第6章 彼女の部屋に行っちまった

 島本香の部屋の前に着いたのは午後10時半だった。部屋の灯が点いているから留守ではないようだ。俺は躊躇いもなくチャイムを押した。
 返事がなかった。俺は後退って電力メーターを見た。勢いよく回っていた。もう一度チャイムを鳴らした。
 《どなた?》
 聞き覚えのある島本香の声がインターフォンから戻ってきた。
 「遅くにすみません。小林ですけど」
 《小林? 誰?》
 あれから2ヶ月以上がたつ。俺のことを忘れていても不思議はない。
 「顔を見ればわかります。ちょっとでいいですから開けて頂けますか?」
 インターフォンが切れた。スリッパの音が近づいてくる。彼女に断られたらどうしようかという不安が押し寄せてきた。
 (馬鹿にされてもいいから、もう一度やって欲しい・・・・)
 ドアが開いた。もちろんドアチェーンはつけたままだ。俺の顔を見て、ちょっと驚いた顔をした。それから冷たい表情に戻った。
 「あら? あなただったの。二度と来ないでって言わなかったかしら?」
 言い方も冷たい。俺の心が凍り付くくらい冷たかった。
 「それはわかっています」
 「じゃあ、どうしてここに来たの?」
 「ここじゃあ。中に入れてくれませんか?」
 迷っているようだったが、俺に顔をジッと見つめてからドアチェーンを外してくれた。俺はサッと中に滑り込んだ。
 「鍵を締めて」
 「あ、はい」
 俺は鍵を締めてドアチェーンを掛けた。
 「コーヒーでも飲む? インスタントだけど」
 コーヒーを入れてくれるなんて意外だった。
 「は、はい」
 島本香はカップにインスタントコーヒーをスプーンで入れてお湯を注いだ。
 「砂糖とミルクは?」
 「お願いします」
 彼女は何も入れなかったようだ。俺の前にミルクの入ったコーヒーが置かれた。
 「で、何の用?」
 俺の顔をまっすぐに見て彼女が尋ねた。冷たい突き放すような表情は変わらない。俺は下を向いたまま言いあぐねていた。自分の口からは言いにくかった。当然だ。
 「早く言いなさいよ!」
 「あのう、じつは・・・・」
 やはり言えなかった。俺の目が宙を舞った。
 「もしかして、また女装したいの? それとも虐められたいの?」
 彼女は意地悪そうな表情を浮かべた。俺は身体を硬くした。
 「両方共かな? それに、もう一度あ・ん・なこともやって欲しい?」
 たたみかけてくる彼女に、俺は小さく頷いた。
 「へえ、そう? そうなの」
 彼女の表情に笑みが浮かんだ。
 「それで、なに? 目覚めちゃったって言うわけ?」
 そうなのかもしれないけれど、俺には自分がよくわからなかった。わからなかったけれど、俺は頷いていた。
 「そう。今日はお姉さんがいなくて寂しかったんだ。やってあげるわ」
 そんな返事を貰って俺は嬉しくなって彼女を見上げて微笑んだ。
 「それじゃあ、まずバスルームに行って髭とむだ毛を剃ってきなさい。わたしに剃って欲しいって言うのなら剃ってあげるけど?」
 「あ、いえ、自分でやります」
 「洗面所にカミソリを置いてあるからね」
 「はい」
 俺はカミソリを手にして、バスルームに入って髭とわき毛、すね毛、陰毛を剃り落とした。身体をバスタオルで拭いていると、彼女がドアを開いた。
 「これを使ってお腹の中を空っぽにしておきなさい」
 彼女が差し出したのは、イチジク浣腸だった。俺はそれを見て固まっていた。
 「ペニスバンドでやって欲しいんでしょう? 綺麗にしておかないとね。この前は縛る前に浣腸すると、ペニスバンドを使うことがばれちゃうからやらなかったのよ」
 言い訳のように彼女がそう言ってドアを閉めた。俺は手渡されたイチジク浣腸をジッと見つめ、そしてトイレに入って浣腸して直腸を空っぽにした。
 ウオシュレットでアヌスを洗ってトイレを流し外に出ると彼女が待っていた。
 「これを着なさい」
 女物の下着にパンスト、ブラウス、ミニのタイトスカートだった。俺はうす紫色のショーツを手に取った。腰と足の部分にレースの入った可愛らしいものだ。ペニスが頭を持ち上げてきた。サッと足を通して引き上げた。ピッタリとしていい気持ちだ。
 (アア、この感触が堪らない・・・・)
 ブラジャーを取り上げた。
 (重いな)
 首を傾げながらよくよく見てみると、ブラジャーのカップの中に柔らかいものが入っていた。人工乳房のようだった。
 (彼女、こんなものを持ってるの?)
 不思議な気がした。背中でホックを留めてストラップを調節した。興奮が高まり、心臓の鼓動が耳に響いてくる。
 破らないようにパンストを履いてブラウスを着てからスカートを穿いた。鏡に映してみると、首から下は完璧だった。
 バスルームを出ると、彼女が俺に向かって手招きした。
 「お化粧、自分じゃできないわね?」
 「はい」
 「座って。今日は、わたしがしてあげるわ。もし、この先も女装したいのなら、手順をよく覚えるのよ」
 俺は頷いた。ヘアバンドで髪の毛をあげて化粧水をぺたぺたと叩くようにして塗られた。それから、髭を剃った後に肌色のものを塗り広げられた。そうすると髭剃り跡が魔法のように消えた。
 「コンシーラーって言うのよ」
 そう言いながら次にリキッドファンデーションを顔全体に塗り広げていった。さらにパウダーファンデーションを広げた。
 眉毛は前回細く剃られた後、周りにしょぼしょぼ生えてきた眉毛がおかしかったので、細いままにしていたから問題なかった。
 眉墨を少し足してから、アイシャドーを入れられ、チーク、ルージュを塗られた。最後にアイライン、マスカラで終了した。
 ウイッグを被せられると、俺は可愛らしい女の子に変身していた。
 「うん、うまくできたわ」
 鏡の向こうから俺の顔を見て自慢げに頷いた。
 「あなた、ホントに可愛いわね。女に生まれりゃよかったのに」
 恥ずかしくなって、俺は顔を赤くした。もっとも化粧でそれは彼女にはわからなかっただろうが。
 「ベッドに行って、縛ってあげるから」
 一度収まっていた胸が再び高鳴ってきた。
 「右手で左の肘を、左手で右の肘を持ちなさい」
 言われたとおりにすると、両手が紐でぐるぐる巻にされた。さらに上半身に紐が掛けられていく。
 「ベッドの上に仰向けになって、両足をあげなさい」
 太股から足首まで紐がぐるぐると巻かれた。俺は丸太のようにごろりとベッドの上に転がされた。
 穴の開いたボールの付いた猿轡を填めると、彼女はデジカメで俺を撮り始めた。
 「ふふ。あなた、興奮しているわね」
 そう言って、彼女は俺の勃起しているペニスをスカートの上から撫でた。快感が俺の身体を駆け抜けた。
 彼女は紐の間からスカートをめくりあげていった。俺はペニスの先に湿り気を感じ始めていた。
 「濡れてるわ」
 頭を上げて見てみると、ショーツの真ん中、ペニスの先端に当たる部分に丸いシミができていた。彼女は俺のペニスの根本から睾丸を撫で回す。
 「ぐうっ! ぐうっうっ!!」
 溜まりに溜まっていたせいで耐えきれなかった。あっと言う間にペニスが痙攀した。
 「あらあら。元気なこと」
 彼女が俺の顔を見て笑った。ペニスの先端だけをショーツの外に露出されて写真を撮られた。
 「ザーメンの付き具合が何とも卑猥ね」
 フラッシュが光った。ティッシュでザーメンが拭き取られた後、俺はうつ伏せにさせられた。スカートが捲り上げられ、ショーツが太股まで下げられた。
 「今日は優しくしてあげるからね」
 アヌスにクリームが塗られている。確かにその指の動きはこの前より丁寧だった。指が入ってきた。その動きも優しかった。指を出し入れされるたびに上っていくのを感じた。俺は身体を震わせた。
 「アヌスそのもので感じるようね。さあ、太いのをあげましょうね」
 ヒヤリとした感覚があった。アヌスに抵抗がある。恐らくディルドーを入れようとしているのだろう。先端らしきものが何度か入ろうとしては引いた。そうするうちにグリッと入ってきた。痛みで俺は腰をくの字に曲げた。
 「力抜いて。口を開きなさい」
 口を開くようにすると少しは楽になった。少しずつ出し入れが繰り返され、次第に奥へと押し込まれていった。
 突然腹の中を引っかき回されるような感覚が生じて、激しい快感が俺を襲ってきた。ディルドーのスイッチを入れたのだ。
 「うぐうぐぐ・・・・」
 身体を痙攀させている間、ずっとフラッシュが焚き続けられた。ザーメンがベッドの上を濡らしているのを自覚した。射精したことに気づかないほどのアヌスからの快感に俺は酔っていた。
 彼女はなかなかスイッチを切ってくれない。去らない快感に俺は気が狂いそうになっていた。
 仰向けにされた。猿轡を取られる。目の前に彼女の股間があった。彼女はいつの間にか全裸になっていた。
 「舐めなさい」
 言われるままに彼女の秘陰を舐めた。そこは蜜で溢れていた。彼女はサドだ。虐めて感じる女なのだ。彼女の蜜はあとからあとから沸いて出てきた。俺はそれを吸い続けた。俺の顔は彼女の蜜でべっとりと濡れた。
 「ペニスバンドでやって欲しい?」
 「はい。・・・・お願いします」
 彼女はニッコリと笑ってペニスバンドを装着した。そうしてから、俺の戒めを解いた。
 「舐めて」
 俺は彼女の前に跪いて、ペニスバンドを両手で持って本物のペニスのように舐め、できる限りのどの奥まで飲み込んだ。
 「上手よ。さあ、立って」
 彼女は俺にキスしながら、俺の着ていたブラウスを脱がせ、スカート、パンスト、ショーツを剥ぎ取っていった。
 「ベッドに行って!」
 俺は人工乳房入りのブラジャーだけを着けたままベッドの上に仰向けになった。
 「今日はバックでしましょう。向こう向きになってお尻をあげなさい」
 アヌスに指が差し入れられた。しばらく出し入れされた後、ペニスバンドが入ってきた。少し痛かったけれど、それよりも気持ちよかった。
 「どう?」
 「いい。いいです」
 「突くわよ」
 「はい。できるだけ強く突いて下さい」
 彼女は、抜けるくらい引き抜いてから根本まで押し込むようにしながら、俺を突いた。快感が押し寄せてきた。俺は彼女の装着したペニスバンドによって女のように喘ぎ行こうとしている。それも俺の意志で・・・・。
 快感が俺を突き抜けていく。俺の精神を壊す。声が出ている間は、まだ冷静だった。上り詰めようとしたとき、俺は声も出せなくなって動物のようなうめき声だけを上げていた。
 ある瞬間、俺は俺の置かれた状況もペニスバンドの存在もわからなくなって、頭の中が真っ白になった。
 気がついたとき、彼女は既に衣服を着て、ノートパソコンの画面に見入っていた。
 「見る?」
 俺の目が覚めたことに気づいた彼女が俺に手招きをした。
 「服は?」
 「そこに新しい服を出してあるでしょう?」
 ベッドの下の床の上に、新しい服が置かれてあった。もちろん女物の服だ。俺は、水色のショーツ、パンストを履いて、ショーツよりやや濃いめの水色のワンピースを着た。
 「口紅を塗り直しなさい」
 そう言われて俺はドレッサーに向かって口紅を塗り直した。彼女のそばに行くと、椅子を寄せて俺を座らせノートパソコンの画面を俺の方に向けた。
 「これは前回のあなたよ」
 紐で縛られ、ブラジャーが見えるようにして撮られて写真だった。
 「綺麗に撮れていますね」
 化粧が施されているからか、俺が写っているという感覚はなかった。スペースキーを押すと、次から次へと画面が変わっていった。ペニスバンドで貫かれている写真もうまく撮れていると他人事のように思っていた。
 「これは今日のあなた」
 それらの写真が映し出され始めると、急に恥ずかしくなった。この前と今日とでは化粧法が違うのだ。今日の画像は俺だという自覚が生じたために恥ずかしくなったのだ。
 「あなた、ホントに可愛いわ」
 彼女は俺を引き寄せて唇を合わせてきた。舌が差し入れられてくる。俺はそれを一生懸命吸った。彼女は男が女を愛撫するかのように俺を愛撫する。しばらくすると、俺の着ていたワンピースは捲り上げられて、ショーツもパンストも下げられていた。彼女の膝の上で俺はペニスをしごかれ女のように喘いでいた。
 フラッシュが光った。部屋の隅に三脚で固定されたカメラが俺たちを写したのだ。彼女が遠隔操作のスイッチを押したらしい。
 愛撫は続く。何度かフラッシュが光った。やがて、彼女は再びペニスバンドを装着して俺の中へと押し込んだ。椅子に座っている彼女の太股の上に俺は両足を広げてペニスバンドに貫かれた状態で座っていた。彼女の乳房が背中に触れた。
 真正面からフラッシュが光った。
 「顔を上げてカメラを見なさい」
 フラッシュが光った。彼女が俺のペニスをしごく。フラッシュが光る。
 「ああっ!!」
 耐えきれなくなって俺は射精した。フラッシュが連続して光り続けた。

 その夜、俺は一晩中彼女に責められた。ついにはザーメンが出なくなったけれど、それでも快感を覚えた。
 (アア、幸せ)
 俺は久しぶりの快感に酔った。