『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月3日号<6>

地域の自立戦略【6】
「一村一品」

〜知事は営業マン〜

前大分県知事 平松守彦


 一村一品運動について、「最初は新しい知事が何かいろんなことを言いよる」
という感じだった。

 で、県の広報番組の枠を30分提供するから、村自慢のテーマでテレビ番組
を作ってくれ、と全市町村に通知した。それぞれの一村一品をPRしたらいい、
とね。1年やったけど、どこも一生懸命で「自分の地域を売り込め」「村づくり
の自慢をやろう」と、熱のこもった番組ができた。

 当初の一村一品の代表は、離島の姫島のクルマエビ。昔は畜産をやっていた
が、当時の藤本熊雄村長がクルマエビの養殖を始め、一村一品になった。小さ
な村の産品が、全国で有名になり、村の人たちの自信と誇りにつながった。

 大分といえばシイタケ。質量共に日本一だ。大相撲優勝力士へのシイタケ入
り優勝カップの贈呈も一村一品運動がきっかけで始めた。日本の農業というの
は作るのは上手だけど、売るのはそうでもなかった。大分の麦焼酎はその典型
だった。当時は鹿児島、熊本、宮崎が焼酎県で、大分は知られていなかった。
これじゃいかん、と麦焼酎を持ち歩いて売り込んだ。政治家の集まる東京の料
亭に大分の吉四六を置き、女将に飲み方を伝授した。中学時代の友達で元日銀
総裁の三重野康さんも焼酎が好きで、一緒に売り込んでくれた。当時、下町の
ナポレオンという名前で「いいちこ」が売り出されて人気を呼び「いいちこ」と
「吉四六」で全国トップの焼酎県になった。

 一方、熊本の細川護熙知事が日本一運動を提唱して「日本で一番段数の多い
階段」を作ってみたり、北海道も横路孝弘知事が一村一品みたいなのをやり始
め、知事がセールスマンとなるのが流行になった。熊本の細川さん、滋賀の
武村正義さん、北海道の横路さん、神奈川の長州一二さんらと新しい地域づ
くりをやろうと「7人会」を作った。今の改革派知事の走りだ。情報公開やマ
ニフェストもいいけど、2期くらいで辞めて国会議員になろうとするようだ
と住民はたまったものではない。地域がやる気を起こして高齢化、過疎化か
ら立ち上がり、活性化を目指して努力するのを助けるのが知事の役割だから
時間がかかる。地方自治法なんて知らなくても知事というのはそういう仕事
もあることを示したかった。


地域の自立戦略 / 次の号