『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月24日号<17>

地域の自立戦略【17】
「豊の国づくり塾」

〜温泉と自然を活用〜

前大分県知事 平松守彦


 豊の国づくり塾で私は強調した。地域づくりは果てしない道だから、途
中でやめたらだめだ。青森のリンゴを見ろ、昔はリンゴ栽培なんてとんで
もない話だったが、台風にも大雪にもくじけずにがんばり、いまではリン
ゴと言えば青森だ。

 だから、特産品づくりを途中でやめたらいい目にあわん、と。「ネバー
ギブアップだ」と繰り返し訴えた。それで塾歌を、♪君の行く道は果てし
なく遠い・・・・と「若者たち」にして、塾生たちと肩を組んで歌った。

 「豊の国づくり塾」を手始めに、「豊の国商い未来塾」「豊国の国牛飼い塾」
「21世紀大分農業塾」「豊後やる木塾」「観光カレッジ」などと全部で12塾
つくった。

 塾生の中に面白い人物がいるもんだ。今はボランティアでNPO代表を
務める中津市の木ノ下勝矢さん。彼は福岡県境の山国川で、両県知事を巻
き込んで両県民による大綱引き大会をやった。「山国川を福岡、大分のバ
リアにしてはならない」が狙い。その通り、と思って川の中に入って綱を
引っ張ったよ。大ニュースになって全国にテレビ放映された。

 牛飼い塾が育てた豊後牛は、先年の品評会で見事に日本一になった。
経営塾の若手連中も努力している。大分出身で大企業の経営者、会長クラ
スが全国に大勢いる。そういう人たちが塾生を海外に連れ出し、向こうの
経営者たちと議論や討論会を開いてくれている。郷土の先輩はありがたい
ものだ、と感謝している。

 観光カレッジとは観光と交流、これを一体と考えている。例えば人口
6000人余りの湯布院町。観光客は380万人で、1日1万人が街中に
いる勘定になる。だから誰も湯布院は過疎の町とは言わない。大分県には
温泉と美しい自然がある。観光や村おこし研修、あるいはJ1サッカー観
戦などとさまざまな要素を組み合わせた観光地づくりを目指して頑張った。

 数ある塾から大勢のボランティア。県議会議員など政治家、地域おこし
リーダーなどが育ち、みんな地元で頑張っている。

 地域を思う人がいる限り、過疎は怖くない。そういう人材を育てたい。
「地域づくりは人づくり」だ。「人づくり」こそ、一村一品運動の究極の目標
なのである。


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