第4章 さらに猛特訓は続く

 シャワーを頭から浴びながら、5分前まで行われていたことを思い出して、ぼくは涙を流していた。
 (こんなの、夢だ。夢に違いない)
 そう思ったけれど、肛門の痛みが、それが事実であることをぼくに突きつけていた。長い間シャワーを浴びていた。シャワーのお湯が、すべてを洗い流してくれると感じるまで。

 「まだか?」
 露木が、バスルームの扉を叩いた。
 「そろそろ帰るぞ」
 ぼくは、のろのろとバスルームを出た。体を拭いていると、露木が、ぼくの脱いだ服をかごに入れて持ってきた。
 女装なんて、もうしたくはなかったけれど、目の前にあるセーラー服しか着るものがないのだから、着るしかないのだ。
 ショーツをはき、シリコンの人工乳房が入ったブラジャーを着け、スリップ、スカート、セーラー服、そしてルーズソックスを履いた。
 「そこにドライヤーがあるだろう?」
 スタッフのひとりが、棚を指差す。スタッフは帰り支度を始めていたけど、機材はそのままだ。この部屋は、こういう撮影専用の部屋らしい。
 隣の部屋に、ドレッサーが置いてあった。そこに案内されて、化粧し直した。ぼくは、AV女優から、女子高生に戻った。

 露木と釘宮に付き添われて、ベンツに戻った。
 「なかなかのできだと、監督が誉めていた。おまえには、ニューハーフとしての才能がある。きっと成功するだろうとな」
 (ニューハーフとして成功しても仕方がないのに・・・・)
 そう思ったけれど、ぼくは黙っていた。
 「今日の出演料は、20万だ」
 「20万!」
 「そうだ。だから、残りは140万だ」
 「えっ! 残りは130万じゃあ?」
 頭の悪そうな露木のことだから、計算間違いだと思った。
 「おまえがニューハーフとしてやっていくために、俺が教えたコーチ料、早苗の化粧の指導料、衣装代、飯代。かなり安くして10万にしてある。それで計算が合うだろう?」
 (そんな・・・・)
 なんと反論しても、言いくるめられるだけだろう。ぼくは、納得したと言う顔をせざるを得なかった。

 そのまま新宿へ向かうのかと思っていたら、ベンツは事務所へと戻っていった。
 (今日は、このまま休めそうだ)
 ホッとしたのもつかの間。事務所の3階に戻ると、露木の相手をさせられた。しかも、アナルファックまで。
 「ほんとは、俺がおまえの処女をいただきたかったんだが、事務所の方針で仕方がなかったんだ。あとは自由にしていいってことだから、やらせてもらうぞ」
 「これはコーチじゃないでしょう? ただじゃいやだ」
 ぼくは抵抗した。
 「借金から1万引いてやる」
 「たったの1万?」
 「5000円でもいいんだぞ。引いてやるだけ、ありがたいと思え」
 どうしようもなかった。露木のペニスは真珠入りだが、それほど大きいと言うことはない。あの男優の大きなものを受け入れたあとだったから、それほどの痛みはなかった。ただ、また出血した。

 「感じたか?」
 終わったあと、露木が尋ねる。ぼくは肩を竦めた。
 「少し開発してやらないと、まだやっていけないな」
 そんな露木の言葉を聞いて、ぞっとした。
 (男とセックスして感じるようになるの? 開発するって、感じるようにするってことだろうか?)

 露木が部屋を出て行って2時間ほどたった。ぼくは何をされるんだろうかと戦々恐々としていた。
 部屋に戻ってきた露木は、袋の中から箱を取り出した。箱を開けると、中からピンク色の蛇のようなものを取り出した。
 「いったい、それは何です?」
 「肛門用のバイブレーターだ」
 「肛門用のバイブレーター・・・・」
 「これで、おまえの女を開発してやる」
 「い、いやです」
 「いいか、明子。お客を喜ばせるには、おまえ自身が喜びを感じなきゃいかんのだ。マグロ状態のおまえを抱いても、お客は満足しない。分かったな」
 「いやです」
 「聞き分けのないやつだなあ。借金を早く返すにゃ、俺の言うことを聞いておいた方がいいぞ」
 借金だけじゃなかった。フェラをしている写真は、この部屋に戻ってきたとき、約束どおりぼくにくれたのだけれど、AV出演のフィルムと言う、ぼくを脅す新たな材料があるのだ。ぼくは仕方なく頷いた。
 「分かってくれたようだな。服を脱いでベッドの上に仰向けに寝ろ」
 言われるままに全裸になって、ベッドの上に寝た。
 「膝を立てて、足を開け」
 露木は、ぼくの肛門にぬるっとしたものを塗った。それから、冷たく固いものがあたる感触がした。
 「これは細いが、力を抜いていた方がいいぞ」
 露木の言うように、細いせいかそれほど痛くはなかった。露木は、少しずつ動かしているようだ。
 「うっ!」
 AV撮影のとき、男優がぼくの肛門に指を入れたときに感じた妙な感覚が沸いてきた。
 「ここだな」
 露木が呟いた。その瞬間、ウイウイと機械の動く音がし始めた。バイブレーターのスイッチを入れたのだ。
 妙な感覚が、どんどん大きくなっていった。
 「あ、うっ!」
 思わず、ぼくは腰を浮かせた。
 「いいだろう? ここは前立腺なんだ。ここを刺激して得られる快感は、女がペニスをくわえ込んで得られるものとほとんど同じだと言われているんだ」
 ペニスが勃起しているわけじゃないのに、ものすごい快感が生まれていた。
 「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 ぼくは腰を動かして、のた打ち回った。
 「先走り汁が出てきたぞ」
 そう言われて、ぼくの勃起していないペニスを見ると、先から透明な液体が出てきて、それが、次から次へと流れ出ていた。それとともに、射精する直前のような快感がずっと続いていた。
 (射精したい・・・・)
 自然と手がペニスに伸びた。しかし、露木がその手を払いのけた。
 「ペニスに頼っちゃ駄目だ。もう少し待て。そうすれば、これまで経験したことのない快感が得られるぞ」
 (露木もそれを経験したことがあるのだろうか?)
 押し寄せる快感の中で、そんなことを思っていた。露木の責めは続いた。ぼくは、女の様に喘ぎ、涎を流していた。
 「ううっ!!」
 快感が頂点へ達した。目の前が真っ白になった。勃起していないのに、ペニスから精液が発射される感覚があった。
 射精すれば、男は急速に覚めてくる。ぼくは童貞で、女とセックスしたことはないけれど、マスは掻いたことがある。射精したとたん覚めてしまって、マスを掻くことへの罪悪感から、惨めな思いをしていた。
 だけど、今日は快感が去らず、いつまでも続いていた。
 (バイブレーターがまだ動いているせいだ・・・・)
 ぼくが達したのは分かっているだろうに、露木はバイブレーターを止めようとはしなかった。
 「あ、うう・・・・。あああ・・・・」
 「ペニスを使って達するより格段にいいだろう? ・・・・おい! どうなんだ?」
 「ああ、いい。すごくいい」
 そんなことを言うつもりはなかったのに、口が勝手に動いていた。それは、ホントによかったからに他ならなかったからだ。
 「そうだろうな」
 露木はバイブレーターをまだ止めようとしない。ぼくは、快感の嵐の中で喘いでいた。
 「もう止めてください。気が狂いそう・・・・」
 「まだだ」
 露木は、ぼくが快感でのた打ち回るのを楽しんでいる様子だった。
 「お願いです。もう堪えられない」
 露木は返事をしない。バイブレーターはまだ動きつづけていた。どれくらいそうされていただろうか? ぼくはついにものも言えなくなって半分気を失ったような状態で、腰だけ動かしていた。
 「これ以上は無理だな」
 そんな露木の声が聞こえて、バイブレーターが引き抜かれた。引き抜かれたとたん、
 (また抜かないで。もっとして)
 そう言いたくなった。だけど、それは言葉にならなかった。

 ぼくはそのままベッドの中で眠っていたようだ。気がつくと、露木は部屋の中にはいなかった。
 腹の上に、ぼくの排出した精液がべっとりと付いていた。
 (ぼくの体から、こんなに出たんだろうか?)
 そんな疑問を抱くくらい大量に出ていた。
 (拭かなきゃ)
 ベッドの枕もとに置かれているティッシュを取って、その多量の粘液を拭い取った。それから、ドアのそばに行って、外にいる釘宮に声をかけた。
 「釘宮さん。シャワーを浴びたいんだけど」
 返事がなかった。ドアのノブを回すと、ドアが開いた。ドアの外には、釘宮はいなかった。
 (鍵もかかっていないし、見張りもいない。にげだせるんじゃあ・・・・)
 そう思ったけれど、それができないことは自明の理だった。あのAV出演のフィルムがある限り、逃げ出すわけにはいかないのだ。闇で流通するのならまだしも、大学や実家にばら撒かれたりしたら、ぼくは生きていけない。
 シャワールームで体を流した。精液だけじゃなく、体が汗でびっしょりだったからだ。

 翌日も、バイブレーターを持って露木がやってきた。
 「逃げ出せるのに、逃げ出さなかったんだな」
 ドアを振り返ってそう言う。
 「逃げ出せないようにしておいて・・・・」
 「まあな。さあ、もう一度、やるぞ。ベッドに行け」
 いやだったけれど、体はそうされることを欲していた。ぼくは、素直にベッドの上に横たわった。
 今回もあまりの快感に気を失ってしまった。
 「やっぱり、おまえは素質がある」
 目覚めたぼくに、露木がにやりと笑いながら言った。悔しかったけれど、それはどうも本当のように感じていた。
 「おい、明子。二日もしてないから溜まってんだ。抜いてくれ」
 露木がベルトを緩め始めた。
 (コーチじゃなかったら、金をくれ)
 そう言いたかったけれど、言う気力がなかった。それに、言ったとしても、バイブで行かせた見返りだといわれるに決まっていた。
 ぼくは、露木のペニスを銜えた。

 翌日は、男性週刊誌などで見かける普通のバイブレーターを手にして、露木がやってきた。
 「少し、太いものにも慣れておかないとな」
 馬の尻尾と呼ばれるものより太いから、挿入されるとき、痛みが走った。しかも、ぐいぐいと動かすから、余計に痛かった。
 「痛い! 痛いから止めて!!」
 「そうか? ちょっとジェリーが足らんかな?」
 次に入れられた時には、それほどの痛みはなかった。
 「やっぱり準備が足らんと、痛いようだな」
 感心したようにそう呟いた。

 三日ほどして、そのバイブに慣れた頃、もう少し太いものが持ち込まれた。初めは痛かったけれど、今度は翌日には痛みがなくなった。
 痛みがなくなると、快感だけが沸いてきた。女の腟に入れるバイブレーターを、ぼくは肛門に差し込まれて悶え喜んでいた。
 (ペニスをこすって射精するより、ずっと気持ちがいい)
 借金の返済のために、無理やりニューハーフに仕立て上げられたのに、2週間もたたないうちに、ぼくは完全なホモになっていた。
 露木が言うように、ぼくにはその素質があったのかもしれない。

 夕食がすんだあと、露木がやってきて、ソファーに腰掛けて言った。
 「明日から、店に出てもらう。今日で俺のコーチもお終いだ」
 「ありがとうございました」
 「礼を言ってくれるのか?」
 露木は意外そうな顔をした。
 「ちゃんとやれないと、借金を返せませんから」
 これは本音だった。逃げ出せないようにがんじがらめになっている今、抜け出すためにはどんなことでも全力で取り組まなければならないのだ。
 「そうか。そうだな」
 感慨深げにタバコの煙を吐き出した。
 「じゃあ、卒業試験といくかな?」
 「はい」
 ぼくは立ち上がる。
 「どうします? セーラー服にしましょうか?」
 ぼくはあのAV出演の後は、再び裸で過ごしていた。今も全裸だった。
 「そうだな。そうしてもらおうか」
 「ちょっと待ってください。すぐに着ますから」
 袋に詰めていた下着とセーラー服を取り出して、ぼくは着込んだ。それから、鏡に向かって、簡単に化粧し直した。
 「お待たせ」
 「さあ、来い」
 露木はいつになく興奮している。それは、露木の股間が盛り上がっているので分かった。
 ぼくは露木の膝の上に乗り、腕を首に回してキスし始めた。
 「露木さん、好きよ」
 これはサービスのつもりだ。露木は顔を赤らめている。こんなことをしておきながら、結構純情なんだなと思った。
 押し倒されて、ベッドの上でキスを続けた。露木がぼくの体を愛撫し始める。何故かぼくも興奮していた。ショーツが濡れてくるのを自覚していた。
 長い長い愛撫の後、ぼくも露木も全裸になった。ぼくは、露木の真珠入りペニスに舌を這わせ、口の中にくわえ込んだ。
 いつものように、口で受け止めようと、ペニスを刺激し始めると、露木が腰を引いて、再びぼくにキスした。
 「下の仕上がりを見たいんだ。いいな」
 ぼくは頷く。
 「バックでいこうか?」
 露木に背を向けて、ぼくは腰を上げた。露木が来る前に、浣腸をしておいたから、綺麗なはずだ。
 AV撮影のときのように、舌で肛門を舐められなかったけれど、露木は指の腹でぼくの肛門を撫で、ゆっくり出し入れしながら奥へと進めてきた。
 指が前立腺に届いた。
 (ああ、いい気持ち)
 しばらく前立腺を撫でたあと、ペニスがあてがわれた。
 (早く来て)
 入ってきた。痛みはまったくなかった。
 (バイブと違って、熱いんだ)
 体の奥から、暖められているような感覚がした。
 「どうだ?」
 「いい気持ち」
 正直にそう答えた。
 「そうか。動かすぞ」
 (どんどん突いて!)
 露木の動きに合わせて、ぼくは腰を振った。ほんとに気持ちがよかった。ぼくのペニスの先から、ゆっくりと粘液が落ちていくのを見ていた。
 「上になれ」
 引き起こされて、背面騎上位になった。露木は、あのAVと同じ体位をやろうとしているようだ。
 下から突き上げられて、ぼくは露木の上で跳ねた。
 「明子。こちらを向け」
 (やっぱり、同じ体位をやろうとしている)
 足を回して、露木の方を向いて露木を見た。
 「おまえはほんとにこうなるのが相応しかったようだな」
 「そうみたいね」
 「さあ、正常位でフィニッシュだ」
 後ろに倒れると、露木が上になった。ぼくはあの時と同じように、足を広げて膝を抱えた。
 露木は、抜け出てしまうんじゃないかと思うくらい引き抜いて、口から出てくるんじゃないかと思われるくらい奥まで押し込んでくる。
 AV撮影のときは、痛いばかりだったのに、今日は快感だけが沸き上がってきて、ぼくは声をあげた。
 「ああ。ああっ、あ・・・・。ああ、いい。つ・ゆ・き・・さん、いい。すごくいい」
 腹の上に、ぼくのペニスの先から排出された粘液が、べっとりと付き始めた。
 「い・く・ぞ!」
 「ああっ!!」
 露木がぼく中へ射精したはずなのに、その後、何が起こったのか、まったく分からなくなった。気がついたら、ぼくは再び露木の舌を吸っていた。