「河北新報」6月12日号「連携新時代・道州制を考える」
私の主張−「分権」と「分財」同時に−  
大分県知事 平松守彦

 
 

 

縦割りから脱却  

地方分権の現状をどう見るか。
 「1995年に地方分権推進法ができて、国から地方への権限の移譲は確かに進んだ。だが、現行の税制を徴収べ-スでみると国6割、地方が4割。支出べ-スではこの割合が逆転する。中央(国)が地方の生殺与奪の権を握っている基本的な構造は、何ら変わっていない。陳情のために私自身、月平均3-4回も上京しなければならない現状がそれを物語っている」  
 「地方分権とは、自分たちの地域から上がる税金の範囲内で、福祉サービスや基盤整備を進めていくこと。『分権』と同時に、『分財』『分人』を図らなければならない」

地方分権国家を目指すため、道州制の導入を早くから訴えてきた。
 「国の予算は各省庁のシェアに基づき、縦割りで配分される。そこでは、知事が道路予算を福祉に回そうとしてもできない。地域住民の切実な声を、政治・行政に反映できない仕組みになっている。一方で大分県だけで自立を図ろうと思っても、約7,000億円の予算を県内の税収だけで賄うことはとてもできない。ブロック化は避けて通れない」

ブロック化必要

具体的な手順をどう考えているか。
 「まず、国税と地方税を一本化して国に4割を渡し、残りの6割は新しく創設する『九州府』で使途を決めていく。国の出先機関も統合して公選の九州府長官と九州議会を置き、長官と各県知事が協議しながら予算を執行する。第2段階として、各県の県境をなくし、完全な道州制に移行する。北海道、東北、九州・沖縄など全国8ブロックが望ましい」

富める道と貧しい道の格差をどうする。
 「試算によると、企業本社の多い首都圏道が20兆円以上の黒字となるのに対し、九州道は1兆7,500億円の赤字になる。しばらくは、ブロック間の財政調整を図る平衡交付金のようなものが必要になるだろう。だが、いつまでも外部に依存していていいはずがない。地域振興を自らの手で行い、税収確保に努めなければならない」

州都、田舎に置け

地域の国際化を進める観点からも、道州制が必要と訴えている。
 「日本の地図の天地をひっくり返すと、見えてくることがある。それは、九州が環東シナ海経済圏の中心的位置にあるということだ。大分から韓国までは、飛行機で1時間。むしろ首都圏より近い。ぜひ、この地域をフリートレード(自由貿易)ゾーンにしたい。これまで、東北を含め地方に住む者は、東京だけをマーケットと考えてはいなかったか。外交にしても、決して国の独占物ではない。1国2制度の導入などを通じて、九州をAU(アジア連合)の中心にしていきたい」

道州制の成否は、各県の利害をどう調整するかにかかっている。
 「かつて、九州国際空港を福岡県沖に造ろうとしたが、他県から福岡一極集中批判が起こった。だが、そうこうしている間に、韓国の仁川に国際ハブ空港が整備されてしまった。『アジアの中の九州』という考えに立てば、結論は明らかなのに…。一方で州都は集中を避け、米国に倣って田舎に置けばいい。九州なら大分県の日田市、東北なら奥羽山脈に近い場所など、どうだろう。そうしたことを、県民や議員に分かりやすく説明していくことも重要だ」