『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年6月28日号<4>

地域の自立戦略【4】
「W杯サッカー」

〜深まるきずな、着々と〜

前大分県知事 平松守彦


 県民が誇りと元気をもらったW杯だった。私は大会前から「W杯を一過性のスポ
ーツ・イベントにしてはならない」と言い続けてきた。だから大分大会の3原則
の3番目は「アフターW杯」にした。

 その最大の出来事が大分トリニータのJ1昇格だ。02年11月2日、大宮
アルディージャを敵地で破り、J1昇格を成し遂げた。ドリームズ・カム・
トゥルー(夢はかなう)、成せば成るだ。そして9日はビッグアイで川崎フロ
ンターレを降しJ2初優勝。サポーターと肩を組み、抱き合った。嬉しくて涙
が出たよ。

 参加国との交流も「アフターW杯」の一つだ。カメルーンの遅刻騒動で有名に
なった中津江村は「笑顔の会」を設立して、坂本休村長らが2月に同国を訪問し
た。大分カメルーン親善協会を作るなど交流を深め合っており、今年10月に
は日本代表とカメルーンの国際試合がビッグアイである。

 1月の豊の国カップ九州少年サッカーフェスティバルには、韓国と中国のチ
ームが参加して、少年たちの国際交流も進んだ。共催国の韓国・蔚山市との間
では、大分トリニータ・蔚山現代ホランイ戦が2月にビッグアイで実現した。
以前、大分を訪れた鄭夢準・韓国サッカー協会長が、建設中のビッグアイを見
て、「ここで『韓・日・中』のアジア杯をやろう」と言ったことがある。その実
現に向けて一歩一歩進んでいる。

 こんな国際交流もあった。スウェーデンの大学生クリストファー・ルンドク
イストさんが母国の試合を見に行く途中、道に迷った。偶然、大分に帰省中の
大学生と知り合い、案内してもらったうえ、家に泊めてもらった。帰国後、大
学生の兄にこの話をしたところ、彼は友人と共に2月、大分市内の企業研修に
訪れ、文化や産業を学んだ。W杯から生まれた国際交流の好例だ。

 5月には、佐伯市でキャンプしたチュニジアのハンナン駐日大使が商業開発
大臣とともに大分に来た。「一村一品運動をチュニジアに取り入れたい。実践
化を送ってくれ」と要請され、9月に担当者が行くことになった。

 W杯のネットワークを引き継ぎ、明日の大分をつくる「W杯宣言」を空文にし
てはならない。


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