1996年11月26日発行 第7号

インターネットは個人=ネティズンにチャンスを与える。
ネティズンがSOHOを楽しみ新産業を興すサイバーフロンティア空間

博多〜別府湾〜マレーシア間の、inter-bay project を考えよう

尾 野  徹

 ニューコアラ 事務局長/(財)ハイパーネットワーク社会研究所 理事
大分県情報化委員会準備会 事務局長/大分経済同友会マルチメディア特別委員会 委員長

小企業の大企業並みの力
 インターネットは、過去、大企業や大組織でのみできていた情報収集を個人や小企業に可能にさせるのみならず、情報発信力をも大企業なみに持てることに気が付かせてくれる。
 なにしろ、世界中のサーバーを対象に適当にキーワードで物事を検索できることは、まずもって誰に聞くより行いやすい行動だ。何ならあなた御自身の名前で検索してみるといい。そして、そうやって検索されたホームページを元にその作者グループにメールを出せばそれなりの結果が得られるのであって、わざわざ図書館に出向かずとも、または、調査会社に問い合わせずとも基本的な情報はそれで十分だ。特に新製品情報や新しいサービスの開始などはメーカーも新聞発表と同時にWWW上にカタログ情報を掲示することが多く、従来東京本社に住所を告げて郵便でカタログを送付してもらっていた時代は遠くへ消え去ってしまった。多分、昔の大企業はこういった新鮮なニュースを組織の力でいち早く仕入れ、情報伝達の遅かった一般個人や地方に対して先回り商品化、販売ルートの系列化などを行ってビジネスにしていたのだろうが、ネットワークを使いこなすネティズンにはかなわないだろう。
 かつ、実際にカタログに大金をかけて大量にカラー印刷したり郵送したりしなくても、WWW上にカタログ情報をマルチメディアでたった一つだけ作りさえすれば、多くのその方面に興味を持ちキーワード検索する方々に直接情報を提供できるという事実は、情報発信の価格破壊そのものであって、小企業と大企業が同じ力で勝負するという時代になったことを雄弁に物語ってる。

小回りのきく即決力が小企業の武器
 ならば、そういった情報を大企業と小企業が同時に入手した場合、それによる一早い決断や行動が勝負を決することが多い、とされるならば、即断即決できる小組織の方が分があることも当然だろう。つまりは、新産業もこういったことから小企業から起こりやすい時代になってきた。
 さらに、即断即決できる社長がネットワークを自由に使いこなせば、業態や地域枠を超えた、昔でいう“異業種交流”そのものであって、大企業が部下を派遣しあって異業種交流を行うよりはるかに新しいことが起こりそうだ。つまりはネットワークが発展している地域はこういったことからも新産業気運が増しそうだ。NTTマルチメディア実験やハイパーネットワーク整備はそういったことを願ってであって、決断できる立場の方々への普及や大組織(県内最大組織の県庁もそうです)の小分割化、小回り化、ネットワーク化を一段と早めたいものだ。

「楽しさ・面白さ・理想追求の素晴らしさ」重視へ
 ただし、そのような小企業や小集団であるので、一企業の売り上げはそれほどでもなく目立たないかもしれない。
 かつ、それら小企業は、大企業のように右肩上がりの企業成長よりも、ある程度の収入さえあるならば、あとは本人そのものが「その事業が面白い」「楽しい」「理想 を追求できる」等といった従来とは異なった判断基準が優先されるようでそういった集団は何よりも楽しげで人が集まりそうだ。
 さらにはそういったアプローチでも経済(企業)活動がなりたつ時代になってきつつあるようで、従来の製品や商品に企業コンセプトとして「楽しさ・面白さ・理想追求の素晴らしさ」が入り込んでいる企業の健闘が目立つし、実はそこに一番の付加価値が見出される時代になりつつあるようだ。(これらはハイパーネットワーク社会研究所の公文理事長の言われる『智業』そのものに他ならない)
 多分、昔のシリコンバレーはそういった小集団がたくさん集まって、結果的に一大産業になったようで、それを認める地域コンセンサスと政策(例えば、安い家賃や通信費、優遇税制など)がフロンティア精神あふれる未来の地域社会を作ってくれるだろう。
 そういった昨今言われるSOHO(スモール・オフィス、ホーム・オフィス)こそが一村一品風の新産業興しのようで、売り上げが小さくとも、社員数が少なくとも、若い社長であっても、それらを大事にし歓び受け入れる新しい地域開発ビジョンが欲しいところだ。

今年出来た新ブロック経済圏、、、
 さて、そういった目で周りを見まわしてみた。
 NTTマルチメディア実験に代表されるハイパーネットワーク整備実験は、新しい空間を出現させたようだ。
 多分、九州のインターネットブームはコアラから始まったようで、当初は九州全域からのコアラ入会者が多かったが、中でも福岡からの利用は群を抜いていた(当初は大分人よりも福岡人の入会者の方が多かった印象を受けるほど)それに応える形で、コアラの福岡ノードを設置。それも利用にあわせてたびたび設備を増強し、かつ、NTT実験バックボーン回線が福岡から大分へ延びていることもあって福岡〜大分間にまぎれもなく「情報ハイウェイ」を感じるようになってきた。

サイバー天神。
地図上に情報を提供。HyperConf(http://www2.coara.or.jp) にあります

 それも単にハード線のハイウェイではなく、今回設置された実験事務局でもある新情報基地『ハイパーステーション』から発信される様々なコンテンツ、マルチメディア情報に沿ってであり、メールや「One person,One homepage」といったサーバーの利用、そして電子会議といった利用者間の交流がフロンティア感あふれる新ブロック空間の実体を浮かび上がらせてくれている。
 おりしも、本年7月、大分〜福岡への高速道路が開通して一気に福岡と大分が距離的にも近くなっている。つまりは、バーチャルな情報道路とリアルな道路が一気に開通して新しいサイバー空間、新経済ブロック圏が出現したといっていい。

新しいサイバー空間でSOHO実現
 その高速道路/情報道路の端は博多湾と別府湾で結ばれており、かつ、両端ともに福岡リサーチパーク、別府リサーチヒル・大分ソフトパークと情報産業を集積させている。そして、かたや天神に代表される大都市の賑わい、かたや湯布院や別府温泉の自然のうるおい、と性格の違いを持ちながら立地特性を際立たせていてそれぞれに魅力的だ。
 ならばそれらの地域を結ぶ帯状の一帯をマルチメディアやインターネットで満たし、SOHOを実現する「快適マルチメディア居住環境・産業形成地域」にするプロジェクトはどうだろう。
 題して、博多湾〜別府湾間マルチメディア居住環境地帯 −形成プロジェクト Hakata Beppu inter-bay multimedia habitation belt −project

 その中間域は久留米や日田のように早くから情報化に励んでいる地域もある。甘木では青年会議所が中心となって盛んにネットワークを盛り上げようと行動しているし、大山町ではCATVによるインターネット実現も目前だ。
 その他の一次産業主体の市町村も一次産業に情報化やマルチメディアを取り込む事に一生懸命であり、在宅勤務プロジェクトを研究しあって『マルチメディア兼業農家』なる新職業ができるかもしれない。いや中間域に住めば、どちらのソフトパークにも一時間で通えて、未来の「日常の森林生活、時折の出勤」で花形職業従事も可能だろう。ネットワークの快適な利用が保証されて、かつ、それらに理解や造詣の深い地域住民風土をつくれるならば、都会では難しい職住接近の心豊かな生活を、SOHOで実現できる新しい産業形態を考えあえるだろう。

博多湾〜別府湾間マルチメディア居住環境地帯 - 形成プロジェクト
Hakata Beppu inter-bay multimedia Habitation Belt - project

アジア情報軸を形成する交流空間に新ビジョンを!
 さらには、別府湾を見渡す素晴らしい景勝地に立命館がアジア太平洋大学を99年に開校する予定になっている。総て英語で授業が行われ、かつ、学生の半数を海外から集めるものでアジア各国からの支援や国内主要企業からの奨学資金の支援組織など着々と準備が進められている。
 勿論、博多ではアジアビジネスセンターが設立され九州産業のアジア化、アジア産業と九州の連携、と今後の活躍が大いに注目されているし、アジアマンスでの文化交流やスポーツ交流など積極的な交流を行っており、福岡も大分もともにアジアの地域、主要都市との地域間交流事業を大きな事業として持ち、推進している。だったら、HB−beltを、21世紀のアジア情報軸(AII;Asia Information Infrustracture)の一環ととらえて、アジア地域を睨んだ21世紀にまたがるビッグ事業と銘打って皆で考えあうことも面白い。ちょうど2002年にワールドカップサッカーが大分で開催されるならば、アジア各地から福岡を表玄関として人々があつまってくるに違いないし、中期目標としても面白そうだ。
 折しも平松大分県知事の提唱で3年前別府で初回の九州アジア都市サミットが行われて今年は3回目として福岡市で開催。その福岡大会で、同様に平松知事から来年のマレーシア開催を睨んで、インタネーネットやマルチメディアを使った地域間交流が提案されたことはインターネット技術の発展や世界気運に沿った、とても時機、時運の良い話ではないか。何しろマレーシアは、国家事業であるMSC構想(マレーシア・マルチメディア・スーパー・コリドールといってたいへん広大な地域にマルチメディア特区を造って産業を興そうとしている)推進に平松知事や公文理事長を含めた日本の各界各層に交流を求めてきていることだし。
マレーシア・マルチメディア・スーパー・コリドー
http://www.jaring.my/msia/rnd/msc.html

 そうであれば、当面の第一歩として、福岡〜大分〜マレーシアを結ぶマルチメディア/インターネット交流軸を造ってみよう。
 幸い、マルチメディア実験で研究してきたサーバー技術が応用できそうだし、フロンティア精神溢れるSOHOはそういったアジアをも含んだサイバー交流圏のなかに次々と産まれる予感を感じてしまう。  そういった未来ビジョンを検討しつつ、夢ある地域づくりの意見を今こそ交える時機が来ているように思う。
 コアラはそのような地域連携をいつも行ってきたし、その側には、国内のみに留まらずアジア各地との情報化連携を考え、様々に提言、ビジョンづくり、実験推進を行う(財)ハイパーネットワーク社会研究所がある。国レベルでの郵政省と通産省の共管研究所で本部が地方にあることが最大の特徴の一つであり、我々は、それらの特質を最大限に生かして新しい地域づくりビジョンを掲げる時期が来ているように思う。