朝日新聞 10月1日版より
   論壇    

地域連合で『分権』進めよう

 地域分権が議論の段階から実行の段階へ移行しつつある。

 地方分権推進法に基づく地方分権推進委員会の三次にわたる勧告が出され、これまで地方が国の下請けとなつていた機関委任事務制度が廃止され、法定受託事務(法律で国の事務を地方自治体が行う)と自治事務(地方が固有事務として行う)に分けられた。また、都市計画など三八四件の事務移譲や補助金の整理統合など、戦後長い間、地方自治体が要望してきたかなりの部分にメドがついたことは評価される。

 私は、地方分権のキーワードは『分権』『分財』『分人』といっている。今のような三割自治だと、権限だけ移譲しても財源が不足し、仕事が出来ない。だが、財源と権限が移譲されても、市町村に有為の人材がいないと住民のニーズにあった行政が出来ず、かえって中央集権型行政の方よかったということになりかねない。そうかといって、分権で人員や事務費が増えるのでは行政改革に逆行することにもなる。

 現在の三、二三二の市町村と四七都道府県の行政機構では、分権の『受け皿』としては規模が小さすぎる。特に最近の廃棄物処理、水利権調節など県境を越えて生じる広域問題には対応出来なくなっている。

 二〇〇〇年度に実施予定の介護保険は、認定業務、介護サービスを市町村の事務としている。大都市ならともかく、中小町村で、独自に専門職員を置き認定事務を行うことが可能であろうか。むしろ、中小町村が合併して事務を行う方が効率的だし人材も集まりやすい。

 大分県を例にとると、一九五三年の町村合併促進法によって、当時一九五あった 市町村が六七となり、現在は五八までになった。合併をめぐっては住民間で賛否をめぐって紛糾したこともあり、歴史的経緯や地理的条件などから、その後合併は遅々として進んでいない。そこで私は、九四年の地方自治法改正で創設された『広域連合制度』が合併に代わる現実的な手法であると考え導入を進めている。

 九六年四月、全国初の広域連合として大分県で大野広域連合が設立された。大野郡八町村が共同で文化施設を郡中央の町につくり、その経費は各市町村で分担し、運営は町村長で互選した連合長が一元的に行う。個々の町村で類似のハコ物を造るより、効率的で予算の節約にもなる。県は施設が利用されやすいように、道路設備に特別補助金を出した。その後、東国東(ひがしくにさき)広域連合、また、市と市の間では全国初のケースとなる臼杵・津久見両市の広域連合が認可された。いずれも消防、病院、葬斎場などの管理運営が中心業務となっている。これらの業務は以前からある『一部事務組合制度』でも運営できるが、広域連合では、連合長である市長村長が勧告権をもち、あたかも合併と同じ機能を果たしうることが特長である。合併をめぐるトラブルを避け、将来は合併と同じ機能を果たすことが期待される。

 広域連合は大分県以外ではまだ二県三地域と少ない。また、地域分権推進委員会 でも、分権の枠組みともいえる都道府県の再編成、道州制などの議論は先送りされている。これでは現在の中央集権推進型国家体制の枠組みの中での地方分権であって、自ら限界がある。

 私は、全国の市町村が地域ごとに地域連合を編成し、五〇〇程度の連合体が形成され、都道府県も八ブロック程度の府県連合になることが望ましいと考える。九州でいうと八県連合を組み、広域行政事務を行う。国の出先機関である建設局、農政局などは一本化し、『九州府』を設置し、長官には九州八県知事より選ばれた連合長が就任するという『九州府構想』を提案している。

 『地方分権はUFO』とうジョークがある。こころは、話題になっても実体を見た人はいないということ。これからは国に対し、権限、財源を移譲してくれとお願いするだけではなく、地方自治体の首長、議会、住民自らが地方自治組織の体制づくりに努力しなければならない。アメリカ州主権に基づく連邦国家のように、日本に地方主権による地域連合国家をわれわれ地方のエネルギーでつくらないと、分権はまさにUFOに終わってしまうだろう。

                          (大分県知事)