『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年6月27日号<3>

地域の自立戦略【3】
「W杯サッカー」

〜国超え交流の輪〜

前大分県知事 平松守彦


 「安心・安全」「ホスピタリティ」「アフターワールドカップ」の3原則を掲げた大
分大会は2002年6月10日のチュニジア対ベルギー戦を皮切りに、メキシコ
・イタリア戦、決勝トーナメントのスウェーデン・セネガル戦の3試合が繰り広
げられた。

 収容人員4万3000人のビッグアイが膨れ上がるほどのサポーターで埋まっ
たのを見て感動した。

 3原則の「安全・安心」は当然、選手や観客が安心してプレーし、観戦できるこ
と。県警のW杯警備対策室やJAWOC(W杯日本組織委員会)、ボランティア団体、
地域住民が連携し、逮捕者ゼロ、事故ゼロと理想的な大会運営だった。

 「ホスピタリティ」は、海外からのお客様を温かく迎えるもてなしの心。カメル
ーンのキャンプ地となった中津江村、チュニジアの佐伯市では住民と選手の交流
が予想以上に深まった。

 特に中津江村は素晴らしかった。チームの到着が遅れに遅れたのに、坂本休村
長や村民、子供たちは笑顔でチームを受け入れ、花笠音頭を踊ったりして激励し
た。お陰で中津江村は全国で一番有名な村になり、この年の「流行語大賞」になっ
た。

 もてなしは何もカメルーン、チュニジアだけではない。大分で試合をする6ヶ
国にちなんで県内を六つのゾーンに分け、それぞれ応援する国を決めて交流を深
めた。それにベルギー物産展やチュニジア料理教室、イタリア料理試食会など
150くらいのイベントを組んだ。ホテル、旅館は満員になるだろうと思って、
県立体育館を開放した。もちろん無料。口コミで知ったメキシコの人たちが50
人くらい泊まって人気を集めていた。夜も繁華街で交流を深めていた。

 ボランティアの人たちの功績も大きかった。大分で募集したら2300人近い
応募があり、このうち2100人が登録した。この人たちが会場やJR各駅などの
インフォメーション、観客輸送案内、イベント補助、救急介護に尽くしてくれた。
もちろん語学ボランティアもいた。県民一人一人が、不案内の外国人を案内した
りして、知らず知らずのうちにホスピタリティ精神を養い、スタジアムの外でも
大成功だったと言えると思う。


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