人事院月報 1998年12月 No.588より

脱省庁システムの提唱

─役人のふるさとをなくそう─

大分県知事 平松守彦



 私は、1949年から26年間通産省に勤め、請われて故郷大分県の副知事に就任、79年
知事となって現在に至っている。

 1970年頃から情報産業、情報化社会ということが叫ばれ、その頃通産省にいた私は
情報産業室長、電子政策課長として情報化行政に携わった。当時はまだ情報産業とい
う言葉自体も熟しておらず、まさに今日のパソコンネットやインターネットなどの情
報化社会の入り口に差しかかる時期であった。

 その折痛感したことがある。情報化の仕事は、コンピューターの技術開発を進める
通産省、コンピューターと末端を繋ぐ通信回線を所掌する郵政省、各省庁における事
務の電算化を所管する行政管理庁などとあらゆる省庁にまたがっている。情報化社会
実現のためには、それぞれの省益や権限のみに固執することなく、日本の情報化の全
体について議論できる各省庁の枠組みを越えたいわば脱省庁システムといった制度を
構築すべきだという強い思いであった。

 最近、公務員のモラル、縦割り行政の弊害また行政改革における役所間の再編成な
ど様々議論されているが、根本の問題は国家公務員の採用方式にあると私は考えてい
る。現在のように、最初から各省庁で採用され一生そこに勤めるとなると、国益に奉
仕するより、どうしても省益が優先する。今年6月、橋本内閣時代に立案された中央
省庁等改革基本法が成立し、これによって国の機構が大幅に再編されるとしても、各
省庁が直接職員を採用している限り、縦割りの行政の弊害は依然として残る。

 したがって、この際思い切って省庁という役人のふるさとをなくし、国家公務員は
すべて人事院が人事院事務官・技官といった形で一括採用する。その上で各省庁に派
遣し、省庁間の異動も常に自由にするという柔軟な採用方式を採るべきではないか。
現に、県では県吏員として採用し、総務・農政・土木部などへ配属する。それと同じ
である。

 こうした提言は、これまでも多くの識者が主張されながら、なかなか実現できなか
った。具体化するにはそれなりに難しい課題はあると思う。しかし、公務員をめぐる
厳しい世論の高まりの中で、官僚のモラルを高揚し、縦割り行政の弊害を打破する時
は今をおいて他にない。人事院には、創立50周年の節目を機に是非この脱省庁システ
ムともいえる新制度を実現し、日本の官僚制度の抜本的な改善に向け、勇猛果敢に取
り組まれることを期待して止まない。


(ひらまつ・もりひこ)


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