第20話 
合併の道標〜目指したい
「地域の自立」





 分権社会をつくっていくために、私たちは避けて通れない問題を抱えています。土台となる自治体の再編と構築です。具体的には市町村合併−2001年から大半の地域で住民が直面し、明治、昭和に続く「平成の大合併」に発展する、とも言われています。ちょうど20回目となった「分権文化論」では平松守彦・大分県知事と合併について考えてみたいと思います。
----中央集権から分権型の社会へ移行するのに備えて、市町村合併が急浮上してきました。巨大都市から数百人の村までを同じ基礎自治体としている現在の地方制度はすでに行き詰まり、国の指導もあって、各都道府県で合併モデルやビジョンが示されています。

平松 そうですね。ある一定の広がりの中に暮らす人々が、自分たちで「長」や「議員」を選んで権限を委託し、地域に必要なことをやっていく。自分たちで自分たちの地域を治める。これが地方自治ですよね。言い換えると「地域の自立」ということです。いまの市町村はあるべき姿から権限の面でも、財政面でも程遠いところにあります。「地域の自立」はこれからの合併を論じるキーワードにすべきです。

----我が国の市町村合併史をめくると、まず明治中期の「明治の大合併」で約7万あったマチやムラが1万6千ほどの市町村に整備され、戦後の「昭和の大合併」で約4千自治体に再編され、現在3,229市町村です。

平松 二つの「大合併」はともに上からの命令、中央集権体制の末端の単位としての市町村をどう整えるか、が課題でした。住民が主役ではなかったので、所によっては反発がとても激しく、大分県でも「昭和の大合併」では騒動が起きています。しかし、来年から本格化する合併への動きは、分権社会、国とも対等なパートナーになれる自治体をつくるためのものですから、かつてとちょうど逆になりますね。


各地で始まった市町村合併を考える動き
(大分市で7月)
----民意を反映した合併を推進するため、住民投票制度を法制化する動きがあります。

平松 自分たちの住む地域を自分たちで決めるのですから、住民投票は望ましい制度です。この制度が出来れば過去の「大合併」と全く異なる住民本位の「平成の大合併」が夢ではなくなります。

----これからの合併の道標とすべきものは?

平松
 まず、私たちは地縁などいろんな縁(えにし)に結ばれているという素朴な感覚を大切にしたい。そして自分たちの税金で自分たちの行政ができる最低の財政基盤の確立を考える。また歴史・文化・生活の面から共通性のある地域の広さ・範囲を考える、というのはどうでしょう。
 財源は確保できるけれども文化圏は異なる、というちぐはぐな合併 →新自治体誕生では、地域を愛する心など生まれません。地域活性化の素は地域の一体感とか地域への愛着です。

----そうなってくると、現在の県境があちこちで、じゃまをしませんか。

平松 ええ。阻害要因になる可能性があります。いまの県境は明治4年の廃藩置県の時に官僚が地元を無視して勝手に線引きしたものに過ぎません。最初から矛盾をはらんでいたのです。
 九州・山口のあちこちで行政圏と経済圏、生活圏、文化圏がミスマッチを起こしていますね。これを解決するには県境を取っ払う勇気が欠かせませんし、県と県の合併も視野に入れておく必要があります。そうすると道州制や九州府の設置も当然のことながら議論されることになるはずです。

----自主財源の確保に関して、現行税制も問題になりますね。

平松 税金は現在、国と地方で集めていますが、これを基礎自治体による徴税一本に改めたいものです。そして国政に必要な経費を自治体が拠出するドイツの共同税方式のようなシステムにすべきです。税制や徴税の変更がなされないと、地域に真の自立心は育まれないし、地方の国への依存体質も解消出来ないと思います。

(大分県知事 平松守彦)


読売新聞12月15日号より


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