鈴木 2003年の幕開けを迎えました。今日は「魅力ある大分県の姿を考える」をテーマに知事と地域のリーダーの皆さんにお話を伺って参ります。
 まずは、平松知事に昨年を振り返っていただきます。
知事 昨年は長引く不況で、暗いニュースもありましたが、W杯大分開催の成功やトリニータのJ1昇格、全国和牛能力共進会(肉牛部門)の内閣総理大臣賞受賞、また農林水産祭(畜産部門・水産部門)天皇杯受賞などと、大分県の地域の力が発揮できた一年でもありました。
 
魅力ある地域づくり
鈴木 大分が輝いた1年でしたね。では、県内各地で、魅力ある地域づくりを進めている皆さんにお話を伺って参りましょう。
桑野 由布院温泉は昭和40年代から「最も住み良い町こそ優れた観光地である」と考え、保養温泉地、生活型観光地を目指してやってきました。映画祭、音楽祭も30年近く続き、出会いの場となることで、人口1万2千人の町に年間380万人の観光客をお迎えしています。
 また、小さい子どもを持つ母親の視点で地域を見つめ直してみたいと考え、グループでスローフード運動にも取り組んでいます。
矢羽田 私は昭和50年から大山町農協の”セールスマン“としてやってきました。亡くなった矢幡治美元組合長から「産品を売るには、まず農家の人たちと一緒に大山の心を作りなさい。その心を理解してもらえれば商品は売れる」と言われ、その言葉を信じてこれまでやってきました。
 昔は五反百姓といえば貧しい農家の代名詞でしたが、大山は平均して四反です。これを克服するには、大山の農業の構造改革、つまり収益率の高い農業しかないのです。少量生産、多品目栽培、そして高付加価値販売に力を入れてきた結果、この50年間、町内の農家数は変わっていません。また、農協が運営する農産物販売所「木の花ガルテン」は年間150万人がレジを通り、売り上げは11億円を突破しました。
平田 私の地域づくりとの関わりは、昭和60年に、知事が提唱した「豊の国づくり宇佐塾」に参加したことから始まりました。2年間いろいろな方と一緒に勉強した後、宇佐市のメンバーを中心に「豊の国宇佐市塾」をつくり、宇佐を細かく見る”宇佐細見“をテーマに活動を続けてきました。
 横綱双葉山や小説家の横光利一、漫画家の麻生豊など、宇佐ゆかりの人物などを取り上げ、これまでに「宇佐細見読本」9冊にまとめました。また、城山三郎さんの著書『指揮官たちの特攻』の舞台となった宇佐航空隊にも取り組んで、平和の大切さ、命の尊さを実感しました。まず、地域を知ることが、愛することの始まりだと思っています。
長谷 昨年は多くの方々のご協力をいただいて、ワールドカップでカメルーンのキャンプ地の大役を果たすことができました。村の人たち一人ひとりががんばった結果、子どもたちも含めて、村に対する誇りや自信を得たことが一番大きな成果だと思っています。
 過疎化で寂しくなった村が、選手を精一杯温かく迎えて、ほんとうに喜んでもらえました。私たちはそれによって、まだまだ可能性があるんだと気付かされたわけです。
 今は、全国の方に中津江村をふるさととして感じてもらおうと、村長が「中津江村笑顔の会」を提案しまして、会員を募集しています。
知事 地域づくりは人づくりです。それぞれの地域の魅力を創っていくためには、まず魅力ある人を育てなければなりません。今日お集まりの皆さんは、自ら学び、考え、そして行動することによって魅力ある人間となっている。
 そういう皆さんの人間力が、周りの人々の力をますます発揮させ、地域づくりの確かな活動と結びついて、人を引きつける地域力が高まっていくのです。
 
アジアとの交流、ローカル外交
鈴木 21世紀は国際化の時代と言われています。皆さんが取り組んでいる海外との交流についてもお聞かせください。
矢羽田 大山には土地が少ないため、平成元年に中国の蘇州に合弁会社「蘇州大山蜂蜜有限公司」を設立し、大山特産の梅のジュース「梅蜜」の材料となる品質の良い蜂蜜を生産しています。また、中国から農業開発のモデル事業への参加を求められたのを機に、「西山・大山高次元夢農場」という合作事業もスタートさせました。
 実は、大山町民の約7割がパスポートを持っていて、海外に出かけた経験があります。これは、昭和36年の「ウメクリ植えてハワイに行こう」という運動から始まったものです。高い教育に代わるものは豊かな体験学習です。多くの住民が海外で衝撃的な体験をすることによって町の民度(文化の程度)が確実に上がってきていると感じています。
長谷 中津江村では、4年前から韓国と日本の12歳以下の少女たちによるサッカー大会を開催しています。これをアジア全体に広げて、サッカーを通じたローカル交流の基盤を作っていきたいと考えています。
 
環境との共生
鈴木 21世紀は環境の世紀とも言われていますね。
桑野 湯布院では昨年、環境に配慮した観光地づくりを進めるため、町中心部の自動車の乗り入れを規制する「いやしの里、歩いて楽しいまちづくり交通実験」を行い、お客様方にゆっくり湯布院を歩いていただきました。
 国内、海外のお客様をお迎えするなかで、皆さんが感動されるのは湯布院の美しい農村風景と街並みなんです。美しい自然、澄んだ空気、静けさ、こういうものを次の世代につないでいくことが一番大切なことではないでしょうか。
地域づくりは人づくり
鈴木 地域づくりは人づくりというお話しが出ましたが、皆さんにとっての人づくりとはなんでしょうか。
平田 宇佐市塾の仲間と宇佐のことを細かく学んでいくことによって、地域的にも交流の広がりが出てきました。例えば、横光利一への取り組みが、私たちを県外の鶴岡や伊賀上野、世田谷、果ては小説の舞台となった上海の方々との交流に導いてくれました。
 私はこれまでの活動から、なによりもまず、自分自身が変わってきたことを感じています。地域づくりは人づくり、そして人づくりは自分づくりだと思うんです。自ら地域を学んで素晴らしさに気付くと、その魅力を多くの皆さんに理解してもらえるようになると感じています。
知事 やはり4名の方に共通しているのは、自分が住んでいる地域に対する「愛」ですね。一人ひとりがそれぞれの地域に惚れ込んで、その素晴らしさを知ってもらいたいという心を確かなものにする。これこそ地域力、人間力の原点です。
 私は、今年のキーワードを「望」としました。それぞれが自分の前途に望みを持って、地域の確かな未来を信じて進んでいきたい―そういう願いを込めた言葉です。
鈴木 21世紀の地域づくりの原点は、私たち一人ひとりの地域を愛する心ということですね。未来に希望を持って、今年も良い年にしていきたいですね。
(1月3日放送 OAB新春特別番組要旨)