讀賣新聞 10月2日版より

地域活性化文化(中)

第13回国民文化祭を前に

大分県知事 平松 守彦


「グローカル」な視点と行動

 文化とは国を制する「気風」(福沢諭吉)。地域文化とは、その地域にしかない「風」なのだ。風は目に見えない。だが、町の雰囲気、たたずまいは肌で感じることが 出来る。学校には「校風」、家庭には「家風」、会社には「社風」があるように、地 域にも他と区別出来る独自な「風」がある。アイデンティティーといってもよい。そ れが文化だ。
「一村一品」物産観光展会場
(1997年11月18日、クアラルンプールで)

★地域的であること

 文化はすぐれて地域的で地域を離れて文化はない。
 音楽を例にとろう。ジャズはアメリカ南部ニューオリンズで始まったメロディーで 、最もローカルな音楽が世界中で演奏されている。アルゼンチンタンゴもアルゼンチ ンにたどり着いた移民の歌が、世界的に愛好される音楽となった。
 ローカリティー(地域性)の豊かなものほどグローバルな評価を受ける。
 ローカルな文化というと普遍性のない狭い地域のみに通用する文化と思われがちだが、実は違う。ローカル性に徹すれば徹するほどグローバルに評価されるようになる。
 食文化の例で見よう。中国料理という名の料理は存在しない。あるのは北京ダッグ (家鴨)に代表される北京料理、カニで名高い上海料理、四川料理、広東料理、すべ て地方色豊かな中国の料理が評価を得て、世界中、中国の料理を出す店のない国はな いくらいだ。
 フランスワインというワインはなく、あるのはブルゴーニュ、ボルドー、南仏モン ペリエのワインだし、ドイツワインもなく、モーゼルであり、ラインワインだ。
 日本酒もローカルな地酒が、名酒として名を馳せているのも同様である。
 まさに、ローカルこそグローバルだ。
 世界に通用する日本文化の代表例といえば、もっとも日本的な歌舞伎、柔道、相撲 、何れも日本特有の伝統文化、スポーツである。アメリカで最も愛好者の多い茶道も 、もとは戦国時代の武家のたしなみであった。


リーダー格人材の養成を

★自己主張する文化

 私は一九七九年「一村一品」運動を提唱した。この運動は、地域の「顔」となる産 品をつくり出そうと市町村長に語りかけたことから始まる。ただ、私は、地域の特産 品といっても観光地のみやげ品とは異なり、最もローカルな産物で、しかも日本市場 、世界市場にも通用する産品をつくろうと呼びかけたのである。
 当時、その代表例は「しいたけ」であった。大分の「しいたけ」は、全国生産量の 二十%のシェアで日本市場に通用し、中国料理の原料として輸出される。まさに、グ ローバルにも通用するものではないか。
 大分県にしかない大麦を原料とする麦焼酎も、「吉四六」「いいちこ」の名で全国 ブランドになった。
 ローカル即グローバルとは言わない。ローカルな特産に磨きをかけ、グローバルな 産品に仕上げていく努力が必要だ。地域文化でも、青森のねぶた祭、博多どんたくな どローカル色に徹した伝統的な祭りが全国から客を集める。
 要は人材である。「一村一品」運動を実施する時、私は「一品」の品は「商品」の 品と「人品」の品の意味があると述べた。つまり地域づくりにはリーダー格の人材の 養成が第一だと考え、郡単位に私が塾長となって「豊の国(大分の古称)づくり塾」 を創設した。この塾の目標は「グローバルに考えローカルに行動」する人材の養成で ある。
 世界が、グローバル化してゆけばゆくほど、ローカルな文化が自己を主張してゆく。  グローバルな視点をもち、行動はローカルな地域に根を張り、地域独自のまちづく り、文化の創造を目指す人材が必要となる。グローカル(glocal)な人材の養成が急 がれる。

★守・創・情・材

 これが地方文化育成のキーワードである。
 伝統文化守り、新しい地域文化を創造し、世界に情報を発信する。ローカルにして グローバルな文化への昇華。そして最後にグローカルな人材の養成こそ、一番大事な ことではないか。


(上)   (下)