『毎日新聞』 2003年6月18日号より連載・全27回
2003年8月7日号<25>

地域の自立戦略【25】
「地方分権」

〜目的は住民生活向上〜

前大分県知事 平松守彦


 三つ目は「分人」(人材定住)である。地方の自立には経済的な基盤が不可欠で
ある。私はまず地方都市を育て、活気のある地域経済圏を構築して、若くて優秀な
人材を育成することが大事である、と主張してきた。人と地域は一体である。

 現在、全国に3000を超す市町村がある。産業構造の変換、行政能力の向上とスリ
ム化など体質強化を狙って、約1000の市町村に統合する大合併が進行中だ。いわば
将来、設置されるであろう「九州府」をにらんだ連合自治体といってよく、合併が
進めば分権の受け皿となると確信している。

 人を育て、地域の持つ潜在力を引き出し、高めるための合併でなければならない。
そのため、私は住民のやる気を重視した一村一品運動を長く提唱するとともに豊の
国づくり塾、おおいた平成農業塾など数々の塾も作って、人材育成にも力を注いだ。
お陰で県民所得も大きく向上し、塾からは政治家だけでなく地域起こしのリーダー
たちが大勢巣立ち、いま地域で頑張っている。

 地方分権=地方の自立は、東京一極集中に対抗できる地域を育てるということだ。
地方の体力強化(これを私は、地域力と呼んでいる)と、優秀な人材確保なくして、
地方自治体の執行能力は担保できないと考えている。

 地方分権は手段であって目的ではない。目的は地域住民の生活水準の向上にある。
住民ニーズにあった行政とするには、中央集権型行政システムより地方分権型シス
テムの方がよりベターであるからこそ、私は地方分権を進めてきた。

 地方分権に中央官僚の抵抗は強い。族議員の既得権益確保のための反対も多い。
地方分権を進めるには国民的合意が前提だが、そのためにも「分権、分財、分人」
とそれにみあう受け皿としての道州制に移行することが必要だ。

 私の知事任期24年間を振り返ると「地域の自立」を目指した道だった。

 引退の日(03年4月27日)に私は
   <たまきはる命なりけりこの道を初心忘れず貫きて止まむ>
と、心境を歌に詠んだ。地域の自立発展に貢献できたことは男子の本懐だが、
自立の道はなお遠いとの感が深い。

−おわり−


地域の自立戦略