廃案になったけれど、あの法律のせいで、わたしとルイの間に高い壁ができてしまったような感じだ。
ルイはスカートを穿くことはそんなになかったけれど、わたしの家にスカートで遊びに来たときなど、ショーツが見えても、平気な顔をしていた。
だけど、今は違う。わたしの家に、スカート姿で来ることが滅多になくなった。例えスカートを穿いていても、丈の長いものだ。
わたしもそうだ。いつも短いスカートばかり穿いていたのに、ルイが家に来るときは、極力丈の長いものを穿いている。
それにしても、ルイが女だったなんて、未だに信じられない。うちに遊びに来たときは、いつもサバイバルゲームや、戦争ゲームばかりしていた。性格も、わたしより荒いくらいだ。ルイはほんとは男で、ルイがしていたあの銀の腕輪は、何かの間違いじゃないかと、今でも思っている。
6月、わたしもルイも揃って9年生になった。今は、9Bにいる。この分なら、一緒に卒業して、標準教育課程に進めそうだ。
わたしはモニターに映し出される物理の講義を一生懸命聞いていた。
「ヤヨイ、ヤヨイ!」
ママがリビングから叫んでいる。
「なに?」
「ルイちゃんから電話だよ」
「わたしのデスクに廻して」
「切り替えるわよ」
わたしのデスクのモニターにルイの顔が大写しになった。わたしはルイの顔にちょっとの間見とれていた。
「どうしたの? ヤヨイ」
「い、いえ。ルイ、お化粧変えたの?」
「うん。ちょっとだけね」
「可愛いよ」
そう言うと、ルイは頬を染めて下を向いた。ルイらしくないなとわたしは思う。
「どうしたの?」
「今から遊びに行ってもいい?」
「・・・・今日の学習ももうすぐ終わるから、いいわよ」
「ほんと! じゃあ、すぐに行くから」
電話が切れて、講義の画面に戻った。わたしは、落ち着かない気分だ。わたしはルイが好きだ。一生付き合っていける親友だと思っていた。
今は・・・・、今もルイが好きだけど、親友という感じじゃない。まだ、恋人でもないし・・・・。複雑な思いだ。
20分ほどして、玄関のチャイムが鳴った。
「ヤヨイ、ルイちゃんが来たわよ」
「上がって貰っていいわよ。部屋の片づけ、もうすんだから」
玄関で、ルイとママが一言二言話しをしていた。どうも、お土産にケーキを持ってきたみたいだ。
「ヤヨイ、面白いゲームが見つかったんだ」
そんな話しだけなら、電話ですむことだ。ゲームだって、通信でやれば、お互いの家にいてもやれるのだが、友達同士、一緒にいてするというのが友情を高めあう手段ではある。
「早速やって見ようよ」
そう言いながら、わたしの部屋に入ってきたルイの格好を見て、わたしはギョッとした。ルイは、珍しくスカートを穿いていた。そのスカートが、凄く短いのだ。わたしの胸は、どきどきし始めた。
「どうしたの?」
「い、いや。なんでもないわ」
「この服、似合わないかなあ?」
「とんでもない。よく似合ってるわ」
「そう。よかった」
ルイは、にっこり笑って絨毯の上に座った。男女区別法以前のような様子だ。わたしのそばに座ると、ゲームの説明をし始めた。
「ゲームデータベースの12の4569に登録されていたんだ。21世紀頃はやったものらしいんだけど、結構はまるよ。やってみる?」
「あ、ああ。そうね。何て言うゲーム?」
「あのね、ファイナルファンタジー13って言うんだ」
「13ってことは、1から12もあるってことよね」
「そう言うことだね。だけど、これが最終版みたいだから、一番完成されていると思うんだ。とにかくやってみようよ。ふたりで力を合わせて、悪者をやっつけるというゲームだから」
「いいわ」
それから2時間ばかり、ルイと並んでゲームをやった。ゲームに夢中になったルイが、立て膝をするものだから、白のショーツがぼくの目に飛び込んできた。ルイのクリトリスと思われる膨らみが、目に焼き付いてしまった。わたしのペニスは、ショーツの中で、窮屈そうに勃起している。
こんなこともあろうかと思って、わたしはサポートの強いショーツを穿いていた。楽な緩いショーツを穿いていると、今のように勃起したとき、それを他人に覚られてしまうからだ。このショーツを穿いているから、勃起したペニスを押さえつけてくれて、ルイには気付かれない。気付かれてはいないけど、狭いところで、自由を求めるペニスが痛い。
「ルイ、ちょっとごめん。トイレに行ってくるわ」
「いいよ。ポーズにしておくよ」
わたしは、トイレに入って、勃起したペニスの位置を楽なように動かした。これで、もう大丈夫だ。深呼吸すると、勃起していたペニスが萎えてきた。もう一度勃起しても、今度は痛くならないはずだ。
「お待たせ」
部屋に戻ると、ママがお茶を運んできていた。
「ヤヨイ、そろそろ止めにしないとね」
「そうだね。もう止めようか、ヤヨイ」
ルイが答えた。ルイは、ショーツが見えないように、きちんと座っていた。
「ええ、もう止めましょう。明日、またやりましょう」
「時間を決めてやるのよ。いいわね、ヤヨイ」
「分かってまあす」
ママが出ていった後、わたしをルイはお茶を飲みながら、ルイの持ってきたケーキを食べた。
「このケーキ、美味しいわね。どこで買ったの?」
「ルナが作ってきてくれたんだ」
「ルナさんって、ルイのいとこの?」
「そうだよ。今ね、料理学校に通っているから、いろいろ作っては、うちに持って来るんだ」
「ルナさんって、料理の才能があるのね」
「そうみたいだね」
ケーキを食べているルイの唇を見ていたら、わたしは、また勃起してしまった。今日のルイは、ここ数ヶ月のルイとは違う。言葉遣いは相変わらずだけど、態度がまったく違うのだ。わたしを挑発しているように見える。わたしの勘違いだろうか?
「ルナさんて、去年、ルイの家に遊びに行ったときに来ていた、とっても綺麗な人でしょう?」
「ああ、そうだよ」
わたしがルナさんに興味を持ったと思ったのか、ルイはちょっと不機嫌そうに答えた。
「こんなに料理が上手くて、あんなに綺麗だったら、お嫁さんにもらう人は幸せでしょうね」
「お嫁さんねえ」
わたしはルイの返事に首を傾げた。
「・・・・まさか、ルナさんて、男の人なの?」
「想像に任せるよ。ルナから、絶対他人には教えちゃいけないって言われてるから」
答えは分かった。へえ、男の人なんだ。信じられない。
「ぼくもルナくらいの年になったら、うんと綺麗になると思うけど」
「勿論そうなるわ」
「ほんとにそう思う?」
「ほんとにそう思うけど・・・・」
「思うけど、なに?」
「・・・・ま、いいわよ」
「なに、なに? 何だよ。奥歯の物が挟まったようなその言い方は?」
もう少しお淑やかになるといいなと言おうとしたけど・・・・。
「胸が小さいって言いたいんでしょう?」
「あと2年もしたら、もっと大きくなるわよ」
「じゃあ、もっと女らしくしろって言いたいんでしょう?」
「・・・・まあね」
「ママからもそう言われてるけど、それだけはだめ。例えヤヨイの要求でも、ぼくは今の生き方を変えないよ。強制されるのはイヤだからね。男らしくとか、女らしくとか、そんなにイヤなんだ。枠に填められるのは、ぼく、大嫌いなんだ」
口元をきゅっと結んでそう主張するルイは、とても可愛い。
「分かってるわよ。そんなルイが好きなんだから」
「分かってくれるのは、ヤヨイだけだ。ヤヨイ! 大好きだよ」
マジでそう言われて、わたしはどぎまぎした。
「さっきのゲームのことだけど」
わたしは話題を変えた。これ以上そんな話しをしていたら、どんなことになるか分からない。ルイは今にもわたしにキスしてきそうな勢いだから。わたしとしては、ルイとファーストキッスをしてみたい。だけど、まだ早い。いや、早くないのかなあ・・・・。
迷いながら、結局1時間ばかり他愛のない話しをして、ルイは帰っていった。帰ったあとにちょっと後悔した。
夕食がすんで、1時間ほど勉強したあと、わたしはシャワーを浴びて、両親に疲れたから、今日は早く寝ると言って、部屋に戻った。
ベッドの上に横になっていると、昼間のルイを思い出した。わたしは、もう大人の体になっているけど、まだ子どものようなルイ。女の方が、早く成熟するのに、ほとんど同い年のルイの成長はちょっと遅いようだ。
それにしても、あの短いスカートから覗いたルイの細い足は綺麗だったなと思い出した。その綺麗な足の付け根に見えた真っ白なショーツ。あの膨らみ。わたしは、また、勃起してしまった。
わたしは、ベッドを起き出して、そっとドアに鍵をかけた。鍵を架けなくたって、余程のことがない限り、両親がわたしの部屋を覗くことはない。どこの家でもそうだ。子どもにも人権があるからだ。
ベッドに戻って、ショーツを下げた。このショーツは、今日、ルイは穿いていたものと同じタイプのものだ。さっきシャワーを浴びたとき、わざわざこれを選んで穿いた。
データベースを見てみると、昔は、男と女の下着は、別々だった。女のクリトリスは、今のように大きくなかったから、股間にぴったりくっつくような下着だった。一方、男は、ペニスが今の倍以上あって、睾丸も大きかったから、それを被うために男の下着にはゆとりがあった。しかも、大抵の男の下着には、前に穴が開いていた。立ち小便するために、ペニスを引っぱり出す穴だ。
今の男は、ペニスが小さいから、立ち小便なんて、裸にならなければできない。服を着たまま立ち小便すると、服を濡らしてしまうのだ。だから、男も女も、座って小便する。
男のペニスの大きさと、女のクリトリスの大きさに差がないから、ショーツの形に男性用も女性用もない。柄やデザインも、個人の好みだ。だから、スカートを穿いていても、下から覗いただけでは、男か女か分からないのだ。
その昔、女のスカートの中を、下から覗いたり、カメラやビデオで撮ったという話しが、データベースの新聞記事に載っていた。そんなことをするのは、男が、自分と違う女の部分を見たいという欲求があるからだと思うけど、今は男も女もほとんど同じだから、そんなことをする人間はいない。
剥き出しになったわたしの股間をじっと見た。わたしの勃起したペニスは、もう、大人並だ。5センチもある。2,3年したら、もっと大きくなるかも知れない。イヤ、大人のペニスの平均値は、今のわたしと同じ5センチだ。これ以上大きくなることは期待しない方がいいかも知れない。
ルイの股間を思い出しながら、そっとペニスを触った。ペニスの付け根には、僅かな膨らみがある。ここに、触ってみなければ分からない、人差し指の頭くらいの固まりがふたつある。男である証拠の睾丸だ。
女には、この僅かな膨らみがなく、男とほとんど同じ大きさのクリトリスの下に、貝が蓋を開けたような陰唇が開いている。その中央におしっこの出る穴があって、その下に膣がある。データベースの猥褻画像で、それを見たことがある。
ルイのそこもそうなっているはずだ。あの、ショーツの膨らみの下は・・・・。わたしは、射精してしまった。
ティッシュで、片づけながら、その精液を見てみた。1ミリリットルあたり、約1000万の精子が、この中を泳いでいると本に書いてあった。昔は、6000万以上いたそうだ。それが、環境ホルモンのせいで、ここまで減ったと言われている。
これ以上減ると、女を妊娠させることが困難になってしまうらしい。子どもを作るためには、毎日セックスしない方がいいと、データベースに書いてあった。毎日すると、妊娠に必要な数の精子が確保できないからだという。そのために、妊娠を望む夫婦は、4,5日間禁欲し、ふたりで気持ちを高めた上でするといいのだそうだ。
ルイは、わたしの子どもを産むと言ってくれるだろうか? きっと、イエスと言ってくれると思うけど、ノーと言われるのが怖くて言い出せない。まだ、早い。わたしたちは、まだ13なのだから・・・・。
ルイは、わたしに毎日のように電話をかけてくるようになった。勉強の話し。ゲームの話し。データベースで、可愛いデザインの服を見つけたなどという話し。もろもろ。
電話で、お互いの姿を見ながら話しをするのに、ルイは、週に一、二度、わたしに会いに来た。しかも、服装がどんどん過激になっていった。やっぱり、わたしを挑発しているようだ。
「ヤヨイ、最近、随分大人しい服着てるんだね」
「そうかしら」
「そうだよ。ぼくみたいな服の方が、ヤヨイには似合うんじゃないのかい?」
「そうね。じゃあ、着替えてくるわ」
わたしは、ベッドルームに入り、着替えした。
「あれえ、ぼくのと色違いじゃないか!」
「ルイが同じ服を持っているなんて思わなかったわ」
わたしが着替えた服は、ルイが今日着てきた服と、まったく同じデザインだった。ミニ丈のキャミソールドレスだ。わたしの着ているものは、ワインレッドで、ルイの着ているものが、若草色と言うだけだった。ふたりの趣味が似ていると言うことなのだろうか?
それから、ふたりで、公園まで散歩に行った。道行く人たちが、振り返ってわたしたちを見ていた。気分が良かった。
ルイとキスした。同性だと思っていたとき、戯れのキスはしたことがあったけど、今日のキスは、異性としての本物のキスだった。わたしのファーストキッス。
「ヤヨイ、ずっと仲良しでいてくれる?」
「勿論よ。死ぬまで、ずっとね」
「ヤヨイ! それって、男と女としてっていう意味?」
「そうよ。ルイはイヤなの?」
「嬉しい!! ほんとだよ。ずっとぼくのそばにいてくれよ」
「約束するわ」
そのまま、わたしとルイは、互いの服を脱がせあって、ベッドの中に入った。わたしは、すぐさまルイのそこを見た。写真で見たものと、まったく同じものがそこにあった。ルイは、間違いなく女だ。
「ルイ、いいの?」
「大丈夫。ピル飲んでるから」
生理が始まった女は、みんなピルを飲んでいる。昔のピルは、いろいろと副作用があったけど、今は副作用が全くないものだ。だから、結婚して、妊娠を望むとき以外は、女は常にピルを飲んでいると言っても過言ではない。だから、昔のような生理用品などと言うものは、この世に存在しない。
互いに愛撫しあい、わたしとルイが、まさに結合しようとした瞬間、玄関のドアが開く音がした。
「ヤヨイ、ルイちゃんが来ているの?」
「大変だわ。ママが帰ってきた。ルイ! 早く服を着て!」
幸いなことに、わたしもルイも、その日は、ノーブラだった。ショーツを穿いて、キャミソールドレスを頭から被って、お互いに背中のファスナーをあげた。
そうしてから、急いでベッドルームを出て、3Dのグラスをかけた。部屋の画面には、いつものサバイバルゲームが映し出されている。もしやと思い、ベッドルームに入る前に、ゲームを起動しておいたのだ。間一髪、ママが部屋に入ってきた。
「ヤヨイ、ヤヨイ。聞こえないの?」
わたしたちは、ゲームに夢中で、ママの声が聞こえない振りをしていた。
「あ、ああ。ママ、お帰り。気がつかなかったわ」
「どれくらいやってるの?」
「1時間くらいかな?」
「もう止めなさい。お茶入れてあげますからね」
「ルイ、もう止めようね」
「そうだね」
ママがキッチンへ向かったあと、わたしたちは、舌を出して笑った。ばれなくて良かった。
今日、ファーストキッスだったのに、最後まで行ってしまうのは、やっぱり早いから、神様が止めに入ったんだわ。そう思うことにした。でも、残念だったわ。
ストロベリーケーキに紅茶のおやつがすんで、わたしたちは、仲良く列んで勉強した。学習の進み具合が同じだから、こんな時助かる。
「ヤヨイ、また来週、遊びに来るから」
「待ってるわ。勉強も一緒にしましょうね」
「うん、分かった」
帰っていくルイを玄関まで送って出ると、ママも出てきた。
「ルイちゃん、また来てね」
「はい。また来ます」
「ルイちゃんは、もうピルを飲んでいるんでしょう?」
その言葉にわたしはちょっと驚いてしまった。ルイも、ちょっと言葉に詰まった。
「は、はい」
「なら、大丈夫ね」
ママは、にやりと笑って、わたしとルイの顔を見た。
「ママ、ルイとは、変なことはしてないわよ」
「あら、してたんじゃなかったの?」
「し、してないよ」
「いいわよ。遠慮しないで。ルイちゃんのママも、ヤヨイとなら、ルイちゃんと付き合わせていいって、言ってたからね」
わたしとルイは、顔を見合わせた。
「ほんとに、いいの?」
「婚前交渉は、当たり前でしょう? 結婚してから、うまくいかなくて別れるよりはいいわ」
「そりゃ、そうだけど。わたしたち、まだ、13なのよ」
「パパもママも、13の時には、経験してたのよ」
「えっ!? そうなの?」
「あなた達は、お互いに好きあっているようだから言うのよ。そうでなかったら、こんなことは言わないわ」
「してもいいって言われて、はいそうですかって訳にはいかないけど、わたしたちの気持ちが一致したとき、やってみるわ。ルイ、それでいいでしょう?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、うんと愛情を深めあうのよ。いいわね」
「ありがとう、ママ」
「ありがとう、おばさん」
わたしもルイも、親が許してくれていると言うことが分かって、嬉しかった。ただ、わたしとルイが結ばれたのは、17になってからだった。