『時事評論』 2001年10月10日 2001・10月号  より

ローカル外交のすすめ−アジアとの共生−
大分県知事 平松守彦


 本年6月9日、カンボジアのフンセン首相が大分県を初めて訪問し、一村一品の現場を視察した。
 実は新世紀を迎えた早々の1月、私はカンボジアの招きで首都プノンペンを訪問し、シアヌーク殿下やフンセン首相にお会いした。その際、カンボジア復興のため一村一品運動を取り入れたいとの要請を受け、同国と大分県の間で、友好協定を結び、カンボジアの一村一品運動を大分県が支援、協力することにサインし、今回の訪問となった。
 一方、タイでは、タクシン首相も選挙公約でタイ版一村一品運動を全土で行うことを表明し、私も4月にタイを訪れ、一村一品運動について講演した。近くタクシン首相も大分県を訪問することになっている。
 韓国では、朴元大統領が提唱したセマウル(新しい村)運動と大分県の一村一品運動との交流が10年前から続いており、今年は9月に金大中大統領が学生時代を過ごした木浦(もっぽ)でシンポジウムが開催され、私も参加する予定だ。
 中国でも江蘇省の一郷一品、湖北省の一村一宝運動をはじめ、多くの地域と交流しており、南京師範大学からは名誉教授の称号を受け、同大学で講演した。
 21世紀はアジアの世紀といわれ、アジア共同体(AU)構想も浮上しているが、最近の教科書問題、首相の靖国参拝問題や農産物のセーフガード発動等で、貿易面や文化面、外交面で日本と近隣アジア諸国との間であつれきも生じていることも事実だ。
 私は国と国との外交も大事だが、同時に地域住民による地域活性化ノウハウの交流や、日韓共催ワールドカップサッカーを契機としたスポーツ交流、文化交流といったローカル外交をさまざまなレベルで積極的に展開し、相互理解を深めてゆくことがアジア共同体構築のために大切だと思う。住民同士の顔の見える交流が国益と国益のぶつかり合いでぎくしゃくした外交関係をときほぐし、平和的な解決に導いていく大きな力になるに違いない。「グローバルに考え、ローカルに行動せよ」、これがアジアの共生のうえで最も重要なキーワードだ。