『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年6月26日号<2>

地域の自立戦略【2】
「W杯サッカー」

〜日韓共催で弾み〜

前大分県知事 平松守彦


 韓国もW杯開催に名乗りをあげたが、FIFA(国際サッカー連盟)のアベラン
ジェ会長は「開催は日本」と言っていた。韓国は10会場も作るのは無理だろうと
思っていたら、1995年、FIFA副会長の鄭夢準さんが巻き返した。英語は
しゃべれるし、韓国財閥「現代」の御曹司だしね。この年の5月、突然、日韓共催
が決まった。

 お陰で日本も大変だった。国内で15地域が開催地に手を挙げていたが、青森
県などは「試合数が減る」と降りてしまった。大分ではサッカー機運を盛り上げる
ため前年に企業、行政、県民が三位一体になってサッカーチームの「大分トリニ
ティー」(トリニータの前身)を作って、J1入りを目指した。

 国内では日韓共催はショックだったようだが、大分は既に韓国と、一村一品運
動とセマウル運動の交流でローカル外交を活発化させていた。トリニティーの初
代監督は韓国人の文正植さん。大分−ソウル間の定期航空路線も持っており民間
交流は進んでいた。私は、日韓共催は「近くて遠い国が仲良くなれる」と、早速共
催歓迎会を開いた。

 大分スタジアム(ビッグアイ)の建設費は約251億円。議会や町村から批判
もあったが、「サッカー場だけではない。音楽祭、ライブもできる総合スポーツ
公園の中核にする」と訴えた。250億円も県の単費で賄うのは大変ですよ。当
時の自治省に「有利な起債にして、交付税と補助金でやってもらいたい」と強く言
って、後で国が交付税として助成してくれる特別起債にしてもらった。これでか
なりの部分を国費で賄えると、議会に理解をしてもらった。

 国内開催の10会場に入れたのは、秘策ではないが「日本列島バランス論」を訴
えたから。サッカーファンは全国にいる。北海道から九州までバランスを取らな
ければダメだと、これが功を奏した。もう一つ。幸いにも広島市が降りてくれた。
京都も降りた。それで神戸以西では大分だけになった。96年には九州地方知事
会、九州・山口経済連合会などが大分開催に取り組んでくれたのも大きな後押し
になって、この年の12月25日、札幌、埼玉、新潟などと共に正式に開催地に
決定し、大分市の中心商店街で若者達の紙ふぶきが舞った。


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