都道府県展望(4月号)より

ある日の知事

大分県知事 平松 守彦


■休みの日は礼状書き

二月一日(日曜日) 地方では、土曜、日曜も行事が多い。今日は久しぶりの休暇で、礼状書きに精を出す。
 「整へし圃場の道を朝毎に 通いてわれは万の鶏飼ふ」
 大分県緒方町で七千羽の養鶏を営む三代英輔さんが詠んだ歌会始めの入選作。三代さんから年賀状をいただき、「宮中の『歌会始』に招かるる 叶ひし夢を県知事に告ぐ」とあった。先日、歌会始めの報告に来庁されたのでお礼状を出す。

ジョンソン議員から礼状とともに送られてきた記念写真
 昨年暮れ、アメリカから若手政治リーダー評議会一行が「一村一品運動」の視察に来た。地方分権が徹底している州議会の若手議員だけに元気がいい。ミシシッピー州出身T・ジョンソン上院議員より「大分とわが州とは、相違点より類似点の多いことがわかった。素晴しいひとときだった」との便りをいただき、「交流を続けましょう」と返事を書く。
 正午、第四七回別大毎日マラソン大会がスタート。テレビに釘付けになる。弱冠二一歳。大分県生まれ、杵築東芝の清水昭選手が二時間九分一一秒(歴代一二位)でゴール。思わず「バンザイ」とテレビに向かい手をたたき、すぐ祝電を打つ。マラソン界に大型新人の出現だ。早速県民栄誉賞をあげたいと思う。

■胸が熱くなった

二月一四日(土曜日) 午前中、大分市大在地区の土地区画整理事業竣工式に出席。私が副知事時代から手がけていた県事業で、二五年間、五○○億円の巨費を投じて完成した。区画整理事業では全国一の規模だ。夏みかんと漁業の町がすっかり新産業都市の住宅地として生まれ変わった。竣工碑に「海光夢」と記す。パレードの途中、住民の皆さんから握手を求められる。知事冥利に尽きる。
 一村一品運動を支える「豊の国づくり塾」がスタートして一六年。夜、豊後高田市で開かれた塾生たちの集いに参加する。圧巻だったのは、地元市長村長らによる歌舞伎「白波五人男」にちなんだ「首長五人男」。ときどきセリフにつまるとドッと歓声があがり、盛り上がった。最後に♪「君のゆく道は果てしなく遠い だのになぜ…君は行くのかそんなにしてまで」(塾歌『若者たち』)と、塾生たちと肩を組み歌う。いつもこの歌を歌うと、胸が熱くなる。
大笑いだった「首長五人男」

■いい人、いい話

二月二二日(日曜日) 朝、大分合同新聞社主催「市郡対抗・県内一周駅伝」の開会式に出席する。五日間、県内三九区間をタスキでつなぐ。駅伝が始まると大分に春が来る。

心に残る松本幸四郎さんとの対談
 午後、大分県広報誌『NEOOITA』の対談のために、歌舞伎出演で来県中の松本幸四郎さんと懇談する。昨年、一緒にベストファーザー賞を受けたのが縁だ。子どもの頃は、父と一緒に過ごした思い出はないという。その松本さんがニューヨークで「ラ・マンチャの男」を上演中、無性に寂しくなった。その時に届いた父からの手紙に、「俺はお前を信じる」とだけ書いている。それを見たときにポタポタ涙が流れ、勇気を与えられたという。
驚いたのは、拙著『私の日本連合国家論』(岩波書店)をお読みくださっており、地方の文化の独自性に共感されたことに感動した。その日、家を出る時に「幸四郎さんに会うよ」と言うと、孫からサインをねだられた。「神の春、とふとふたらり たらりらふ」と、歌舞伎の台詞を書いていただいた。いい話とサイン。これも、知事の役得かもしれない。