グローバルに考え、ローカルに行動せよ
−第51回全国植樹祭を終えて−
大分県知事 平 松 守 彦

 新しい千年紀の始まりである西暦2000年、4月23日(日)、第51回全国植樹祭が開催された。
 大分県にとって、二度目の全国植樹祭だ。前回は、昭和33年に別府市志高湖畔において、昭和天皇皇后両陛下をお迎えし植林を行った。当時は旺盛な木材需要に応えるため、木を植えることが目的で、テーマは、「原野造林」。それから、42年の歳月が流れ、世界情勢の変化や環境意識の高まり等時代は大きく変化してきている。
豊後梅をお手植えされる
皇后陛下
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○3つのテーマ  
私は今回の全国植樹祭では、3つのテーマを掲げた。
、下流の人々が上流の森林に感謝する植樹祭  森林は、水を蓄え、豊かできれいな水を育むなど様々な機能を持ち、漁業を育て、都市部の人が安全でおいしい水をいつでも飲める。
 しかし、近年、林業労働者の高齢化等により間伐不足の森林が増加し、平成3年、5年、11年と相次ぐ台風では、丸ごとなぎ倒され、風倒木が川に流れ、海を汚し、またその堆積物の除去が大変大きな問題となった。「山は海の恋人」という言葉があるように、森林は下流域に大きな恵みを与えると同時に、山が荒れると下流の人が思いもかけぬ災害に遭う。そこで、下流域の人が上流の森林に感謝する植樹祭として、県民自らが「苗木のホームステイ」で心をこめて育てたイロハモミジやコナラの広葉樹など33種類の苗木1万3100本を、林家の方だけでなく、下流域の都市住民や漁村の人たちが一緒になって植林をおこなった。
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、災害に強い森林づくり  先の台風による森林災害復旧では、国と県、市町村で95%の助成をおこない、条件としては20%以上の広葉樹の植裁を進めている。今回の植樹祭は災害に強い森林づくりをコンセプトに、スギ林の間伐をおこない、その間に広葉樹を植林した。全山を針葉樹と広葉樹の複層林にする新しい試みだ。
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、「アジアグリーンネットワーク宣言」の提唱  1997年に京都で開かれた地球温暖化防止会議で二酸化炭素(CO2)の削減目標が決まると同時に、森林の持つCO2の吸収機能により森林を排出権取引の対象とするなど、森林が21世紀における環境保全に貢献することは間違いない。森林を日本だけでなく、アジア全体で植林の輪を広げていく必要がある。地球規模で考え、地域において植林をおこなう。まさに、「グローバルに考え、ローカルに行動する。」ということだ。日本全体の林野率は67%、大分県は72%であるが、アジア各国は、韓国77%は別としても中国14%、フィリピン23%、マレーシア47%、タイ23%といずれも低い。中国で、平成10年に記録的な大洪水が起きたことは今なお記憶に新しい。私は、昨年10月中国の南京師範大学で講演し、学生と一緒に植樹をした。また、今年3月にはフィリピンを訪問、ラグナ州で、カラバルソン6州の知事とともにフィリピンのナラの木を植樹、4月5日、韓国で「植木の日」の記念行事としてソウル市長とともに植樹をおこなってきた。そして、植樹祭当日、別府市に4月開学した立命館アジア太平洋大学をはじめとする留学生たちにも参加してもらい、アジアへ植林を呼びかける「アジアグリーンネットワーク宣言」をおこなった。
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○爽やかな緑の風が吹いた植樹祭
 植樹祭当日は、雲一つない晴天であった。県のほぼ中央部に位置する県民の森・平成森林公園に特設された植樹祭会場に、天皇皇后両陛下がご到着され、「大分へようこそ」のコーラスが流れるなか、1万2000人の参加者が一斉に起立してお迎えした。地元の林業関係者、植林ボランティア、小中学生など1200人が参加し、テーマソング「緑」を「与作」を歌った北島三郎さんが熱唱し、感動的な大会となった。
 天皇陛下は大分県のみに自生するブンゴボダイジュやボタンザクラ、アカガシ、皇后陛下は県花・県木であるブンゴウメとケヤキ、カツラをお手植えされ、天皇陛下から「複層林というのは植樹祭では初めてですね。」というお言葉もいただいた。
大分県県民の森・平成森林公園
(全国植樹祭会場)
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○「森林・林業基本法」の制定を
 この植樹祭を契機に、「県民総参加の森林づくり」を進めるとともに、今後は活力ある森林を維持するため、間伐を実施する林業労働者をいかに確保していくか、さらに、間伐した木材をどう収益に結びつけていくかといった抜本的な森林保全対策を講じる必要がある。また、国には、単に林家の保護・育成だけでなく、水源税的な財源確保により環境を守るための森林整備を重視した新「森林・林業基本法」を早急に制定されることを期待したい。