今日は、バレンタインデーだというのに、女の子は誰もチョコレートをくれない。義理チョコのひとつも・・・・。
ぼくが女の子に積極的でないせいもある。それは、こいつのせいだ。ぼくは、ベッドの上に、裸で寝ていた。ぼくは毎日のように、ヌードグラビアを見ながら、マスをかく。25にもなって、童貞なのは、恥ずかしい。それもこれも、みんなこいつのせいだ。
勃起したぼくのペニスは、何度計っても、10センチない。恥骨に物差しをぎゅっと押しつけて、やっと9.8センチだ。いや、いや、・・・・10センチだぞ。誰にも話せないこんなことに見栄を張っても仕方がないのに・・・・。萎えてしまうと、5センチもない。寒い冬の朝、小便しようとして、縮み上がった自分のペニスに、絶望的になったことは、数知れない。
ものの本には、勃起時に5センチもあれば、女とのセックスは可能で、5センチ以上あれば、治療の対象にならないと書いてあった。
しかし、男のペニスの平均値は、12センチとか、13センチとか書いてある。インターネットで調べてみると、14センチなんて数字がでかでかと載っていた。
ほんとなのかと思うが、銭湯に行ったときなど、前を隠さずにぶらぶらさせているやつの持ち物の大きさを見ると、それらしく思える。いや、大きいから隠さないのだ。やつは特別なのだと、いつも自分を慰めていた。
ヌードグラビアに、ペニス増大術や、ペニス延長術の宣伝が乗っていた。その電話番号にダイヤルし、相手が出たところで切ったことも何度もある。
もう少し、せめて11センチあれば、こんなに悩まなくてもいいのに・・・・。
不況で車が売れない。このままじゃあ、固定給しかもらえそうもない。しかし、転職もそうそうできそうにないご時世だし、馘首にならない限り、この自動車販売会社にしがみついていく他はない。
「里見さん、今晩、暇?」
そんな声に振り返ると、受付嬢の御木本忍だ。忍の頬のえくぼが可愛らしい。えくぼだけじゃない。忍は、県主催の美人コンテストで準優勝したことのある美人だ。その忍が、ぼくに声をかけてくれたのだ。
忍の方から、男に声をかけたところなど、ぼくは見たことがない。まさか、ぼくに気があろうはずはないとは思いながらも、ぼくは嬉しくなってしまった。
「別に用事はないけど、なんか用?」
「一緒にお酒でも飲みに行かない?」
「えっ!? ほんとに?」
「6時に、裏の通用口で待ってるわ」
ぼくは、わくわくしながら、6時を待った。待ちながら、同僚の佐々木が、佐藤由衣というもうひとりの受付嬢に、今日のぼくと同じように誘われた時の話しを思い出した。
佐々木は、約束の場所で、2時間待ったそうだ。足元にたばこの山が出来るほど待ったのに、とうとう来なかったので、諦めて帰ったそうだ。後日、佐藤由衣は、佐々木が何時間待つか、他の女子社員と賭をしていたと聞いた。忍はそんなことをする女じゃないとは思うが・・・・。
6時5分前に、裏の通用口に出ていくと、私服姿で忍が待っていた。ほんとに、ぼくと飲みに行ってくれるようだ。ミニスカートから覗いた白くて細い足がぼくをどきどきさせた。
「ごめん。待たせちゃって」
「わたしも今来たところ。どこ行く?」
「俺、あんまり飲みに行ったことがないんだ。いい場所、知らなくて・・・・」
変に気取るより、正直に話した方がいいと思った。
「坪八に行きましょうか? 安くて美味しいから」
「あんなところでいいの?」
「気兼ねしなくていいでしょう? ちょっと騒がしいけど」
「君が良ければ、俺はいいよ」
「じゃあ、行きましょう」
枝豆に焼き鳥、アサリのバタ焼きを頼んで、生ビールを頼んだ。忍は強い、強い。ぼくが、中ジョッキを1杯飲む間に、大ジョッキを2杯も飲んで、平気な顔をしていた。
「御木本君は、強いんだね」
御木本忍はにっこり笑って答えた。
「強いわよ。底なしね。いくら飲んでも酔わないの。お陰で、誰もわたしを飲みに誘ってくれないのよね」
忍のそんな言葉に、ぼくはちょっとがっくり来た。
「何だ。じゃあ、ぼくはスポンサーって訳だ」
「そうでもないのよ。わたしね。里見さんのことが好きなんだ」
忍は、さらりとそう言った。
「えっ!? ほんとに? 嘘でも、御木本君にそう言ってもらえると、嬉しいな。どんどん飲んで」
「マジよ」
忍の目を見ると、本気らしく見えた。ぼくは、ごくりとつばを飲み込んだが、自分のペニスのことを思い出した。だめだ。だめだ。忍は、ぼくの粗チンを見て、きっと笑うに違いない。そう思ったら、気分が、急に萎えてしまった。
「どうしたの? 楽しく飲みましょうよ」
「あ、ああ」
坪八で、ぼくは中ジョッキを2杯飲み、忍は大ジョッキを5杯も飲んだ。ぼくは酔ってしまったが、忍はほろ酔い加減にもなっていない様子だ。
「カクテルが美味しいスナックがあるから、行きましょう?」
「ああ、いいよ」
忍について、『柊』と言うスナックに行った。カラオケを歌いながら、水割りを3杯飲んだところで、ほとんどダウンした。ぼくの横で、忍はカクテルをがぶがぶ飲んでいた。忍の横顔を見ながら、いつの間にか、ぼくは眠り込んでいた。
気がついたら、ベッドの上に寝ていた。しかも、目の前に、バスタオルを体に巻いた忍が立っていた。
「ここは?」
「ラブホテル」
「ええっ!!」
驚いたのって、なかった。ぼくは、忍とラブホテルの中にいる!
「シャワー浴びてきて」
「み、御木本君。こんなこと、いけないよ」
「わたしのこと、嫌いなの?」
「嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、こんなことは・・・・」
「里見さんのことが好きなの。早くシャワーを浴びてきて、抱いて。お願い」
「だ、だめだよ」
ぼくは、慌てて逃げ出した。こんなチャンスはないのに。忍のような美人に誘われているのに・・・・。泣きたい気分だ。
玄関で、靴を履こうとして、ぼくは転んでしまって、気を失った。
目を覚ますと、病院らしいベッドに寝かされていた。割と美人の女医が、ぼくを覗き込んだ。
「目が覚めましたか?」
「こ、ここはどこですか?」
「国立医療センターよ」
ぼくは首を傾げた。
「国立医療センター? 聞いたことがない病院だね」
「そう? あなた、名前は?」
「名前ですか? 名前は、里見明ですけど・・・・」
「何年生まれかな?」
「生年月日ですか?」
「勿論、そうよ」
「昭和49年、昭和49年の7月12日です」
「昭和49年7月12日ね。昭和49年というと、1974年よね」
「・・・・そうだと思いますが・・・・」
「間違いないわね」
「49たす25は74だから、そうだと思います」
「ふーん」
女医は、妙な複雑な表情をして、ぼくを見た。
「自分の誕生日ですから、間違えるわけがありませんよ」
おかしなことを聞くなと思ったが、頭を打っているのかも知れない。だから、記憶とかを確認しているのに違いないと思った。
「じゃあ、年齢は?」
「25です。7月の誕生日で、26になります」
女医は、後ろにいる少し年増の女医と話しをしていた。そんな馬鹿なという言葉が聞こえてきた。何が、そんな馬鹿な、なのかなと思った。
「里見さん。今日は、何年の何月何日ですか?」
やっぱりぼくは頭を打ったみたいだ。まさか、何日も意識不明だったなんてことはないだろうな。そう思いながら、女医の質問に答えた。
「ぼくは、ラブホテルの中で気を失っていたんでしょう?」
「えっ!? ああ、まあ、・・・・そうです」
女医の反応は、少しおかしい。ぼくは、ラブホテルから、ここへ運ばれてきたのではないのか? もしかすると、ラブホテルで頭を打って気を失ったなどと知れるのが怖くて、忍が、ホテルの外にぼくを運び出したのかも知れない。言わなきゃ良かった。
「今日は、ぼくが気を失ってから、日にちが経っていなければ、平成12年2月15日のはずです。いや、午前0時を過ぎていたら、2月16日かな?」
「平成12年って、西暦2000年よね」
「勿論そうですよ。それがどうかしましたか?」
「信じられない・・・・」
何が信じられないんだ。そう思いながら、ベッドの周りを見回すと、数人の女医ばかりがぼくのベッドを取り囲んで、不思議なものを見るような目で、ぼくを見ていた。
「あのう。忍は? 御木本忍さんは、どこですか?」
女医たちは、顔を見合わせた。
「ぼくと一緒に、女性がいたはずなんですけど・・・・」
「そんな女性はいないわ」
忍は、ぼくと一緒にいたことを他人に知られないために、やっぱり逃げ出してしまったというのだろうか? ちょっと悲しくなった。
「少し検査をしたいんだけど、大丈夫ですか?」
「いいと思いますが・・・・」
「じゃあ、行きましょうか?」
長い廊下を歩いて、検査室に入った。そこで、裸にされて、妙なカプセルの中に入れられた。数分後、カプセルから救出された。何だ? このカプセルは?
「すみません。このカプセルは、何なんですか?」
「医療用のスキャナーよ。知らないの?」
髪の長い若い女が、馬鹿にしたような口調でそう言った。美人だが、生意気そうなその女の胸に、伊藤ルナと書いたネームプレートが下がっていた。よくよく見ると、お腹が少し大きい。妊娠しているようだ。
「聞いたことがないなあ。何をする機械なの?」
「あなたの全身を調べる機械よ。あなたは、完全な健康体ね」
「たった、あれだけの時間で、全部分かるんですか?」
「そうよ。最新の医療器械ですからね。家庭用より、遙かに高性能よ」
「家庭用って、そんなものがあるの?」
ぼくは、しがない自動車会社の営業マンだ。医療事情がどうなっているか、ほとんど知らない。だけど、カプセルの中にちょっと入っただけで体のことが全部分かる機械なんて、あるはずがない。そんなもの、SFの世界だけの話しだ。この女、ぼくを騙そうとしている。絶対そうだ。そう思った。
「・・・・あなたの時代には、なかったわね」
最初にぼくを診た女医が、ぼくの疑問に答えた。あなたの時代にはなかった!? どういう意味だ!? この女医までが、ぼくを騙そうとしているのか!?
それにしても、病院の中は、女ばかりだ。医者も患者も、みんな女だ。男は誰ひとりとして、見かけない。ぼくひとりだ。どうなっているんだ!!!
何かがおかしい。しかし、それが何であるのか分からない。
部屋に戻ると病院食が出た。こんな病院食は見たことがない。こんな食事が出るところを見ると、ものすごく高級な病院のようだ。請求書が怖い。いくら請求されるんだろうか? 食べるのを躊躇したが、食べても食べなくても請求書は来るはずだ。腹も減ったし、ぼくはその豪華な病院食を食べ始めた。
病院食を食べていると、最初にぼくに質問した女医が部屋に入ってきた。
「検査は全部すんだわ。あなたは、完璧ね」
「ありがとうございます。で、いつ帰れますか?」
「・・・・どこに帰るつもりなの?」
女医の、この反応に、ぼくは底知れぬ恐怖を感じた。
「どこにって、自分の家にですよ」
女医は、黙ったままぼくのベッドの周りを歩いていた。
「帰れないんですか?」
「恐らく、帰れないでしょうね」
その言葉に、背中に冷や汗が流れた。
「どういうことですか? 何か問題でも?」
「そう。問題があるのよ」
「なにが、何が問題なんですか?」
検査は完璧だと言った。それなのに、何が問題だと言うんだ!! 女医は、考え込んでいる。しばらくして、ぼくを見て言った。
「あなたの住んでいた家は、もうないでしょうね」
「ええっ!? そんなことはないでしょう?」
「絶対にないわ。あなた、平成12年2月15日に気を失ったって言ったでしょう?」
「はい。そう言いましたけど・・・・」
「今は、何年だと思う?」
今は、何年だと思うだって!? そんな質問をすると言うことは・・・・。ぼくの家が、この世にないと言っていたことを考えると・・・・、ええっ!? な、何年なんだ!!!! 今は・・・・。
「それって、今年が、平成12年じゃ・・・・ないってことですよね」
「そうよ。かなり時間がたっているわ」
かなり時間が経っている!? ぼくの家がこの世にないくらいの時間が?
「かなりって、どれくらい?」
「言ったら、卒倒するかも知れないわね」
聞いたら、卒倒するくらい時間がたっているのか!? どれくらいだ? 10年か? 20年か?
「何年なんですか? 今は?」
「西暦2500年2月15日よ」
「西暦2500年!!! う、嘘だ!」
「嘘なんて言ってないわ。嘘言っても、仕方がないでしょう?」
「嘘、嘘だ。冗談だ。ぼくを騙しているんだ」
「あなたを騙しても、何の得にもならないわ。今日は、西暦2500年2月15日。あなたは、未来にいるわ」
「証拠は?」
「そうねえ。じゃあ、テレビでも見て貰いましょう」
女医が、テレビと叫ぶと、ベッドの向かいにある壁に映像が浮かび上がった。こんな光景は、バックツーザフューチャーかトータルリコールで見た覚えがある。ぼくは信じられない面もちで、画面を見ていた。
女のキャスターが、今日の出来事をしゃべっていた。画面の端に、2500年2月15日との表示があった。
ぼくは、あまりのショックに気を失った。
目が覚めた。目の前にあの女医が立っていた。
「500年も・・・・、ずっと眠っていたわけじゃあ」
「そんなことは起こり得ないわ。起こり得るとすれば、タイムスリップね。あなたは、500年未来に来たって言うわけ」
「ほんとなんだね」
女医が大きく頷いた。
「外は見られるの?」
「いいわよ。窓から覗いてみたら?」
ぼくは、ベッドから起き出し、窓から外を見た。ぼくは、凄く高いビルにいた。向かいにあるビルの窓を数えてみたけれど、40階以上ありそうだ。そんなビルが、目の届く範囲に、いくつもあるのだ。ビルの間には、緑がたくさんあった。こんな光景は見たことがない。
「新聞は? 新聞はないの?」
「新聞なんてものは、もうこの世にはないわね。なくなって、数世紀にはなるわ。みんな、インターネットで配信されるからね」
インターネットで配信・・・・。西暦2000年にも始まっていたけど、新聞はまだあった。
「ほんとに、西暦2500年なんだね」
「信じてもらえた?」
「まだ、半信半疑だけど、信じざるを得ないようだね」
「そのうち、疑いがないことが分かるわ」
「分かったよ。・・・・もうこの世には、ぼくの知ってる人間はいないんだね」
「そう言うことね」
不意に涙がこぼれた。誰も知っている人間がいない。こんな孤独はない。
「わたしが、力になってあげるわ」
「すみません。男なのに泣いたりして」
「仕方がないわ。わたしがあなたの立場だったら、きっと泣くでしょうから」
「ぼくはどうしたら、どうしたらいいんですか?」
「もう少し検査したいことがあるから、協力してくれますか?」
動転しているぼくに、ドクターは優しく言った。
未来にタイムスリップしてしまったぼく。知っているものは誰もいない。悲しいけれど、泣いていたってどうなるものでもない。
「いいですよ。痛くないのなら」
「痛い検査なんてないわよ。安心して」
ぼくは、にっこり笑った。
「ところで、この病院は、女ばかりなんですね」
「女ばかりねえ。あなたには、そう見えるかも知れないけど・・・・」
「えっ!? どういうことですか?」
女医さんは、腕組みをして、ぼくの前に立っている。しばらくして、ぼそぼそと話し始めた。
「里見さん。あなた、わたしは女だと思っているでしょう?」
「そう見えますけど・・・・」
「・・・・わたしは、男なのよ。れっきとした」
「えっ!? ・・・・先生は、男なんですか?」
「そうよ」
女装趣味の人間は、医者や弁護士などに多いと言われていた。西暦2000年頃は、それをあからさまにするような人間はいなかったが、500年も経っているから、女装しても誰も何も言わない時代になっているのかもしれないなと思った。
それにしても、白衣の襟から覗いた胸は、かなり立派だ。男の胸じゃないようだ。髪の毛は綺麗にセットしてあるし、化粧もしている。と言うことは・・・・。
「先生は、ニューハーフってことですか?」
「ニューハーフねえ。・・・・あなたの時代の感覚では、ちょっと理解できないでしょうね」
「分かりません。どういうことですか?」
女医さん、いや、ドクターは、ここ数世紀の男女に起こった形態変化について、写真を交えながら、詳しく説明してくれた。
「と言うことは、ぼくの目から見たら、ニューハーフみたいな状態が、今の男の人の普通の形なんですね」
「そう言うことよ」
ドクターの話しは、にわかには信じられなかったが、ぼく以外に男に見える人間がいない以上、信じざるを得ないようだ。
「つまり、この病院で見かけた人たちは、全部が全部女じゃないってことですよね」
「まあ、半分は男性でしょうね」
「おかしいと思ったんですよ。男性の姿が見えないから」
「そうでしょうね」
女に見えた人たちの半分が男。・・・・参った。
「言葉も、女言葉なんですね」
「男言葉とか、女言葉という言い方は今はないけど、こんな話し方は、あなたにとっては女言葉でしょうね」
「どうして、そんな風になったんですか」
「今の世の中、男女差別をなくすという観点から、性別を他人に聞いたり、教えたりすることはタブーになってるの」
「へええ」
「姿形は勿論、衣服も髪型も男女で差がないのよ」
「あ、そう言えば、先生は、スカートですよね」
「あなたの目から見たら、変に見えるでしょう?」
「正直に言って、そうです。まあ、ぼくの目から見れば、先生は女に見えるから、スカートを穿いていても、別におかしくはないですけど・・・・」
「そうよね。だから、言葉遣いで男女が分かるといけないと言うことになって、昔の女言葉に統一されたの。男言葉は、平和な世界にそぐわないと言う理由でね」
「なるほど・・・・」
男言葉は、平和世界にそぐわないか、それもそうかもしれない。
「でも、若い子たちは、反発して、男言葉を使う子もいるわね」
「性別が分かるようなことはタブーなんでしょう?」
「男の子も、女の子も男言葉を使うから、区別は付かないみたいよ」
「あ、そうか」
「ところで、もう少し検査がした言っていったのは、生殖生物学を研究している桜木博士なの」
「生殖生物学ですか?」
「そう」
「何を研究してるんですか?」
「現在、妊娠出産が激減して、世界の人口が減少しているから、それを何とかくい止める研究をしているの」
「西暦2000年にも、そんな問題がありましたね」
「今は、その比じゃないの。このまま行くと、人類は滅んでしまうの」
「そうなんですか」
「あなたは、旧人類だから、何らかの役に立つんじゃないかという訳ね」
「ぼくは、旧人類ですか!」
「わたしたちから見れば、あなたは間違いなく旧人類よ」
旧人類!!! 何だかもの凄く、差別された感じの言葉だ。
「ぼくに、何の検査をするんですか?」
「それは、桜木先生が、説明してくれると思うわよ」
「分かりました。どんな役に立つか知らないけど、人類のために、貢献しましょう」
「じゃあ、すぐに博士に連絡するから」
「待ってます」
ぼくに、何の検査をするんだろう? ぼくが何の役に立つのだろうか? 女の体型になってしまった男を、元に戻したところで、妊娠出産は増えないと思うけど・・・・。
30分ほどして、白衣を着たショートカットの髪型の人物が部屋にやってきた。白衣の裾から、ズボンが覗いている。男性っぽく見えるけど、いったいどっちだろうか?
「里見明さんですね。わたし、桜木ミチです。よろしく」
「初めまして、里見です。桜木博士は、どっちなんですか?」
「どっちって?」
「男性なんですか? それとも女性なんですか?」
桜木博士は、ちょっと不愉快そうな顔をした。その顔を見て、性別を聞くのは、タブーって言ってたことを思い出した。
「すみません。聞いてはいけなかったんですね」
「いいわ。教えてあげる。わたしは女です」
凄く安心した。見かけと性別が一致すると言うことが、これほどの安心感を与えるとは思わなかった。
桜木博士は、ぼくのカルテらしいファイルを見ながら、話しを続けた。
「里見さんのデータは、完璧ね。まったく問題がない。手術歴もない。あるのは、歯に治療のあとが3本あるだけね」
「あのカプセルに入っただけで、みんな分かってしまうんですか?」
「隅から隅まで分かるわ」
ぼくのペニスが小さいことも分かっているのだろうか? ぼくは不安に駆られた。
「あなたは完璧な健康体だけど、凄いのは、ペニスの大きさね」
「ええっ!?」
「ペニスの大きさは、平常時4.9センチ。勃起時の予想値は、9.7センチ」
やっぱり分かっていた。勘弁してよ・・・・。