『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月5日号<8>

地域の自立戦略【8】
「ローカル外交」

〜「一村一品」海外へ〜

前大分県知事 平松守彦


 ローカル外交。それは中国上海から始まった。1983年に上海市の汪道涵市長
から突然、「一村一品運動とコンピューターの話をして欲しい」と頼まれた。
私は通産省(現経済産業省)電子政策課長の73年ごろ、コンピューターソフトの
本を書いた。汪さんはこの本の中国語訳を持っていた。

 上海ではどの工場も縦割り行程で品質がバラバラ。「品質向上のため一村一
品をやりたい」と言う。農産物も買い上げ制で、品質に関係なく値段が同じな
ので、結局品質が悪くなる。一村一品運動はクオリティー・コントロール(品
質管理)運動。農産物に限らず、工場の品質向上にもつながると評価された。
私は大山町の矢幡欣治町長(当時)らと83年8月に上海を訪れ、講演した。

 汪さんは「一街一品」「一廠一品」を始めた。「街」は商店街、「廠」は
工場の意味。後の上海市長が国家主席になった江沢民さん、その次が前首相の
朱鎔基さん、国歌副主席の曽慶紅さんも上海閥だ。曽さんは昨年も大分に来ら
れ、交流を深め合っている。その後、武漢市も「一村一宝」運動を始めた。
市長は呉官正さん(現共産党政治局常務委員)で「一村一品運動は毛沢東の弁証
法です」と言っていた。85年に西安に招かれた時は「平松さん、一村一品運動
はソ連も注目していますよ」と言われた。すると90年2月にソロビヨフ中日ソ
連大使が来て、同年6月にソ連へ講演に行った。

 セマウル運動(新しい農村づくり)をやっていた韓国でも注目された。慮泰愚
大統領(当時)に会ったのもその年の12月。ソウル一極集中で、地方との所得格
差は大きい。これを何とかしたいと招かれ、公務員の研修所で幹部たちに講演
した。その模様はテレビ放送され、一村一品運動の本も出版された。今では一
村一品とセマウルのリーダー同士の交流や、「婦人の船」派遣など国際交流も
活発化している。おおいたの主婦が団子汁を教え、キムチの作り方を学んでく
るとかね。

 一村一品運動でも中国と韓国では目的が違う。中国は所得向上のためで、韓
国はリーダー育成など人づくりが目的。大分という地域が、相手地域の実情に
あったつきあい方をする。これが「ローカル外交」と思ってもらたい。


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