第30話
バーチャルな国家
−実在するのは地域、生活空間−




 市町村合併への動きが各地で、おふろに例えれば随分と温まってきました。合併特例法の期限2005年3月へ向かって各地でいよいよ活発になってきそうです。分権型社会が現実味を帯びてくるなかで、道州制、連合国家論も視野に入れながら、平松守彦・大分県知事と地域の未来を考えてみたいと思います。

 

----最近の各地の動きを見ていると、明治、昭和に続く「平成の大合併」になっていきそうな雲行きです。

平松 公共事業の削減、地方交付税のカット、さらに「官から民へ」「国から地方へ」といった構造改革が国民の支持を得ています。この時代の流れも合併への動きを後押ししています。いま、全国3、200余の市町村のうち約4割が積極的に研究していて、滋賀・広島・熊本・大分県などがとりわけ盛んです。

----合併へ向けた動きで想定されている新しい自治体の住民数が数万人というところが少なくありません。これだと将来を見据えたとき、墓礎自治体として小さ過ぎるのではありませんか。

平松 以前(第25話)触れましたが、こんどの合併は行政機能を高める、効率化のための合併です。逆に文化の多様性、地域の特性は貴重な財産としてむしろ大切にしていかねばなりません。行政機能の効率化や財政基盤の確立、有為な職員の活用といった視点から考えると、確かに各地で想定されている新自治体の規模はまだ小さ過ぎるものが多い。 それに、私たちはややもすると、直面する諸問題を解決していくための合併を思考しがちです。それはもちろん大切なんですが、意識の深いところでは、積極的に21世紀型の地域再生を図っていく、という戦略的側面からも合併を考えてもらいたいものです。でなければさらなる展望が開けません。

連合国家などについて語る平松知事
連合国家などについて語る平松知事
----展望というと、本物の分権型社会、道州制の国、地域が連合した国ということですか。

平松 そうです。私は日本全国を8ブロックに分けることを提唱しています。九州は一つのブロックになります。その九州は主権を持ち、国防・外交・通貨については中央政府に権限を委任し、その他はすべて自分たちで決めて実行します。他のブロックもそうです。こんなブロック及び基礎自治体の連合した国の姿を、私は地域連合国家と言っています。  ただ、何も全国一律に道州制に移行する必要はない。出来るところからやればいいのです。九州で先導的試行するのが一番いいのでは。
 外交に関しては、ブロックも基礎自治体も取り組みます。地域と地域を結ぶ交流が国を超えた本当の理解を生むからです。アジアと共に生きていく九州は特に、国際的な地域間交流、ローカル外交がますます重要になってきます。

----連合による分権型社会をつくるといっても、私たちは、歩んできた長い歴史と逆さまのことをしなければならないので、なかなか難しいですね。

平松 アメリカはご承知のように「州」から国=合衆国が生まれました。従って、だれも「州主権」に疑問を抱きませんし、すべてが「州ありき」です。一方、近代日本はまず明治政府という中央政府・国が出来て、都道府県、市町村が誕生しました。こちらは「国ありき」です。そんな歴史を有しているので「地方・地域ありき」という発想が出来ません。ですから、分権、分権と叫んでも、地域に良き文化、自立自助の気風がないと、本物の分権型の社会や国はつくれないことになります。  それに、もう一つ頭に置いておくべきことがあります。国家というものは実はバーチャルなものだということです。そして、実在するのは地域なんです。

----確かに、国は亡くなることがあっても地域は常に残りますね。

平松 地域とはなにか。ずばり生活空間、暮らしの場のことです。だとするなら、その地域が強い権限と責任を担う方が、本当はとても自然な有り様ではありませんか?みなさんはどうお考えでしょう。

(久門 守)


読売新聞10月19日号より



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