ミゲルは、自分が水本のように男にフェラチオを強要されたら自殺するだろうと思っていた。それほどの屈辱を水本に与えていると思っていた。
ところが、水本にフェラチオを強要してから一ヶ月もたつと、水本はフェラチオを喜んでやっているような様子なのだ。
(くそ! これではフェラチオをさせている意味がない!)
ミゲルは、水本にさらなる屈辱を与えるために次の手段に出た。誰もが考える手段だ。
そうとは知らない水本は、ミゲルの部屋に連れてこられると、いつものようにミゲルのズボンをおろしてやってペニスを取り出してフェラチオを始めた。
(いつもより興奮しているみたいだ。何かいいことでもあったのかな?)
水本は舌を使い、決して小さくはないミゲルのペニスを根元まで飲み込み、強く弱く吸った。
「Stop! Stop, Aki!!」
水本は、その頃彰裕と言う名前から『Aki』と呼ばれていた。
「Why?」
「I wanna fuck your butt.」
(俺の『butt』にファックしたい? 『butt』って何だ?)
言葉だけを理解しようとした水本は、ミゲルが一体何を望んでいるのかわからなかった。ところが、『fuck』と言う動詞の意味を考えて、ハッと思い当たった。
『fuck』は男を主語とする動詞だ。女が主語の時は、『be fucked』となる。通常、『fuck』の対象は女の『vagina』だ。しかし、『fuck』の対象として、『mouth』や『anus』も存在する。
『butt』の意味するところはわからないが、『mouth』でないことは確かだ。たった今やっていたからだ。
『mouth』以外で、ミゲルが水本に『fuck』できるところと言えば・・・・。
「No! No, I don't」
逃げだそうとしたが、ミゲルに髪の毛をむんずと掴まれた。
「イヤだ!! だれがそんなこと、するもんか!!」
「Shut up!」
頬を思いきり撲たれて、水本は床の上に倒れ込む。ミゲルはもうひとりの男を呼び寄せて、水本の背中を押さえさせた。
水本はあらん力を振り絞って抵抗した。あまりの抵抗に、無理にでも水本を犯そうとしたミゲルもいったん水本から手を離した。
諦めてくれるのかと思って少し安心した水本だったが、ミゲルが手にしたものを見て再び抵抗を始めた。ミゲルが、注射器を手にしていたのだ。それは、ミゲルたちが現金を手に入れるために密売している麻薬に違いなかった。
「止めろ! 止めてくれ!!」
願いも虚しく、水本は押さえつけられて尻に注射されてしまった。しばらく手足をばたばたさせていた水本だったが、クスリが効いてきておとなしくなっていった。
朦朧となった水本をベッドに運ぶと、手錠も足錠も外して水本が着ていたものを剥ぎ取った。ミゲルは水本のアヌスに人差し指を使ってたっぷりと椰子油を塗り込んでいった。水本は気持ち悪いのか気持ちいいのか、小さなうめき声を上げる。指を二本差し込んで、充分に広がったことを確かめると、ミゲルは少し半立ちになってしまったペニスをしごいて勃起させ、水本のアヌスに沈めた。
水本には、ミゲルにアヌスを犯されているという意識はあった。しかし、打たれた麻薬のせいで、挿入時の痛みを感じることさえなかった。だから、まるで他人事のように思っていた。
ところが、しだいに何とも言えない快感が湧いてきて、水本は思わず小さく喘ぎ声をあげ始めた。水本にとっては初めての経験だったが、麻薬のせいでアナルファックされて感じ始めていたのだった。
水本が声をあげるたびに、ミゲルは締め付けられるのを感じていた。
(アナルファックなど、初めてやったが、結構いいじゃないか)
ミゲルは、南米人の例に漏れず浮気者で、マリアという妻がいても別の女とベッドを共にすることがあった。しかし、マリアが死んでからは、女には手を出すのを止めていた。マリアが死んだのは、自分が浮気者だったせいだと思いこんでいたのだ。
水本は女ではないし、屈辱を与えるためと言う大義名分の元、アナルファックに及んだわけだが、ミゲルはその快感に酔い始めていた。
うつ伏せにされている水本の髪は、長い監禁生活で長く伸びていて、バックから挑んでいるミゲルは、まるで女とやっているような錯覚を覚え、ことに及んだときには、半立ちだったペニスが、水本のアヌスによって締め付けられるたびに硬度を増していった。
ミゲルは激しく突き続けた。初めは小さく泣くようだった水本の喘ぎ声は、次第に大きくなっていった。涎を流し喘ぎ続けた。
水本は高校時代にマスを掻くことを覚え、週に一、二度マスを掻いていた。その快感とはまったく異質の快感に完全に翻弄されていた。マスターベーションによる快感は、あっと言う間に過ぎ去っていくのに、体中を駆けめぐる持続する快感はそれまで経験したことのないものだった。ミゲルという男に犯されていることなどどうでもよくなっていた。いつまでもその快感が続いて欲しいと思っていた。
しかし、その願いは虚しかった。ミゲルの方が耐えきれなくなって限界に達したのだ。
「オウッ!!」
注ぎ込まれてきたとき、水本はそれまで以上の快感を覚え、身体を硬直させた。
「あああっ・・・・」
水本のアヌスが痙攀を繰り返した。ミゲルは、すべてが搾り取られるような気がしていた。
「ふうう・・・・」
引き抜こうとすると、まだだとばかりに締め付けられる。
(こんなのは初めてだ)
素晴らしいと感激しながらも、ミゲルはそばにいる同士の目が気になった。水本を辱める目的でアナルファックをやったのに、喜んだ顔を見せるわけにはいかなかった。
ざまあ見ろと言うような表情をして、ベッドから抜け出して服を着た。
「Carry him back! in the cell.」
全裸の水本を兵士たちが地下室に運び出していくと、ミゲルは椅子に座ってひととき余韻を楽しんでいた。
地下室の戻された水本は、かなり長い間眠っていた。それは、麻薬の効果にセックス後の虚脱感が加わったためだった。
目が覚めて、水本はミゲルにされた仕打ちを思い出して悔し涙を流した。
(あんなの嘘だ。現実じゃない)
そう思おうとしたけれど、アヌスの痛みが現実に起こったことを示していた。痛みだけではなく、何とも表現できない不快感が残っていた。手をやってみると、ベッタリとした油のようなものが付いてきた。それはミゲルが滑りをよくするために塗った椰子油だったのだが、水本にはそれはわからなかった。ただ、血液が混じっていたから、アヌスに傷が付いていることは間違いないことが理解できた。
『処女を失った』という妙な思いが突然沸いてきたが、慌ててその思いを振り払った。
「寒い」
水本は肩を抱いた。熱帯だから、気温が低いわけではない。しかし、自分が全裸だと言うことに気づいてそんなふうに感じたのだ。
水本は足元に放り出されてあった服をノロノロと着た。悔しさで、涙があとからあとから沸いてきた。
こんな仕打ちをされても、自殺しきれない自分を恨んだ。
(でも、いつかはこうなることが予想できていたんだ。遅かったくらいだ)
ミゲルにフェラチオを強要されたとき、すぐにでもアナルファックをされるだろうと思っていた。しかし、一週間たち、二週間たっても要求されることがなかった。一ヶ月もたったから、アナルファックを要求されることはないのだろうと、安心した矢先の出来事だったのだ。
(けど、いつまでこんなことが続くんだろう?)
心に浮かんでくるものは絶望という文字だけだった。
二日後、水本はミゲルの部屋に連れて行かれ、麻薬を打たれた上で再びアナルファックされた。
その日も、快感のあまり気を失った。目が覚めて、男なのに男によって絶頂を与えられて喜ぶ自分に嫌悪感を覚えた。けれど、そんな自己嫌悪を覚えていたのは最初の頃だけで、10日もすると、水本はミゲルの呼び出されるのが待ち遠しくなった。
一方ミゲルも水本とのセックスに溺れていった。ミゲルは、水本に屈辱感を与えるという目的を失い、自らの性的欲望を満たすために水本を抱くようになっていった。
ミゲルは同士がいつもいることが気になるようになった。何とか水本とふたりきりになって、思い通りのセックスをしたいと望んだ。ミゲルは、支配下にある少し大きな都市に移動することにした。
移動することになった日、そのことを知らされていなかった水本は、突然地下室の部屋に入ってきた兵士に取り囲まれパニックに陥った。とうとう殺されてしまうのだと誤解したのだ。
「ミゲル! ミゲル!! 助けて!」
暴れる水本を兵士が殴りつけて気絶させ、麻袋に詰めてトラックに積み込んだ。