『毎日新聞』 2003年6月18日号より連載・全27回
2003年7月26日号<19>

地域の自立戦略【19】
「来れ、アジアの若者たち」

〜財界挙げて応援団〜

前大分県知事 平松守彦


 大学を新たに開学するには、いい学生がいないといけない。そのためには奨学金
制度が必要だ。

 優秀な留学生を集めるため、外務省にODA(政府開発援助)の援助を申し込んだ。
1995年当時、ODA総額は2兆円くらいだったと思う。文部省(現文部科学省)には約
400億円が渡っていた。

 外国でダムを造るのもいいが、留学生の受け入れを増やせば、彼らは親日家にな
って帰る。フルブライト資金でアメリカ留学した人が日米友好の架け橋になった。
お金に換えられない効果がある。せめてODAの1%(200億円)を奨学金に、と頼み
込んだ。

 文部事務次官から「ODAは各省タテ割りできまっており、びた一文動かない」と
あっさり断られた。それで東芝、ソニー、キャノンなど私の知っている限りの企業
を訪れ、「アジアに展開する工場の中間管理職に、現地も日本の事情もわかるAPU
(立命館アジア太平洋大学)の学生を採用すれば一石二鳥だ」と説いた。年間500
万円。それを3年間キャッシュで、とね。

 各社から賛同を得たが、すべてを賄うには至らなかった。困り果てて、経団連会
長だった平岩外四さん(東京電力社長)に相談した。

 黙って話を聞いていた平岩さんは「アジアの留学生を増やすことは国家問題だ。
役所が支援出来ないなら、経団連が金を集めよう」と言ってくれた。それでいろい
ろな企業を集め東京、関西、九州にもAPUの大応援団ができた。これが1996年ごろ
だったと思う。

 次は学生集めだ。文部省は「1学年400人の留学生がいる大学はどこにもない」と
疑問視していた。

 ところが立命館の事務職員たちが優秀で、川本八郎理事長を先頭に、立命館が持
つ国際ネットワークを活用して、中国や韓国などに現地事務所を作って募集に乗り
出した。

 私も一村一品運動、ローカル外交で付き合ってきた汪道涵・元上海市長、マハテ
ィール首相、ラモス大統領などに直接お願いにあがり、文部省が驚くほどの成果が
あげられた。

 ちなみに今、APUは県内各地の町村と協力協定を結んで、地域や子供たちと祭り
や語学講習を通じ、文化交流を深め合っている。自治体が学生の学費を一部補助
するなどしてね。


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