『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月9日号<9>

地域の自立戦略【9】
「ローカル外交」

〜マグサイサイ賞受賞〜

前大分県知事 平松守彦


 一村一品運動を気に始まったローカル外交。それがアジアへ、世界へ広がっ
ていくわけだが、一村一品運動がこんなに海外で受けるとは思わなかった。
まさに「ローカルにしてクローバル」を実感している。

 1993年、経済再建が課題だった繰りピンのフィデル・ラモス大統領が「一村
一品運動を知りたい」と大分にやってきた。前年にマニラ・カラバルソン地域
の四つの集の知事が来県し、一村一品運動をつぶさに視察して大統領に報告し
たんだね。大統領は「(大分とマニラの)交流で1プラス1が、3にも4にもなる」
と私の手を強く握った。その熱意に打たれ、同年5月、私を団長に地域づくり
リーダー16人でマニラへ行き、マラカニヤン宮殿で、全国の知事を前にして一
村一品運動の狙いや現状について離した。

 カラバルソンは5州あり、農林水産業などを視察しながら各地で講演して、
大分県との「友好交流に関する覚書」を調印した。特産品だけでなく人材の交
流を含めてね。この年から毎年、林業研修生10人を受け入れ、農業視察団など
の来県と、たて続けに交流が活発化した。

 フィリピンは木材の輸出国。林業研修は大統領の強い要望で、県が単独事業
として即座に受け入れた。シアソン外相(現駐日大使)は「国と国との援助協力
なら早くても1年かかりますよ」と目を丸くしていた。

 地域同士は具体的かつ小回りの利く交流ができる。国家間外交に比べ大きな
利点を持っていることを改めて痛感したよ。こんなことが評価されたのか、95
年8月、アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」を頂いた。受賞理
由は「一村一品運動などを進め、地域の経済的自立と発展に貢献した」だった。
授賞式で「一村一品運動の目的は人材育成。グローバルに考え、ローカルに行
動する人々が増えることを望む」とあいさつし、「『アジア九州地域交流サミ
ット』とともに、アジアの平和交流の弾みになってほしい」とスピーチしたの
を、昨日のことのように思い出す。

 総称の賞金はAPU(立命館アジア太平洋大学)の建設資金の一部にと思ったど、
政治家の寄付行為は禁じられていて、まだ手元に残っているが、そのうち何か
に役立てたいと考えている。


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