第35話
星座型思考
―中心はたくさん存在―



 世紀をまたいで3年間続いた大分県知事、平松守彦氏の「分権文化論」もきょうが最終回です。この間、分権を担う新たな自治体づくりも、さらに、新たな自治体を基礎にどんな国を再構築するかも、次第に目に見えるようになってきました。私たちはいよいよ分権型の国、分権型の社会という未確認飛行物体=UFOに乗ろうとしています。

----我が国で地方分権なんてUFOだ、だれも見たものがいないではないか、と揶揄(やゆ)されていたのはつい数年前だったように思います。それが、分権こそ今や常識になろうとしています。とりわけこの1、2年の変化は目を見張るものがあります。

平松 「国から地方へ」「地方のことは地方で」との声が一気に高まってきました。背景には、さまざまな国の施策の行き詰まり、国会での族政治の破たん、中央官僚の腐敗、地域の崩壊、財政危機、少子高齢化などの事象がありますが、それらは結局、中央集権ではどうにもならなくなった、ということです。歴史は分権へ向けて具体的に動いています。

----ただ、議論や構想を分析すると、中央集権を補強するような見せかけの論や中央集権的思考から抜けきれない「分権論」も少なくないですね。本物と偽物を見分けるポイントは何でしょう。

平松 最も注意すべき点は、税金を集める権限「徴税権」がどうなっているかです。「分財なくして分権なし」。福沢諭吉の指摘通りです。第13話(脱UFO説)で述べましたが、税金は地方なり地域が一括徴収して、国政運営に必要な経費を納入する、こんな税制を奨励している論が本物の分権論です。分権はするが分財はしない、という「分権論」は偽物です。

----将来の国の形として、8つのブロックが連合した地域連合国家を提唱なさっていますね。

平松 はい。九州、沖縄は一つのブロックを形成すべきです。各ブロックも自治権、ローカル外交権を持つので、九州、沖縄ブロックが香港や台湾、シンガポールなどと協定を結び、自由貿易圏をつくることだって夢ではありません。

----いよいよ地域も自立を求められる時代ですが、「一村一品」運動は最初から「自ら決め、自ら立つ」運動ですね。

平松 私が知事になったころ、大分県は九州でも後進地帯でした。全国的には「だいぶん県」と読む人がいたくらい、存在感がなく、県民にはコンプレックスと依存心が強かった。そんな雰囲気に負けてなるものか、という実に素朴な反発をバネに運動を始めました。サッカー・ワールドカップの誘致も、そんな思いが動機でした。九州でだれも手を挙げない。福岡市もやらないと宣言する。だったら私たち大分県が、と決めたんです。自らの地域に誇りを持つ自助自立の「一村一品」運動と、分権を担う心は同じです。そんな気風なくして分権社会はありえません。

----最後に。地域も国際化のさなかにあります。どう対応していくべきでしょう。

平松 ローカル外交や国境を越えた地域間交流は、技術、情報を含む幅広い文化の交流という以上に、平和を維持していくのにますます重要になってきました。それには、異文化の受容が極めて大切です。アジアには多様な宗教があります。宗教及び宗教と混然一体となった考え方も受け入れていきたい。多様なアジアの連携、共同体づくりが求められています。
 ただ、私たちはだれでも、自分の暮らしているところが、地球の真ん中だと思っています。ということは、相手が住んでいるところも地球の真ん中ですよね。中心がいっぱいある訳です。地域の連帯、連合を思考する際は、太陽系型より星座型でいくべきです。21世紀は輝くさまざまな星の連なりをいつも思い描きながら、地域づくりに努めていきましょう。

(久門 守)



中央集権体制の諸問題明らかに 
 「よき文化なくして分権なし」と説いてきた「ひらまつもりひこの分権文化論」はいかがでしたでしょうか。さまざまな歪(ゆが)みをもたらしている中央集権体制の諸問題を明らかにするとともに、地域文化、国際交流について考え、分権を担うべき私たちはどうあるべきかを、平松知事に提言していただきました。
 読者の皆さんからたくさん寄せられた質問やご意見は知事へのインタビューの素材に活用しました。ご協力ありがとうございました。なお、このシリーズは再編集して、5月に角川新書から出版される予定です。

読売新聞3月15日号より



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