『毎日新聞』 2003年6月18日号より連載・全27回
2003年8月1日号<22>

地域の自立戦略【22】
「地方分権」

〜中央の支配に驚いた〜

前大分県知事 平松守彦


 今でこそ三位一体論など地方への権限や財源移譲、地方分権が声高に叫ばれるよ
うになったが、この回顧録の題名(私がつけたんだが)からでも分かるように、知
事として地方自治に携わるようになって、中央によるあまりの地方支配に驚いた。
「このままでは地方は埋没してしまう」と危機感を持った。

 解決法はないのかと15年くらい前から考え始め、96年に「文献・分財・分人」論
をジュリスト(有斐閣社刊)に発表した。国と地方の関係を再構築するには分権し
かない、と考えて「自治体から見た分権」とは何かを問い、論文という形で著した。

 論文を書くに際して、大学時代の恩師である丸山真男先生に話を聞いたんだが、
郷土の先輩、福沢諭吉の分権論を教えられ、目からうろこが落ちる思いだった。

 主張したのは、地方分権の三本柱というものがあるということ。簡単にいうと、
@分権とは、国から地方への権限移譲A分財は、諭吉の言葉で財源移譲のことだ
B分人は、東京一極集中に対抗するには、地方に若くて優秀な人材が定住できるよ
うにすること。この三本柱が地方の自立に不可欠で、将来の道州制、連合国家への
重要な道程となると確信している。

 <話は飛ぶが、知事を引退したばかりの6月、福岡で九州経済同友会に招かれて
「道州制をふまえた九州府構想」のテーマで講演した。同友会も自治州構想を提案
し、その実現方法を真剣に考え始めたのを肌で感じたね。8月19日には北九州市で、
九州各県の市議会議員約400人が集まって「九州道州制シンポジウム」が予定さ
れており、私は講師に招かれている。私が分権を言い出した当初は「分権はUFO。
話題にはなるが、実体は見たこともない」と誰も取りあわなかったが、やっと道が
見え始めたという思いがする>

 話を戻そう。地方分権の三本柱だが、各論は後で述べるとして「なぜ、大分の平
松が分権を言い出したか」を疑問に感じる人は多いだろう。だって私はそれまで通
産省(現経済産業省)という国家機構の中枢にいたんだ。官僚は権限の縮小、ポス
トの削減を嫌う。だから「平松さん、そんなこと言い出したら困る」なんて旧通産
省の連中が言っていた。


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