに入って身体を綺麗に洗った。洗うとき、アヌスが先週よりさらに緩くなったような気がした。
浴室の外に着替えが用意されていた。淡いピンク色のすけすけのショーツと同じく淡いピンク色のベビードールだった。ブラジャーは用意されていなかったので、そのふたつを身に着けた。
「おいで」
彼女が手招きをする。彼女は、男物のパジャマを着ていた。俺は彼女の横に滑り込んで彼女の胸に抱かれた。少女のように身体を縮めて。
幸せな気分だった。