『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月17日号<13>

地域の自立戦略【13】
「アジア九州経済圏構想」

〜ローカル外交目指せ〜

前大分県知事 平松守彦


 「アジアは一つ」と叫んだのは、明治時代の画家、岡倉天心だが、果たし
てそうだろうか。

 ヨーロッパ各国は、ギリシャ、ローマ文明の流れをくんで、宗教はキリス
ト教かイスラム教圏内にある。言葉は異なるが、ギリシャ、ラテン語がその
源であり、戦後、ヨーロッパ共同体(EC)がヨーロッパ連合(EU)とな
り、通貨もユーロに統一されるなど共通の生活文化基盤があるように見える。

 それに比べアジアはどうか。宗教も振動、仏教、キリスト教、イスラム教。
言語も日本語、ハングル、中国語、タガログ語などすべて違う。歴史、文明
も多様性が特色で共通点はないようだ。だが、これからは、アジアの同一性
(アイデンティティー)を求め、「アジアは一つ」に統合してゆく時代がく
ると思う。

 アジア地域には経済協力機構としてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)
があり、日本や韓国、ASEAN6カ国など18の国と地域が加盟している。
だが、これはアメリカとアジア各国が個々に結びついているという印象が
深い。

 マレーシアのマハティール首相が以前、私が考えたようなAU(アジア連
合)プラン、EAEC(東アジア経済会議)構想を明らかにした。アジア各
国をヨコにつなごうとするもので、中国、シンガポールなどは賛成したが、
アメリカが猛反発した。この猛反発を受けて日本やインドネシアが支持を控
えたため、実現はしなかった。

 国同士の関係なら、そんな配慮も生じる。でも、地域同士をつなぐローカ
ル外交なら気兼ねはいらない。私の思惑はそこにある。

 で、九州各県はどうか。福岡は韓国、鹿児島は香港との観光交流がもう有
名。熊本も中国・桂林と交流を深め合っている。長崎はご存知のように対外
交流は昔からの伝統がある。

 このように各県ともアジアとの交流には実績を持っている。しかし、九州
としてまとまっていたわけではない。バラバラだ。それで私が「アジア各国
も乗り気。アジア各地域の知事と九州の知事が集まって、一つの経済圏をつ
くるため意見交換したらどうだろう」と提案したらみんながOKした。政令
都市の福岡、北九州両市、九州・山口経済連合会も参加するサミットとなっ
た。


地域の自立戦略 / 次の号