第25話
続 ・ 合 併 の 道 標
−地域連合で行政一本化を−



 国の推進策や地方分権への関心の高まりのなかで、各地で市町村合併の動きが出てきています。しかし、反対の声も根強く、所によっては話し合いが壁にぶつかったり、振り出しに戻ったりしています。きょうは皆さんから寄せられた反対論にスポットを当てて、平松守彦・大分県知事と考えてみたいと思います。

----各都道府県が検討してきた市町村の合併パタ一ン(推進要綱)が出そろいましたね。

平松 全国の合併パターンから算出すると、現在の3,224市町村(5月1日現在)が1,140から622自治体に再編されそうです。私は、県境地域を除いたら、こんなところかな、と思っています。地形・歴史・文化・生活の面から無理がない。昔の「藩」や「郡」としてのまとまりも踏まえたものになっています。これで中央集権の土台になった「廃藩置県」をひっくり返して地方分権へ移行する「廃県置藩」の絵が、一応描けたのではないでしょうか。

----合併パターンを都道府県が作ったことへの反発もあります。

平松
 合併はあくまでも市町村、住民の自主的判断によるべきです。ただ、こんどは「差し迫っての合併」ではありません。地方分権つまり「自立した地域」づくりと財政基盤の確立、時の流れである少子・高齢化、都市化、情報化という「未来に備えて」の面が非常に強い。
 それだけに市町村は言い出しにくい。そこで旧自治省と県が中心になり、合併の動機付けとしてまとめました。しかし、県境そのものが阻害要因になっている地域は、地元の希望に沿わない不完全なパターンにとどまっています。県が作成すると、これが限界になり ます。問題点もあるわけですから、議論の素材にしていただいたらいいのです。

各地で合併を考える集いが催されだした
(平成13年2月27日、大分県竹田市で)


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合併すると自治体の面積が広くなります。九州・山口各県が作ったパターンを見ても、1,000平方キロメートルを超える例がある。こんなに広いと確かに、役場へ出かけるだけで大変です。また、合併したら役場が統合され、周辺地域では衰退が進むのでは、という不安も耳にします。

平松
 おっしゃる通りです。でも、本格的なIT(情報技術)時代を迎えますので、これからは本庁にしても大きい都市、人口の多い所に置く必要はありません。周辺でいいのです。本庁に人を集中させる必要もない。「小さい本庁、大きな支所」でもやっていける。分散とネットワーク化が今後、大きなテーマになって来るはずです。
 郵便局にも行政の一部を委託し、ネットワークに入ってもらうと、住民と行政がもっと近くなれる。道の整備も欠かせませんね。「福祉道路」「通学道路」それにバーチャルな「情報道路」の整備が急がれます。

----地域づくりやムラおこしに熱心に取り組んできた自治体は合併に積極的ではないようですね。

平松 大分県は「一村一品」運動をやっています。これは地域の個性化、「一村一文化」運動でもあります。だから、合併すると個性が薄められるという意見がありますが、合併によって地域文化の平準化が起きるのは良くない。仮に漁業文化の町と山村文化の町が合併しても、その両地域は自治体の多様性を保つためにもそれぞれの地域文化をしっかり継承していくべきです。もちろん、地名も消したりしてはいけない。
 こんどの合併は、「行政の一本化」が実現出来ればいいのです。その他はむしろ地域の連合、文化の連合の方が望ましいのです。
----合併は首長・議員・職員の「リストラ」を伴います。これも市町村の腰を重くしています。

平松 私は今年初め、県内の全首長と意見を交わしました。全員、合併は避けて通れないと考えていました。国も地方も財政事情が悪化しており、現状のままだと、地方は単独事業一つやれなくなることがはっきりしているからです。
 けれども「合併でリストラだ」と一気にはいけない。いろんな激変緩和の措置が必要です。しかし、行政のダブりをなくし、コストをいかに引き下げるか、どのように行政効率を上げるかは、徹底的に追求していかなければ「倒産」してしまいます。この努力なくして「地域力」をつけることはできません。

(久門 守)


読売新聞5月25日号より


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