第2章 夢また夢

 ぼくは何かを食べていた。テーブルの上を見ると、プラスチックのトレーにハンバーグ、サラダ、飯が乗っていた。
 「4組の○○○は、可愛いよな」
 そんな声に、テーブルの向かい側を見ると、高校の同級生だった男が座って、パンを噛りながら牛乳を飲んでいた。
 ぼくは、また夢を見ている。高校時代の夢だ。ぼくは学食で昼食のランチを食べているのだ。それも、滅多に食べたことのないAランチを食べている。相手の男の名前は、○○○だったと思う。ぼくの悪友だ。牛乳瓶の底のような眼鏡。団子鼻にニキビ面。巨人の星に出てきた左門のような男だ。だから、渾名は当然のごとく左門だった。いつも女の話ばかりしていた。あの娘が可愛い。あいつは性格が悪い。誰々と付き合っている。等々。
 彼は、CIAの日本支部、副支部長を気取っていた。それくらい女に関する情報が早かった。どの女がフリーで、どの女が付き合っている男がいるか、この男に聞けば分かった。だから、同級生たちは、この男から情報を仕入れ、フリーだと知ると、女にアタックするのだった。勿論、フリーでなくても、相手の男より自分の方がいい男だと自信があれば、アタックするといった寸法だ。
 今日の夢は楽しそうだ。夢を楽しむため、ぼくは夢の中の左門に話しを合わせることにした。
 「相手はいないのか?」
 「つい先週まで付き合っていたやつがいたんだけど、別れたってことだ」
 「どっちが振った?」
 「男の方らしい」
 「4組の○○○って言えば、おまえから聞かなくても可愛いと思うけど、なんでまた、振られたんだろう?」
 4組の○○○のことは、ぼくも好きなタイプだった。相手がいると聞いて、仕方なく遠くから眺めていた娘だ。
 「おまえ、知らないのか? あそこが太平洋らしいってこと」
 「えっ!?」
 「やりすぎて締まりがないってことさ」
 声を落として、彼はそう言った。
 「やり過ぎって、セックスをか?」
 「他に何がある?」
 「虫も殺さないような顔をしているのに?」
 「処女に見えたか?」
 「うーん」
 これは夢の中だけの話しではない。実際に彼から聞いた話しで、その時のことを思い出して夢に見ているのだ。どうして今頃こんな夢を見るんだろうか? 昼間、高校の同級生から、同窓会の誘いがあったせいかもしれない。
 「おまえ、あいつが好きなんだろう?」
 「あ、ああ」
 「やらしてもらったらどうだ?」
 「ば、馬鹿言うなよ」
 「誰とでもやらしてくれるそうだぞ。俺が仲介してやろうか?」
 「いいよ」
 「気が向いたら、俺に言ってくれ。あいつがフリーの間だったら、声かけてやるからな」
 「分かった」
 あの時、あいつに頼めば良かったという後悔が、今でもぼくの心の奥底に沈んでいるようだ。だから、こんな夢を見るんだ。
 4組の○○○。あれ? 顔を思い出せない。可愛い子だったのに・・・・。

 目が醒めて、卒業アルバムを開いてみた。4組を探して、○○○の顔を確かめる。今見ると、そんなに可愛いってことはない。好みが変わったってことだろうか?

 会社に出ると、社長から呼ばれた。
 「うちのが、また見合いの話しを持ってきてるんだが、どうする?」
 「しばらく勘弁してくださいって、言ってくれませんか?」
 「そうか。今度のは、かなり美人だと思うが・・・・」
 「社長の美人は、あてになりませんからね」
 社長にかかれば、大抵の女が美人になる。先だっての芦屋雁之助似の女だって、初めはまあまあと表していたんだから。
 「いや、今度のは美人だぞ」
 社長は少し口を尖らせてそう言った。
 「いいです。またにしときます」
 「写真だけでも見てくれないか? うちのに怒られるからさ」
 うんと言うまで離してくれそうもないので、渋々返事をした。
 「分かりました。でも、写真を見るだけですよ」
 「助かるよ。明日、持って来る」
 デスクの戻りかけて、ちょっと聞いてみた。
 「この前の彼女は、誰かに押しつけたんですか?」
 「この前の彼女って? ・・・・ああ、あのちょっとひどかった娘ね。あれは済まなかった」
 「で?」
 「今度の日曜日結婚式だよ。仲人を頼まれている」
 「ええっ!?」
 社長の返事には心底驚いた。
 「君とお見合いすると聞いた同僚が、結婚を申し込んできたんだそうだ」
 「へええ」
 「蓼食う虫も好きずきってことだよ」
 「そうですか・・・・」
 世の中には、奇特な男もいたものだと思った。まあ、美人は三日したら飽きるが、ブスは三日したら慣れると言う。彼女の収入がいいから、少し我慢すればいいってことだろう。しかし、ぼくとしては、どうせ結婚するなら、少しでも美人の方がいいなと思う。あんな女だったら、やってる最中に顔が目に入ったら萎えてしまいそうだ。

 自転車をこいでいる。道は上り坂で、サドルから尻を離して、懸命にこぐ。ぼくは学生服姿。今日も高校時代の夢を見ている。
 家から、高校まで約4キロ。その道を3年間自転車で通った。ぼくの家は、海岸線に近い市営住宅で、高校は、扇状地の中腹にあった。行きは上りで大変だが、帰りはハンドルを切るだけで家まで帰り着いた。
 今夢の中で、ぼくはその上り坂を一生懸命登っている。
 ぼくが通う高校の近くに女子校があって、途中まではその女子校に通う女子高生の後ろ姿を眺めながら自転車をこいだものだ。
 丸まると太っていなければ、後ろ姿の女子高生は、みんな美人のような気がする。恥ずかしくって、振り返って女の子の顔を見ることはあんまりなかったけれど、時々振り向いて、ガッカリしたことは一度や二度ではない。
 一度だけ、違う道を通って自転車を走らせていたとき、凄く可愛い女子校の生徒に出会った。ぼくの女性の好みを変えた女の子だ。
 それからしばらくの間、ぼくはその道を通うようになったのだけれど、二度とその女の子に会うことはなかった。
 名前も住所も知らない女子高生。ぼくの初恋の人だ。今、ぼくはその人に会いたいとは思わない。会ったら、ぼくの心の中で育ててきた、その女性像が崩れてしまうような気がするからだ。
 今日の夢の中では、ぼくは、普段通っていた道を走っていた。女子高生を見つけて振り向いてみると、あの見合いをした、芦屋雁之助に似た女だった。
 次の女子高生も、その次の女子高生も・・・・。
 目が醒めた。なんてひどい夢だ。

 「倉田君、ちょっと」
 社長が呼んでいる。手にしたものを見ると、例の見合い写真らしい。
 「見てくれないか? 今度のは正真正銘美人だぞ。わたしが独身だったら、絶対オーケーと言うな」
 やっぱりそうだった。写真を開いてみた。振り袖を着た可愛らしい女性が映っていた。可愛いが、ぼくの好みじゃない。それにピンとくるものがない。例え見合いでも、結婚する以上、インスピレーションが欲しい。この女性となら、一生一緒に居たいと言うインスピレーションが。
 「おっしゃる通り、美人だと思いますが、ちょっと」
 「ちょっと、何だね?」
 「感じるものがないんですね。会ってみたいって言う」
 「実物に会ってみたら、感じるものがあるんじゃないか?」
 「いや、お断りしてください。お見合いは、ファーストインプレッションが大事と思いますから」
 「・・・・そうだな。勿体ないような気もするが、じゃあ、また別のを持ってくるよ」
 「そうしてください。お手数をかけます」
 「決まった娘がいるってことはないんだろう?」
 「ないですよ。いたら、すぐにでも結婚します」
 「分かった。いいのを見つけて持ってきてやる」
 結婚はタイミングだ。そのタイミングを外すと、なかなか結婚できない。これまで、ふたりほど、結婚しようと考えた女がいた。しかし、相手とのタイミングが合わなかった。今は恋愛をする気力もなく、結局独身のままだ。

 黒板を見ながら、一生懸命鉛筆を走らせていた。書いている内容からすると、数学の授業のようだ。ぼくの大好きな数学の授業だ。黒板に大きな声を張り上げて、チョークを走らせているのは、間違いなく数Vの教師。大柄で、声がやたらでかかったことだけは良く覚えている。
 「白い玉がK個ある。その中から・・・・」
 確率の授業だな。
 「倉田! 前に出て解け」
 ぼくが指名された。ぼくは立ち上がって、黒板へと向かう。チョークを取って、解答を書いていく。
 「よかろう。が、しかし・・・・、ここは、こういう風に書いた方が簡単だ」
 ぼくが書いた解答を赤のチョークで訂正し始めた。それがいつまでも続く。黒板を消しては書き、消しては書く。
 「ぼくの書いた解答のほうが簡単じゃないんですか?」
 教師は、ぼくを睨み付ける。
 「このほうが格段に簡単だ。倉田の解答は冗長すぎる」
 そう言いながら、なおも書き続けた。それだけで授業の大半が終わりそうだ。
 「これで分かったかな? では次の問題だ。赤い玉がK個ある。それに・・・・」
 「K個が好きですね」
 「K個。K個。ケーコ。ケーコ。愛しのケーコ。もう帰らなくちゃ。ケーコ! 愛してるよ!!」
 教師は、教材を抱えると、ぼくたちには目もくれず教室を出ていった。彼は一ヶ月前結婚したばかりだ。恵子という名前の女性と。
 ぼくは、夢の中で笑った。実際に起こったこととは違うが、彼が、奥さんの名前が恵子だから、K個を使うと自らの口で言っていたのを聞いたことがあった。それが夢の中に出てきたのだ。

 その後、社長から見合いの話しはない。ほっとしている。不況が一段落して、チラシ作りは仕事が多く、毎日毎日残業だ。冬のボーナスは少しは多くしてくれるのだろうか? 今のような安月給では、あの雁之助女以下の女しか、ぼくと結婚してくれそうもない。

 目の前に、ぼくに一生懸命語りかける女がいる。セーラー服を着ている。ぼくは、また高校時代の夢を見ている。最近高校時代の夢が多いなと思う。
 ぼくは、彼女とお喋りをしているのだけれど、何を話しているのか分からない。分からないと言えば、話している相手だ。見たことのない女だ。同級生でも下級生でもない。まして、先輩でもない。こんな女子生徒がいただろうか?
 そう言えば、その彼女の着ているセーラー服がぼくの通っていた学校のものと違う。他の学校の女子高生と話しているようだ。こんなに親しげに話す女子高生など、ぼくにはいなかったし、もしいたとしても結構美人だから、忘れるはずはないのに・・・・。
 その女子高生は、小さな弁当箱から、ウインナーソーセージを箸にとって口に運んだ。可愛らしい口元だと思った。その口が、ウインナーではなく、ぼくのあれを含むのを連想する。
 ぼくもテーブルの上の弁当箱から、卵焼きを取る。卵焼きを口に入れながら、随分小さな弁当箱だなと思う。まるで、女の子が持ってくる弁当箱みたいじゃないか。
 弁当箱? ぼくは高校時代、弁当箱など持ってきたことがない。ごく稀に学食のランチを食べる以外は、いつもパンと牛乳だった。

 母は、高校時代の教師と不倫して、ぼくを生んだ。その男と結婚できず、母はひとりでぼくを育ててくれた。
 当時母は、昼は墓石屋の事務員として働き、夜はスナックで働いていた。随分ギャップのある人生だと思う。
 母はいつも疲れ切っていた。朝墓石屋に出掛けるぎりぎりまで布団の中にいた。弁当を作ってくれなんて言えなかった。だから、朝出がけに現金を手渡され、高校の購買部でパンと牛乳を買って食べていた。節約して貯めた金で、時々、夢で見たA定食を食べていたのだ。今日は、母の手作りの弁当を食べたいという思いが、夢の中に出てきたのだろう。
 それにしても小さな弁当箱だ。これで腹が満たされるのだろうか?

 最近少し頭痛がする。働き過ぎだろうか? 一日中モニターを眺めているせいかもしれない。

 風を切って自転車が走る。ぼくは家に向かっている。ペダルをこぐことはない。スピードが出過ぎたとき、ブレーキをかけるだけでいい。
 見なれた町並み。家に近づくと、近所のおばさんたちが声をかけてくれる。今はもう亡くなったおばさんの顔が見える。ぼくはまた、夢を見ている。
 「崇ちゃん、元気?」
 「絶好調ですよ」
 ぼくは笑顔でそう答える。
 「成績がいいって言ってたわね」
 「まあまあですよ」
 「大学はどこに行くの?」
 「大学なんて考えてません」
 「勿体ないわね」
 その頃のぼくの家の経済状態では、大学なんてとんでもなかった。高校を卒業したら、就職して母を助けるつもりだった。
 ドアの鍵を開けて中に入ると、自分の部屋に入って宿題のプリントを始めた。数学のプリントだ。3問あるうちの1問がどうしても解けない。その問題は、今でも解答が分からず、時々夢の中に出てくるやつだ。今でも解けないんだから、高校生であるぼくには、解けるはずがないのに、ぼくは解答を見つけようと、プリントに穴が開くくらい見つめていた。
 午後7時の時報がなった。解答を諦めて、ぼくは部屋を出た。居間は真っ暗だ。母はまだ戻ってこない。いつもなら、もうとっくに戻っている時間なのに・・・・。
 居間の電気を点けると、テーブルの上に書き置きがあった。
 『崇へ
 ごめんなさい。あなたを置いていくわたしを許してください。あなたのためにずっと我慢してきたけれど、この愛だけは失いたくない。
 ごめんなさい』
 母がぼくを置き去りにした。信じられなかったが、これは実際に起こった事件だ。ぼくは、高校3年になったばかりの4月の末、母に捨てられたのだ。
 ぼくは、泣きながら母を捜した。母は見つからなかった。

 目が醒めた。ぼくの目は涙で濡れていた。夢の中には、見たくない夢もある。母に捨てられた夢など、もう二度とみたくない。そう思うけれど、同じ夢をもう何度見たことかしれない。
 3年たって、母の行方が分かった。北海道で、子どもを産んで幸せに暮らしていた。ぼくの入る余地はなかった。ぼくはひとりで生きていかなければならなかった。
 母に捨てられた後、成績優秀だったぼくを担任だった教師が育ててくれた。大学まで出してもらった。その教師夫妻を両親だと思って恩返ししていた。その両親代わりのふたりはもうこの世にはいない。76歳と78歳でふたりとも亡くなった。

 「原稿上がりました」
 「ご苦労。倉田君、今日は元気ないな。どうしたんだ?」
 眼鏡をあげて、心配そうに社長がぼくに尋ねる。
 「何でもないです」
 「そうか」
 社長はいい人だ。ぼくは、家庭には恵まれなかったけれど、まわりにいる人間には恵まれている。だから、こうやって生きて行けるのだ。

 ぼくは鞄を籠の中へ入れた自転車を押して歩いていた。隣には、学食で弁当を食べながらお喋りした女の子がいた。今日も何かふたりでお喋りしている。良くそんなに話すことがあるなと言うくらい長い話しだ。
 おかしいと思ったのは、ぼくの押している自転車だ。ぼくが高校時代乗っていた自転車は、10段切り替えのスポーツ車だ。中学時代、新聞配達をして稼いだ金で買ったものだ。その自転車じゃない。ママチャリに毛が生えたくらい自転車なのだ。しかも、籠の中の鞄は、ぼくが毎日荷台にくくりつけていた、教科書や参考書が詰まった鞄じゃなくて、薄っぺらな鞄なのだ。
 しばらくして校門前で友人らしいその女の子と別れ、自転車に乗って帰り着いた家は、市営住宅ではなくて、一戸建ての家だった。ぼくは今でもアパート住まいだ。一戸建てに住みたいという願望が、こんな夢を見させるのだろうか?

 頭痛がなかなか良くならない。医者に行った方がいいだろうか?

 また、高校時代の夢を見た。最近どうして高校時代の夢ばかりを見るのだろうか? どうもよく分からない。
 今日も自転車で学校へ向かっていた。母が千円札をぼくに手渡してくれたところを見ると、母に捨てられる前のようだ。
 いつもと違った道を行こう。そう思ってハンドルを切った。前方に、ぼくの通う高校とは違う高校に通う女の子の制服が見えた。女子校とは違う高校の制服だ。
 凄く可愛い子だった。ぼくの初恋の女の子とは違うが、一瞬呆然となった。その子は、ぼくに向かって、にこりと笑った。その笑顔がとてつもなく可愛かった。

 目が醒めた。今日の今日まで忘れていたけれど、さっき見た夢の中に出てきた子も可愛かったんだ。その子の名前も知らない。どうして今頃夢の中に現れたんだろうか? 夢というのは不思議なものだ。

 またもや授業を受けている夢。今日は英語の授業だ。女の教師が教科書を見ながら、説明している。
 ぼくは、ノートに・・・・ノートに落書きをしている。ウエディングドレスやワンピースを着た女の絵を描いていた。ぼくは授業中に落書きなどしたことなどない。しかも、ウエディングドレスにワンピース? どうなってるんだろうか?
 「○○○さん、次を読んで訳しなさい」
 ぼくの名前が呼ばれたのか、ぼくは立ち上がって英文法の教科書を読み始める。ぼくも英語はそう得意ではなかったけれど、ひっかりつっかり読んでいる。
 訳ときたらデタラメもいいところだ。こんな英語力ではなかったはずだが・・・・。
 「もういいわ。少しは予習してきなさいね」
 「はい」
 ぼくは椅子に座った。座るとき、何だか変な動作をしたようだったが、よく分からなかった。
 教室の中を見回すと、制服が違うのだ。見覚えのない制服。ここはぼくが通った高校ではなかった。どうしてこんな所にいるんだ?
 夢というものは、大抵過去に見たものが出てくる。予知夢と呼ばれるものもないことはないが、そんなことは滅多にない。しかし、この夢の中に出てくる景色は、まったく見覚えのないものだ。急に不安になった。見覚えのない場所にいる自分の夢を見るのは、これで何度目だろうか?

 授業が済んだ。セーラー服の女の子がぼくに駆け寄ってきた。あの女の子だ。ぼくの夢の中に出てくるのは、これで3度目だ。いったい誰だ?
 「ねえ、○○○。明日、西部デパートに行かない?」
 「いいわよ」
 ぼくの意志とは関係なく、ぼくが答える。こんなことは今まで一度もなかった。夢の中でぼくの意志とは別の話をするなんてことは・・・・。
 それに・・・・。ぼくは、『いいわよ』と応えた。『いいわよ』? 女言葉だ。訳が分からない。
 ぼくは立ち上がって、鞄を持ち教室の外へ向かう。廊下ですれ違った詰め襟の男が、ぼくに微笑みかける。いったいどう言うつもりだ!? やつはホモか?
 その時になって、気がついた。ぼくの髪が長いってこと。そして・・・・、そして、ぼくはスカートを穿いていた。廊下の曲がり角にあった鏡を見ると、ぼくが着ている服は、セーラー服なのだ。授業中に椅子に座るとき、変な動作をしたと思ったのは、スカートを穿いていたせいなんだ、と妙に納得した。

 驚きに目が醒めた。ぼくの深層心理に、セーラー服を着てみたいという願望があるのだろうか? 頭を振って、その考えを否定する。そんな事なんて絶対ない!!
 変な夢を見てしまったけれど、今日は頭痛がない。さわやかな気分で働けそうだ。