『毎日新聞』 2003年6月25日号より連載・全25回
2003年7月11日号<10>

地域の自立戦略【10】
「ローカル外交」

〜地域活性化に利点も〜

前大分県知事 平松守彦


 東アジアの大半の国は首都や大都市に情報や産業が集中していて、各区の
リーダーは、年と地方の所得格差を解消しようとがんばっている。

 フィリピンのラモス大統領もそうだったし、マレーシアのマハティール首相
も同じだ。マハティールさんは1981年、首相に就任すると「ルック・イースト
・ポリシー(東方政策)」を発表した。その中で、地域開発の手法として一村一
品運動に注目した。それで90年に駐日大使が視察に大分にやってきた。91年に
招かれてマレーシアを訪問した時、マハティール首相は「マレーシアはルック
・オオイタです」と熱っぽく語った。この訪問で、タイ国境との農村地帯・ケ
ダ州との交流を持ちかけられたのだが、こちらの返事を待たずに、マハティー
ル首相は既に農産品の流通の仕組みと農協のシステムを勉強するため州職員と
農業者の派遣を決め、人選まで終えていた。あまりの性急さにびっくりしたが、
それだけ大分への期待が大きかったということだろう。

 その後、マハティール首相は非公式に数回来県した。また、ケダ州の閣僚や
産業視察団、中小企業青年グループも頻繁に大分入りし、大分からも「農村女
性国際交流の翼」などが訪問して親善を深めた。マハティール首相は「マレー
シア人によるマレーシアを作りたい」が口癖だった。一村一品を学ぶ主眼の一
つは、リーダーの養成だったのだ。そこで9711月、共同で「ケダ・大分人材育
成センター」を設立した。

 中国、フィリピンなどでの活動が94年4月、別府市で開いた「アジア九州地
域交流サミット」につながっていく。そしてタイ、カンボジア、ラオス、モン
ゴル、ベトナム、ジャマイカ。これらの国や地域でも今、一村一品運動が実施
されている。

 アジアとの交流で、大分にどんなメリットがあるのか、とよく聞かれる。
確かに表面上は、技術、一村一品運動のノウハウを伝えるだけで、見返りはな
いとみえるのだろう。しかし技術指導、意見交換する中で、大分の農産品のマ
ーケットがアジアに広がっていく機会に恵まれる。また、スポーツ、文化、観
光などにも広がり、それが地域の活性化、国と国との友好、平和に役立ってい
ると確信している。


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